Happy birthday !!! (2012)





「ほな、今日の練習はこれで終わりや。
明日は部活ないけど、筋トレ忘れへんようにな」
「「「はーい!」」」


今日も1日、仲間たちと笑って
放課後の部活を終えた。

――4月14日。俺の誕生日や。

誕生日ゆうても、俺の日常は変わらず
いつも通りのもんやった。
せやけど、これがええんやと思う。
ひとつ年を重ねても、変わらずにコイツらと
わいわいやっとるのが性に合っとる。
謙也たちがさっき、なんやお菓子いっぱいくれて
おめでとうゆうてくれた。

盛大に祝われたりするよりも、
何気ない日常の中でそんな風に
祝ってもらえるのが嬉しいと思った。



「俺、オサムちゃんに日誌持って行くから
みんな先に帰っといてええよ」
「おー。ほなまた明日な!白石」
「15歳おめでとさーん」
「白石ほんまに15歳かぁ?年齢詐称とちゃうん」
「やかましいわ。はよ帰り」
「ははっ、ほななー」

わいわい騒ぎながら帰って行く謙也たちを見送ってから
日誌を持って職員室へ向かった。




「失礼します。オサムちゃーん…あれ、おらへん」

テニス部はいつも終わるん遅いから
他の先生たちがおらんのは普通やけど
オサムちゃんはまだ帰ってへんはずや。

「またどっかふらついとるんかな」

しゃーない、机の上置いて帰ろ。

ほんまにあの自由人め、と
オサムちゃんの机の上に日誌を置いて
職員室を出ようとしたとき、
ポケットに入れてた携帯のバイブが振動した。
画面を見ると、謙也からの着信やった。


「もしもし?どないしたん謙也」
「白石!!ちょぉ、やばい!はよ部室来て!」
「は?お前帰ったんとちゃうん」
「忘れモンして金ちゃんと一緒に取りに来たんやけど…」
「金ちゃん?」
「せや、ほんで金ちゃんがアホみたいに騒ぐから
コケて怪我しよってやな、あぁこら金ちゃん!じっとしとき」
「!待っとき、すぐ行く」

電話を切った後、職員室を出て
急いで走って部室へと向かった。




ガチャッ

「金ちゃん!!大丈夫か?」


飛び込むように部室に入ると、
なぜか電気が消えとった。
外も暗いせいか、中が全然見えへん。

「謙也?」

壁に手をついて、スイッチを探り
パチンと電気をつけた。

――その瞬間。



パァン!!!

「「「白石、誕生日おめでとーっ!!」」」



「……え?」


突然クラッカーの音が鳴り響いて、
思わず驚きに閉じた目をゆっくり開けると
なぜか帰ったはずのテニス部レギュラーたち。

自分の髪に降ってきたクラッカーのテープと、
壁にでっかく貼られた紙に書いてある、
「白石15歳おめでとう」という下手くそな字と、
机の上に置いてあるケーキと、
なぜか部室におる仲間とオサムちゃんの姿を見て
ようやく自分の状況を理解した。
せやけど、驚きで不覚にも固まってしもて。


「ぎゃはは、白石めっちゃびっくりしとるやん」
「おもろ〜大成功やな!」
「俺の演技力のおかげやろ!」
「謙也さんノリノリすぎてキモかったわ」
「しばくぞ光」
「蔵りぃん、おめでとぉ!愛してるわーん」
「あっ小春!浮気か!?」
「白石ぃ〜おめでとーう!!」


ぎゃあぎゃあ騒いで笑いかけてくる仲間たち。


「…アホ」

なんや照れ臭くて、せやけど
気持ちがめっちゃあったかくなるのを感じた。


「ほら白石、こっち来んね」
「…おん」

千歳に手招きされて、テーブルの上に置かれた
ケーキの前へと進んだ。

「はい、火ぃつけるで〜」
「もっかい電気消そか」

再び電気が消されて、ケーキに刺さったろうそくに
オサムちゃんがライターで火をつける。

…普通、15本もろうそく立てるか?

