朝晩の冷え込みが夏の終わりと、秋の始まりを告げていた。
積荷の片付けをしていたら予想以上の時間を要した様だ。窓から見える真っ暗な景色からそれが伺える。
木箱を担ぎ、甲板に積み上げて行く。全てが終わった頃には既に星が煌めいていた。
1日の仕事を終え、部屋へ戻ろうとした時、
ゴッ
「うわっ!」
何かに躓いて転んでしまった。
「痛ぇ…」
足元を見るとそこには…
「…なまえ?」
自分の恋人であるなまえが手足を盛大に伸ばし、甲板に寝転がっていた。
「あ、ハヤテ。」
「あ、…じゃねぇよ。何してんだ?」
昼間ならまだしも今は夜。
船の上は肌寒い。
「星見てたの。」
「星?」
そう聞き返すハヤテにおいでおいでと手招きをし、一緒に見ようと言うようにハヤテの寝転ぶスペースをあける。
「…風邪ひいても知らねぇからな。」
このまま放っておく訳にもいかず、なまえに付き合う事にした。
なまえの隣りに寝転べば満天の星が飛び込んで来た。
一面の星空。
今日は新月。
月が無い空では、星の光がより一層強い。
「…綺麗だな。」
自然と零れた感嘆の言葉。
その言葉に「でしょ?」と満足げな笑うなまえ。
「涼しい方が空気が澄んでて綺麗に見えるんだよ。」
「ふ〜ん。」
星なんて改まって見る事もないから、なんだか新鮮だった。
「こうやって寝転んでると、星空の中飛んでるみたいだね。」
星以外見えない世界。
波の音以外聞こえない静寂。
ふと、なまえの横顔を見る。星に魅入るその目はキラキラ輝き、長い睫毛がそれを更に引き立たせる。
…こんな時、気の利いた台詞のひとつでも言えたら…
そう思い、思考をフル回転させるが…
(…言えねぇ)
自分が言っている姿を想像して、ぶんぶんと頭を振った。
「どうかした?」
うなだれているハヤテを怪訝そうにみつめるなまえ。
「なんでもねぇ…」
そう答えるハヤテに「そう?」とだけ返事をし、再び星空を見上げた。
そっと触れた手が冷たかった。
「ったく、冷えちまってるじゃねぇか…」
その手を包みこめばぎゅっと握り返してくる。
「えへ、暖かい。」
手を繋いだまま、なまえは嬉しそうに笑った。それだけで俺の心まで温かくなる。
「…こうやってると…」
「ん?」
「世界に2人だけみたい…」なまえがぽつりと呟いた。
「おまっ、…よく恥ずかしげもなく…」
顔に熱が集中するのが自分でもよくわかった。
夜だということに感謝した。
「恥ずかしくないよ?ほんとの事だもん。」
「だ、から…」
「ハヤテの事、好きだもん。」
俺の中で、温かい何かが溢れ出す。
胸の奥から込み上げる感情。
はにかむなまえに覆い被さり、気が付けばその唇を塞いでいた。
ただ、愛しくてたまらなかった。
唇が離れると、まっすぐな瞳で俺を見つめるなまえ。
その目が「ハヤテは?」と問い掛けているようで…
「言わなくてもわかるだろ?」
「言ってくれなきゃわからないよ?」
そして、まるで悪戯っ子のように笑う。
そんななまえを包む様に抱き寄せ、胸元に押し付けた。
「ハヤテ、くるし」
「…1回しか言わねぇからな…」
"好き"じゃ足りないこの気持ち。
どうしたら君に伝わるだろう…
この最上級の気持ちに
「…愛してる。」
最上級の愛の言葉を…
何より君を
(ハヤテ、暖かい)
(お前が冷たいんだよ)
(ほら、おとなしく暖められてろ)
(は〜い!)
22000hitでリクエストして下さった翼さまに捧げます!!
お待たせ致しました。ハヤテ甘夢でございます。
ハヤテはギャグ寄りになりがちなので、甘く甘くと呪文の様に唱えてました笑
リクエストありがとうございました(*´▽`*)