シリウス海賊船のキッチンは甘い香りに包まれていた。



いつぞや約束した『フルーツジャム』。





「お袋の味とまではいかないが…」




――お前がホームシックにならないように。



そんな優しさが、ほんとに嬉しくて、心強かった。




その『ジャム』を今日は作る事になったのだ。






慣れた手付きでフルーツの皮を剥き、小さく切っていくナギ。

「なまえ、砂糖を量ってくれ。」

「はぁい。」


言われた通り、砂糖を量りながら、ナギのその真剣な横顔に見惚れていると、

「人の顔ジロジロ見てんじゃねぇよ。」


言いたい事があるならはっきり言え。



視線に気付いたナギがちらりとなまえを見やる。

「あ、ごめんなさい。」


なんか、カッコいいなと思って…



そう言うと、
「手伝わないなら向こう行ってろ。」

と言って視線は再び手元に戻された。



でも、バンダナから少し見える耳が真っ赤で、思わずクスリと笑ってしまった。




「なんだよ?」


ジロリと睨まれた。


「もしかして照れてる?」

そう尋ねれば「からかうな。」と怒られた。


最初は無表情でぶっきらぼうなナギを恐いと思った事もあったけど…
でも、最近はいろんな表情を見せてくれるようになった。




彼女の特権ってやつかな?




そう思うと嬉しくて自然と頬が緩んだ。




「何ニヤニヤしてんだ?」

「ふふ、内緒。」



そう言いながら、火にかけられた鍋を覗き込めば、先程カットされたフルーツはつやつやと綺麗な色を発するジャムになっていた。







それをナギがスプーンですくって味見する。

「あ、私も!」



パチリと目が合った瞬間、目の前にナギの顔があって。
ほぼ同時に口の中に甘みとほのかな酸味が広がった。



キスされたんだと気付くのに数秒かかった。

舌を絡められ、歯列をなぞられ、啄むかと思いきや深く口付けられて…

苦しくなって、ナギの胸を叩けば、ちゅっと微かに音をたてて唇が開放された。

鼻と鼻が触れ合うぐらいの至近距離で見つめられ、その目が「どうだ?」と問い掛けてるようで…

「…おいしいです。」

そう白状すれば

「当然だ。」

してやったりとあなたは笑った。





やっぱり君には敵わない
(もっと欲しいか?)
(…それって、ジャムの事?)

(…それとも、)





5000hitでリクエスト頂いた翼様に捧げます!!

ナギとの甘甘な夢…っ!!
お気に召して頂けるといいのですが…

ナギシナリオの無人島でのジャムのくだりを引っ張り出してきました。

名前変換少なくてごめんなさいっ!!!


リクエストありがとうございました!!

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