そんなことを考えて、自然と笑みがこぼれた。


「いくで、せーの!」
「「「ハッピーバースデー!!」」」

みんなからのその楽しそうな声を合図に、
目の前のろうそくを吹き消した。


「イェーイ!!」
「ええ感じやなぁ」
「テンション上がってきたわ!」
「なんで謙也さんがテンション上がんねん」
「うっさいわ!お前もちょっとはテンション上げてみぃ」
「うわーいケーキや!!食べよ食べよ〜」
「金ちゃん、白石の分ば残しとかんといかんたい」
「小春、あーんしてやぁ」
「自分で食べや。はい蔵りぃん、あ〜ん☆」
「こ、小春ぅ」
「なんか銀にケーキって似合わんなぁ」
「…好物や」
「まじでか!!意外すぎるやろ」


祭でも始まったみたいにはしゃぐみんなを見る。
ほんまに、こいつらは何をするにしても全力で来よるな。

そんな風に、アホやけど優しいこいつらがおって
こいつらと一緒に過ごす時間が当たり前になっとったわ。
それがどうしようもなく好きな自分がおる。

――あかん、感動してもたやんか。



「…みんな、おおきに」

自然と口をついて出た言葉を溢すと、
ピタリと動きを止めたみんなが
俺の方を見て、顔を見合わせてから
照れ臭そうに笑った。

「そんな改めて言うなや。恥ずいやろ」
「白石感動した!?泣いとるんちゃうか〜?」
「アホ…泣いてへんわ」
「つまらんなぁ〜泣けよ白石」
「なんやそれ」

おかしくて、仲間たちが好きで
心の底から笑った。


「ん。やっぱ泣くより笑ったモン勝ちや」
「オサムちゃん」

謙也たちと一緒になって笑っとったら、
オサムちゃんに頭をポンポンされた。

「おぅ白石。実は俺らから、もういっこ
プレゼントあるんやけど受け取ってくれるか?」
「プレゼント?」
「せやせや〜白石、ちょっと目ぇ瞑っといてや!」
「ええって言うまで絶対に目ぇ開けたらあかんで!」


言われるがままに目を閉じたけど、
なかなか開けてええという声が聞こえへん。
しばらくの間、その体勢で待ってたら
不意に、カチャリと扉が静かに開く音が聞こえた。

何やろ、と考える前に背中に感じたのは、
あたたかい体温。



――…あ、


そんなはずない、と思った。


けど、この愛しい体温を俺が間違えるはずがなかった。


「…白石さん」


振り返らんでも分かる。
目を開けんでも、声を聞かんでも分かった。


「白石、もう目ぇ開けてええで」

そう言った謙也の声を聞くよりも早く、
振り返ってその体を思いっきり抱き締めた。


「白石さん…誕生日、おめでとうッス」
「…赤也」


ずっと聞きたかった声が、
ずっと触れたかった体温がそこにあって。
少し体を離して顔を見ると、
にっこりと花が咲いたように笑う赤也と目が合った。

「赤也…ほんまにびっくり、するやんか」
「へへっ!」


「おーおー、見せつけてくれるなぁ」
「なんや急に暑なってきたなこの部屋」
「オサムちゃんクーラーつけて〜」


――…なんやねん、ほんま。

こんなん、あかんやろ。反則やわ。


「赤也…新幹線代どないしたん?高かったやろ」
「半分は、貯めてた小遣いで足りたッス!
もう半分は…みんなが、出してくれて」
「どや白石!俺らのプレゼント最高やろ」
「感動して言葉も出ぇへんか〜?」
「泣いてもええねんでぇ?」

ぎゅ、と赤也を腕の中に閉じ込めたまま
みんなを見つめると、謙也と目が合った。
謙也は、少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。


