鬼ごっこの箱庭 | ナノ






おまけ



「そっかそっか!やっとくっついたか!え?うんもちろん僕達はわかってたよ。いやむしろ僕達のおかげじゃない?」
「ね、ねぇじゃあやっぱり、ジェームズくんやリリーちゃんやハリーくんも、魔法使いなの?」
「うん、そうだよ。あ、でもリリーの両親は違う。マグル…魔法を使えない人のことだけど、マグルなんだ。家族全員マグルでも、魔法使いが生まれることは稀にあってね。リリーはそうだったんだよ。」
「へえぇ…。」

私は初めてシリウスくんに会ったときと同じ席に座る3人を眺める。まさか、魔法使いなんて。リリーちゃんと初めてあってからもう20年以上も経つのに、知らなかった。

「どうしてリリーちゃん、教えてくれなかったの?」

そう言うとリリーちゃんは困ったように笑った。

「ごめんね、普通は、家族以外には教えてはいけないの…。マグルは魔法の存在なんて知らないから。」

まぁ確かに、リリーちゃんに私は魔女なのよと言われても、私は信じなかっただろう。むしろシリウスくんのときみたいに、おかしくなってしまったのかと考えてしまう。…魔法使いの人は不憫だなぁ。

「僕たちの写真、見てみるかい?」

ジェームズくんはニヤニヤしながらジャンパーの内ポケットから何かを取り出した。

「え、うわぁ…!」

私はそれ、写真を見て目を疑った。そこにはリリーちゃんとジェームズくん、そして黒い大きな犬に乗ったハリーくんが映っていた。そして、動いている。ゆらゆらと、瞬きをしたり、こちらに手を振ったり。犬のしっぽはくるくると動いている。

「う、動いてる!?」
「うん、魔法界ではこれが普通なんだ。ちなみに、ライカーさんは知ってるよ。」
「え!?」

その言葉に私は目を丸くした。お母さんは、魔法の存在を知ってる?

「え、え?ママは魔女じゃないよね?」
「ええ、もちろん違うわ。私の両親、学生時代から、ライカーさんと友人で…簡単に言うと、私とジェームズとシリウスみたいな関係だったの。だから、私が魔女だって知った時、相談しちゃったみたいで。魔法の学校を卒業したときに、私もライカーさんに魔法を見せちゃったの。」

あなたはいなかったけど、とリリーちゃんは可愛く笑って肩をすくめた。ママ、知ってたんだ。じゃあハリーくんやシリウスくんが魔法使いなのも知ってたわけで。

「ママ!?」

思わずカウンターの向こうへ叫ぶと、ママはクスクス笑いながら顔を出した。

「いいじゃない、別に。私、魔法使いの息子と魔法使いの孫が欲しいわぁ」
「ママ!」

私が顔を真っ赤にして怒ると、ママは笑いながらまた顔をひっこめた。
ちょうどそのとき、カランカランとドアの開く音がした。今はこの3人以外にお客さんがいなかったのでこんな話をしていたが、普通の人が来たら大変だ。私はサッと写真を隠した。

しかし入ってきたのは、

「…犬?」

黒くて大きな犬だった。どこかで見たことがある。

「…ってあ、この子、写真の?リリーちゃんたちの飼い犬?」

そう言うと、ジェームズくんとリリーちゃんは声をあげて笑った。犬はとことことこちらへ歩いてくる。灰色の色素の薄いくりくりした目と、ツヤのある黒い毛。シリウスくんを、犬にしたらこうなるんじゃないか。なんてくだらないことを考えていると、その黒い大型犬が、シリウスくんになった。

私は目が飛び出るんじゃないかというほど目を見開いた。目線を下から上に移動させると、いつものハンサムなシリウスくんがニヤニヤと笑っていた。

「え?え!?えーーーーーーーー!?い、犬が、え、シリウスくん?へ、変身した?これも魔法なの!?」

びっくりしすぎてあわあわする私を、シリウスくんはぎゅっと抱きしめた。私たちの世界では普通見ない真っ黒なローブに身を包むシリウスくんはなんだかミステリアスな雰囲気だった。というか、さっきのは何?
シリウスくんは体を離すと、私の頬に触れるだけのキスをして、ジェームズくんの隣に座った。驚きと、さっきのキスで顔が真っ赤な私を、ハリーくんまで笑っていた。

「今のは確かに魔法だよ。でも魔法使いがみんなできるわけじゃない。今、魔法界にも10人くらいしかいないんじゃないかな」
「じゅ、10人…」
「ちなみに、シリウスは犬だけど、僕は鹿になれる。」
「し、鹿…」
「私はできないわ。ジェームズとシリウスは学生時代、すごく頭がよかったから、できただけなのよ」

リリーは悔しそうにティーカップに口をつけたが、私は状況についていけなかった。動物に変身できるなんて、魔法はすごく奥が深そうだ。

「魔法って、どんなことができるの?」
「どんなこと?…うーん、そうだな…たとえば」

ジェームズくんはポケットから木の棒……魔法使いの杖を取り出し、カウンターのところからお酒の瓶を宙に浮かせた。そして、机の上に誘導する。私は口を閉じることができなかった。

「ほかにも、水を出したり、お湯をわかしたり、物を操ったり。呪いをかけることもできる」
「の、呪い!?」
「うん。たとえば顔にひどいできものができたり、人を宙にさかさまにしたり、足がタップダンスしか踊らなくなったりする」

私はそれを聞いて、血の気がひいた。魔法って、怖い。魔法って便利だし面白いけど、それと同時に童話の悪い魔女みたいに、悪いこともできるんだろうな。

「まぁ、マグルに悪さをする奴はほとんどいねえから」

シリウスくんはニヤニヤ笑う。…ほとんどってことは、いるんだよね。
私が難しい顔をすると、リリーちゃんは苦笑いした。

「そんな、悪さをする魔法使いをこらしめるのが、この2人の仕事なのよ。」

手で示されたシリウスくんとジェームズくんを見ると、にこにこ笑っていた。そ、そっか、魔法使いにもお仕事、あるんだよね。

「まぁ。闇祓いっていうんだけど、嫌な呪いとかばっかり使う馬鹿共をこらしめるんだ。常に死と隣り合わせで…」

シリウスくんはそこまで言って、ハッと口をつぐんだ。私はというとシリウスくんのセリフに真っ青になっていた。死と隣り合わせ?そんな危険な仕事に?え、じゃあどうしてシリウスくんたちこんなに笑ってるの?

「あーもうシリウス、変なこと言わないの。大丈夫よ、こいつらは殺しても死 なないし、死と隣り合わせっていっても、平和なものよ。油断したら死ぬってだけで」
「リリー、あんまりフォローになってないよ」

ジェームズくんが苦笑いする。シリウスくんは席を立って私の前に来ると、優しく笑ってから私を抱きしめた。

「ごめん、大丈夫。お前をおいて死んだりしねえよ。あ、寿命とかの場合は勘弁な」

ぽんぽん私の頭を軽くたたくシリウスくんに、安心すればいいのか悲しめば良いのか分からなかった。ジェームズくんがアツアツだね!とか言ってるけど、リリーちゃんとジェームズくんもいつもこんなものだと思う。いやこれ以上だよね。





魔法使いの彼氏なんていろいろと不安だらけだけど、ポッター一家やママもいるし、なんとか頑張っていくよ。









終わり







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