鬼ごっこの箱庭 | ナノ





巡り合う





『やぁパッドフット、今度の土曜日、暇かい?どうせ暇なんだろ?この前言ってた喫茶店にランチしに行こうってリリーと話してたんだ。ハリーも来るよ。ムーニーも行けたら行くって。マグルの車で行くから、君もマグルの格好して家の前で待っててよ。13時だよ。』

急な休みで1日中ごろごろしていると、親友から急にふくろう便が届いた。せっかくリリーに設置してもらったマグルのフェルトンだかいう連絡ツールがあるというのに、ジェームズは使おうとしない。俺も受話器を取るくらいならできるのに。
そして手紙の内容に顔をしかめる。どうして暇と決め付けるんだ。まぁ暇だし、ハリーがいるならもちろん行くけど。
リーマスの「行けたら行く」は8割は来ないから、ポッター家と俺で行くことになるんだろう。ジェームズはリリーの両親に認めてもらうためにマグルの乗り物、車に乗る資格を取っている。もちろん魔法族でも、マグルの住む場所にいる人間にはその資格を持っている人はちょこちょこいる。俺は空飛ぶバイクを持っているけど、地を這う許可はもらっていない。
一番厄介な、マグルの格好というのは、この前リリーにお墨付きをもらった服を着ていくことにしようと思う。深緑のズボンに、柔らかい素材の白いシャツ、黒のカーディガン。俺が自前で着て言った奴は、それぞれは悪くないけど組み合わせがおかしいと言われた。マグルのファッションはよく分からない。
俺はマグル界の汚くも綺麗でもない普通のアパートで一人暮らしをしている。 外に行く時は大抵、一番無難だと言われるスーツを着るか、普通にローブを羽織る。スーツというものは窮屈だし女にじろじろ見られるが、話しかけてくる奴はいなくて楽だし、ローブなんか着てる奴には誰も近寄ろうとしない。同じアパートに若い女もいるが、俺はむしろ怖がられているらしい。顔は良いのに変人だとコソコソ言われているのを聞いた。まぁ、マグルから見れば魔法使いは変人だろう。俺から見てもお前らは変人だからお互い様だ。あぁいや、差別はしてねえから。
めったに誰も訪ねてこないアパート。この前ジェームズに言われたことを思い出す。

「そろそろ良い人見つければ?」

23とは、そんなに焦る歳だろうか。確かに弟のレギュラスは今21で結婚しているがそれは許嫁がいたからだし。オヤジは25のときに20のおふくろをもらって俺が生まれたって言ってたな。…いや、でもリーマスもピーターもまだ結婚してねえし、別に良いだろ。うん。試しに、キッチンに顔も知らない女が立っているのを想像してみる。

「シリウス、今日の晩御飯何が良い?」

「うーん、なんでも」

「なんでもが一番困るのよ」

「じゃあ、お前かな」

「え、きゃっ」

…だめだ、途中から親友夫婦と重なってしまった。あんな気の緩んだデレデレ顔を自分がするなんて、考えたくない。
窓の外を見るとすっかり日が沈んでいた。明日も朝は早い。さっさとシャワー浴びて、ハリーアルバムの整理でもして寝よう。そう思い、シャワールームに足を運んだ。





別にデレデレする必要はないことに、このときの俺は気づいてない。






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