短編 | ナノ



おぇ、げろげろげろ。

吐き気がする、吐いちゃう。
ぼーっと前を向きながら時々えずいていると、通りすぎる子達が時々不思議そうに、気味悪そうに私を二度見する。
そりゃあそうだ、こんな『素敵な日』の陽気な午後の中庭のベンチで青い顔をしてるのだから。

「うぐっ」
「いつにもまして気持ち悪そうな顔してるね!」
「今日はとっても楽しい日なのに!」

後ろから何者かにのし掛かられて私は本気で吐くかと思った。この人たちが気遣いなんてできるとは思ってないけど。

「さっきのハリーを見たかい、兄弟」
「あぁ、ハリーには悪いが爆笑しちゃったよ」
「君も見ればよかったのに。今日はいろんなところで面白いものが見れるよ!」

とりあえずハリーが気の毒な目にあったことが分かった。
そう、今日はバレンタインデーである。…って分かるか!!

4年生にもなると恋愛なんてものに興味を示す人も少なくない。それは分かるし、新しく入ってきたハンサムらしい先生が余計なお世話を働いたのもまぁ、うん、百歩譲って分からないこともない。ただし今日の私は気分が悪いのだ。

「もういいから、フレッドもジョージもどっかいって。小人が探してるでしょ、どうせ」
「ああ、うん。僕たちってモテるんだよね」
「しかもシャイな女の子にね」
「じゃあジョージ、僕は小人をまくことにするから」

そっくりな顔の二人、のうちの一人が去っていき、場には何も話さない男女一組。ああ、ああ。やめて、吐き気がする。

「ジョージも早くどっか行きなよ」
「で、あの手紙は本心か?」

話聞けよ!うぷ、今日だけで何回吐いただろう。心の中で、だけど。

「ぷっ、顔真っ赤。俺もだよ」


ああうるさいうるさい、だからこんな甘ったるい日、嫌いなんだ!!




ジョージ・ウィーズリー、私、あなたのことが大好きよ!




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