短編 | ナノ



私とリーマスが初めて出会ったときは満月の夜だった。それはそれは綺麗な月夜で、月を覆い隠すはずの雲までが幻想的だった。

金色の巻き毛を揺らして彼に近付くと、彼はすんすんと鼻を私に近づけた。彼の周りには黒い大型犬と牡鹿がいて、私は同じ種族である大型犬と言葉を交わした。

「お前は誰だ?」
「あなたたちには…名前があるの?素敵ね。私はこの森で産まれたの。あなたたちが毎晩楽しそうだったのが羨ましくて、ついでて来てしまったわ」

牡鹿が私の耳を軽く角でついた。どうやら一緒に行動する許しをもらったようだ。よくみると牡鹿の背中には小さな灰色のネズミが乗っかっていた。こんなにへんな組み合わせはきっと類を見ないでしょうね。だから当然気付いたわ。リーマス、あなたが人狼だってこと。



「君は…誤解されやすいね」

男の割には長い、薄茶色のまつ毛がとても綺麗だと思った。だから私は彼から目を離せなかったのだと思う。

「誤解されやすいっていうのは…どうかしら」
「うん、なんて言ったら良いのか分からなくて」
「そうね、昔言われたことがあって、自分も納得したのは…私と接する人は…私と必要以上に接した人は、狂ってしまうって。当然よね、母親を殺した私だもの」

リーマスは噛み付くように私にキスをした。もし彼に私以外に特別な女の子がいたとしたら、彼は決してこんな大胆な真似はしないだろう。もっと、すぐに壊れてしまいそうなものを扱うみたいに、そっと、柔らかく触るに違いない。私が彼にそうさせる。
生まれついたとき、産声で母親を殺し、立ち会った人達のほとんどを廃人にしてしまい、まともに目を合わせると相手を狂わせてしまう。そんな呪われた魔力を持って生まれた私を、人として接してくれるのは、自分も人として中々認められない、彼くらいしかいないんだ。

「リーマス、好きよ」
「うん」

彼は言葉を返さない。返してはいけないことを、よく知っているから。







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