「ねえちょっと知ってる?マリーに彼氏できたんだって」 「知るわけないだろ。そもそもマリーって誰だよ」 「しかもあの子前の彼氏と別れたのいつだと思う?!3日前よ3日前!!ぜっったい二股してたよね?!」 「お前それもしかして独り言か?」
暖炉の前の特等席に腰掛けて面白くも思えない教科書を姿勢正しく読みながらため息をつくのは1年生からの腐れ縁、バーティである。
「だってずるいじゃない!マリーったらいつでも彼氏いるのよ!」
ギリギリと歯ぎしりをしつつバーティの首を後ろから軽く絞めると、バーティは持っていた分厚い魔法薬学の教科書で私の頭を叩いた。痛い。
「知るか」 「バーティは優しいわね……」 「頭打って聖マンゴに入院してしまえよ」
彼はまたため息を吐いた。私がつきたいくらいなのよ。 真っ赤な暖炉の火をじっと見つめていると、色素の薄い私の瞳は自然と細くなった。
「だから、俺にしとけっていってるのに」
バーティの小さな声は、聞こえないフリをした。
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