鬼ごっこの箱庭 | ナノ





呼ぶ





ふくろう便。…で出すわけにはいかない。マグルの喫茶店にふくろうが迷い込むなんて偶然あるわけがないし、あの喫茶店は結構人通りの多い場所にあるし、そんな目立った不自然なことをしてはならない。
というかライカーさんやエリも驚くだろう。なら、マグルの方法で出すしかない。
そして俺の友人でマグルに詳しいのはリリーしかいなかった。仕方ないので、リリーにエリの喫茶店の住所と、手紙の出し方を教えてくれという旨を書いた手紙を送ることにした。こっちはふくろう便で。

『エリに手紙を書くの?ジェームズに聞いたけどデートにさそうんですってね。おせっかいかもしれないけど、細心の注意を払いなさいよ。エリはマグルだし、まだ付き合ってないなら魔法の存在は言うべきじゃないわ。なぜ直接誘わないのかは別に聞かないけど』

マグルの手紙には、お金の代わりに切手というものを貼るらしい。ご丁寧に、リリーは俺の家の近くの郵便局からエリの家までにいる切手を同封してくれた。かなり感謝したので今度何か贈ろうと思う。

とりあえず出し方は分かったので内容を考える。俺の仕事も休みで喫茶店の定休日であるのは日曜日なので日曜日にしよう。
それに、リリーに言われた通り、デートの内容がさっぱり思いつかない。エリが魔女なら箒やバイクに乗って飛び回ったりどこか遠くの花畑や海に行ったりもできるが、マグル式で1日で行動できる範囲なんて限られすぎている。そんなことまでリリーに聞くのは申し訳ないし、どうしよう。
エリに魔法の存在を教えるのは駄目だろうか。…俺は生まれたときから魔法が当たり前だったからわからないが、マグルは魔法の存在を初めて教えられたらどう思うんだろう。マグル学なんて取っていなかったが、何度か会ったリリーの両親は近くで魔法を使われるとビクビクしていた気がする。恐ろしいのか?エリは俺を怖いと、気味が悪いと、恐れるだろうか。
…ならやはり、教えるのはだめだ。
というか俺とエリは今普通に話すこともできない状態だし。そう、誘いに応じてくれるのかすら疑問なんだ。

『エリ、来週の日曜日、会わないか。喫茶店の前まで迎えに行くから、待っててくれ』

……最後のアルファベットを書いて、俺はすぐに紙を丸めて消失させた。

あぁ、どうしたら良いのか。
女の子が喜びそうなもの。うわ、重大なことに気づいた。エリは俺より年上だ。もう30に近い女性が喜ぶものってなんなんだ。花なんか喜ぶか?手を繋ぐとかで笑えるか?
うんうん唸ったりぼけーっとしていると、いつの間にかあの日から2ヶ月も経っていた。俺は日に日に焦りのような恐れのような不思議なドキドキが増していた気がする。2ヶ月目、何を思ったのか俺は再び手紙を書いた。

『久しぶり、エリ。突然だけど、俺たちはお互い知らなすぎだったんだと思う。良かったら、一度喫茶店以外で会わないか。来週の日曜日朝11時に、喫茶店の前で待っててくれ。迎えに行く。』

俺は1度だけ読み返してすぐに、それを住所も切手も準備万端な封筒に入れた。そしてローブを羽織り、アパートのすぐ近くにあるポストに入れた。うん、もう、どうにもできない。魔法を使わない限り。


あとで思うと、エリが来週の日曜日に予定があったら、とか全然考えてなかった。つくづく俺は自分本位だと思う。









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