「あー、白石。いつも俺らのこと考えてくれて、おおきに」

――謙也。
おおきにって、そんなん、こっちの台詞やんけ。
お前の裏表のない明るさに、俺もみんなも
いつも救われとるんやで。


「まぁ…白石おらへんかったら今の俺らはおらんわ」

――ユウジ。
なんやねん、お前まで改まって。柄とちゃうやろ。
アホなことばっかしとるけど、誰よりもみんなのこと
よぉ見てくれとるん知っとる。


「蔵りんはウチらの最高の部長やで」

――小春。
いつもさりげなくフォローしてくれるのはお前やんか。
お前の優しさに何回助けられたか。
お前のおもろさに何回笑わされたか。


「白石やからここまでやってこれたとよ」

――千歳。
なんやねん、いつもふらふらしとるくせに
こんな日だけちゃんと部活来よって。
お前のおかげで俺ら、全国まで勝ち進めたんや。


「…せやけど、いろいろと一人で抱え込む癖は止めた方がええ」

――銀。
しんどいとき、銀が一番に気づいてくれるよな。
人の痛みに敏感で、せやけどごちゃごちゃ言わんと
いつも黙ってみんなを支えてくれとる。


「まぁ…部長は、ずっと俺の目標っすわ」

――財前。
お前、こんなときだけ素直になるんやめぇや。
財前が部活入ってくれてから、俺らみんな
もっと部活が楽しくなったんやで。


「白石ぃ〜!ケーキめっちゃうまいなぁ!」

――金ちゃん。
ほんまにいっつも、金ちゃんに元気もらっとる。
金ちゃんがおったら、なんか部活に笑顔が増えるんや。
ゴンタクレやけどな。


「ははっ、お前ら最高やわ」

――オサムちゃん。
オサムちゃんが最高やっちゅーねん。
いつも見守ってくれてありがとう。
ほんまに、おとんみたいに思っとるよ、みんな。


「白石さん、」

――赤也。


「…だいすきッス」


赤也。

俺は…おれは、お前に会えて。




「…お前らみんな、めっちゃ、好きや」

思わず目頭が熱くなって、
赤也を抱き締めながら肩に顔を埋めた。


「え、白石どないしたん?」
「ほ…ほんまに泣いたんとちゃう?」
「えぇっ!?」
「アホか…泣いてへん」

込み上げてくる熱いものを堪えてたら、
赤也にぎゅっと抱き締め返された。


「白石さん」
「ん…なに?赤也」
「俺、白石さんに会えて、よかったッス。
いつも…その。ありがとう」

頬を染めながら、満面の笑顔で伝えられた
その飾らん言葉に、心が満たされるのを感じた。
胸が熱くなった。


謙也たちが、ヒューヒューとか言うて茶化しとるけど
そんなん気にする余裕もないくらい、嬉しかった。
目の前の愛しい恋人の頬を、両手でそっと包み込む。

「赤也、」
「白石さ…、んっ」

俺の名前を呼ぼうとしたその唇に、
自分の唇を重ねて塞いだ。
驚いたような表情で、顔を真っ赤にして
かたまってしまった赤也を、もう一度抱き締める。

「赤也、ありがとう。ほんまに…おおきに」
「白石さん…」


「千歳ぇ〜、なんでワイの目隠すん?なんも見えへんー」
「金ちゃんには刺激が強いばい」
「そこのお二人さーん、イチャイチャすんのは
後でふたりっきりになったときにしぃや」
「見せつけてくれるわぁ、ほんま。小春、俺らも」
「さぁケーキまだあるわよ〜!みんな食べやぁ」
「小春ぅ、聞いてや!」
「ユウジ先輩…キモいっすわ」
「…仲睦まじきは、良きことなり」
「ほらお前らー。パーティはまだまだこれからやで。
笑って騒いで、楽しんだモン勝ちや」
「「「おーう!!」」」



「なぁ、みんな」

赤也を胸に抱きながら、
ぎゃあぎゃあ騒いどるみんなを見渡すと
みんなが俺の方を見た。


「俺、今日のこと一生忘れへんわ」


――俺は今日、ひとつ年を重ねたけど。

これから、また何度も何度も年を重ねて
いつかは違う道を行くことになる日が
来るんかもしれへんけど。


それでも。


「これからも…よろしゅうな」


ずーっと、お前らとアホやってたいから。


「そんなん、当たり前やんけ!」
「かっこええこと言うなや白石!」
「…おん」


ありがとう。

お前らに会えて、ほんまによかった。

ずっと、俺の仲間でおってくれ。


「…最高のプレゼントやわ」


そう呟くと、腕の中の赤也が顔を上げて
ふわりと笑顔を見せた。

「みんな、白石さんが大好きなんッスよ!」



――俺の人生は、こんなにも
大好きな人に囲まれとるんやなぁ。


きっと、これからも、ずっと。






おわり


*******


白石さん、お誕生日おめでとう!!(遅)

いやぁ、かなり今更ですね…。
先月はリク消化に終われて書く余裕がなかったので
こんなに遅れてしまいました;
けど、どうしても白石さんのお誕生日は
お祝いしたかったので書きました*

四天宝寺はみんな、白石さん大好き。
みんなに慕われてる白石さんが、
わたしはほんとに好きです(笑)

白石さんへの愛を精一杯込めて書きましたが
いかがだったでしょうか。

続編として、この後、白石さんの家に帰って
改めて赤也とふたりきりでお祝いする話も
書こうと思っております♪

読んでくださってありがとうございました!
白石さん愛してるよー!

2012.05.09

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -