どっちなの?




あずまさんからのリクエストです。
リョ赤で甘。
※合宿所が一人部屋設定
※先輩ズ、絶賛暴走中

それでは、どうぞ!


*******



「赤也と越前ってさぁ…どっちがどっちだと思う?」


ブン太のそのひとことに、
ここには居ない赤也以外の立海レギュラーたちが
ピタリと動きを止めてブン太に注目した。

「どっちって、何がだよブン太」
「アイツらってまぁ、認めたくはないけど
付き合ってんじゃん?恋人同士なわけじゃん。
だから、どうなのかなーって」
「どうって…だから何が」
「だーかーらー」
「どっちが上でどっちが下か、ってことだね」

幸村のその言葉にブン太が「そうそう!」と頷く。


ブン太の言う通り、赤也とリョーマは
いわゆる恋人同士というやつなのだが
いつもお互いにツンツンしてばかりなため
恋人らしい甘い雰囲気をまとっているところなど
誰も見たことがなかった。
だから、どちらが上でどちらが下、つまり
どっちが攻めで受けなんだ、という話らしい。

「上とか下とか、一体なんの話なのだ幸村」
「まぁ知識の無さすぎる真田はほっといて、
確かにそう言われてみれば気になるね」
「おい幸村、だからなんの話」
「ねぇ、みんなはどっちだと思う?」

真田スルーの方向で行くことに決めた幸村が
レギュラーたちに尋ねると、
全員が、うーんと考え込んだ。


「やっぱ赤也が上じゃねぇか?」
「俺もそう思う。プライドの高い赤也が
年下のチビに上を譲るなんて考えらんねーだろぃ」
「…皆さん、他人のそういったプライベートな話は
触れずにそっとしておくべきだと思いますが」
「ふふ、いいじゃない柳生。じゃあさ、みんな」

にっこりと笑った幸村は、
とんでもないことを言い出した。


「確かめてみようよ」


「…え」
「確かめるって、本人に聞くのか?」
「絶対に言ってくれねぇって」
「んーそうじゃなくてさ、赤也の部屋に隠れて
ふたりきりになったときの様子を見るの」
「はぁ!?」
「バレたらどうすんだよ…」
「バレたら、ごめんって言おうよ。ね?」

どこか楽しそうに、首を傾げてみんなを見る幸村。
以外とこういうイタズラは嫌いじゃないらしい。

やめとこうぜ、
と全員が言おうとした。
しかし、赤也はどっちなんだろう、
という興味が沸いているのも事実だった。


「まぁ万が一、赤也が越前を押し倒したりしそうになったら
そうなる前に出ていけばいいよな」
「ブン太は赤也が上派なんだね」
「おう!越前と赤也で、赤也が下はありえねーだろぃ」
「ふふ、俺もブン太と同じ。みんなは?」
「ジュース賭けようぜぃ!」
「んじゃ俺も赤也が上」
「悪趣味な遊びですね…」

ブン太、ジャッカル、幸村が
120円(ジュース代)を机の上に出し、
口では止めようとするフリをしながらも
柳生も「赤也が上」の方にそっと120円を置いた。

「蓮二と仁王はどうするの?」
「そうだな…俺のデータでは、
赤也が下の確率は限りなく0%に近い」
「なんだよ〜柳が言うなら決まりじゃん」
「つか全員赤也が上に賭けるなら、賭けにならなくねぇか?」
「どーせ仁王も同じだろぃ」

「……赤也が、下」


「「「「…え?」」」」
「赤也が下、にジュース全員分じゃ」

さらっと言ってのける仁王に、
全員が驚いて注目する。

「仁王、それはねぇって」
「ないない」
「相手はあのチビだぜぃ?」
「ほんとにいいのかい?仁王」
「かまわんぜよ」

ニヤリと笑う仁王に一瞬怯むも、
いやこっちには蓮二のデータがある、
というか赤也が下のはずがない、と
全員が自分自身に言い聞かせた。

「おいお前たち、だから何の話を」
「さぁ行こうか」





「狭っ!おいジャッカル縮め!」
「めちゃくちゃ言うな」
「押し入れの中に7人はキツいぜよ」
「覗き見など、本当に悪趣味ですね…」
「とか言いつつ柳生もちゃっかり入ってんだろぃ!」
「しーっ!もうすぐ部屋に戻ってくる頃だよ」

部屋の押し入れの中で、ぎゅうぎゅうに詰めながら
息を殺して赤也の帰りを待つ立海レギュラーたち。
赤也はここのところ、合宿の練習が終わると毎日のように
越前と居るのは柳によって調査済みだ。
きっと一緒に部屋に入って来るはず。

早く帰って来い、赤也、越前!

最初は渋々といった様子だった者たちも、
この状況にわくわくしつつあった。
早く早くと、赤也の帰りを待つ。
未だに意味が分かっていない真田を除いて、だが。

「みんな静かに。廊下から声がする」
「帰って来たようだな」
「いよいよだな、なんか緊張してきた」
「いいですか皆さん。打ち合わせ通り、
少し彼らの様子を見るだけですよ?
怪しげな雰囲気になるなったらすぐに出て行きます」
「おっけー!」




ガチャッ


「なんだよ、もっぺん言ってみろ!」

扉が開く音がするなり、いきなり
赤也の不機嫌そうな声が聞こえた。

「だから、アンタ鈍感すぎ」
「はぁ!?なんの話だっつーの」
「いろんな奴に無防備になつきすぎだって言ってんの」
「意味わかんねーし」

どうやら、いつも通り絶賛喧嘩中らしい。


「…なんか喧嘩してんぞ」
「ふたりのときもこんななんだな」
「全然甘い雰囲気じゃねーな」
「つーか、赤也と越前ってもしかして
恋人らしいことしたこと無いんじゃね?」
「ふふ、やっぱりね。赤也をそんな
手の早い子に育てた覚えはないからね」
「どうします?もう出て行った方が良いのでは」
「もうちょっとだけ様子見ようぜぃ」

僅かに開けた襖の隙間から、
ブン太と幸村が目を除かせて
ふたりの様子をじっと見つめる。
ふたりは、向かい合うように座っていた。


「あんまり誰にでもホイホイついて行くのやめれば?」
「なんだよ!んなことしてねぇし!
お前だって、青学の先輩たちに…なついてるくせに」

少しうつむいて、不機嫌そうに呟く赤也。

「俺とアンタじゃ違うっしょ。
もっといろんな奴に狙われてること自覚持ってよね」
「は?んなことあるわけねーだろ。
つーか、俺見てたんだからな、今日だって
菊丸さんに抱きつかれてただろ。
桃城にも…頭撫でられてたしっ!」

そう言って、赤也は
膝の上に乗せた拳をぎゅっと握りながら
顔を逸らして床を見つめた。


「赤也ってヤキモチ焼きなんだなぁ」
「可愛ええのう」
「あの坊やが相手ってのが癪に触るけどね」
「落ち着け幸村。それ以上、手に力を入れたら
襖に穴が空く確率97%だ」
「やだ。俺も赤也にヤキモチ焼かれたい」
「やだって…キャラ守れよ幸村」

ひきつった笑顔を浮かべながらも
襖を突き破りそうな勢いの幸村。
半分面白がって来てみたものの、
やはり可愛い赤也が誰かの恋人だと実感すると
腹が立ってしまうものらしい。
それは、他のメンバーたちも同じだった。

「…そろそろ出ようぜ」
「だな。ごめん、つってさ」
「これ以上喧嘩が悪化して気まずい雰囲気になると
出ていきにくくなりますしね…」

全員が顔を合わせて、出ていこうと
襖の取っ手に手をかけた、そのとき。


「ふーん…じゃあもう抱きつかれないようにする」
「え?」
「頭も撫でられないようにする」
「…越前、」
「だからアンタも」
「!わっ…」


ドサッ。


「他の奴に触らせないでよ」
「え、えちぜ…」

赤也の腕を引き、そのまま床へと押し倒すリョーマ。



――あ、あれ?


驚きのあまり、固まる先輩ズ。
越前が赤也を押し倒し…あれ?
赤也が、越前を押し倒すんじゃなくて?


「ねぇ…返事は?」
「べ、別に触らせてるとか、そんなんじゃねぇもん。
お前の考えすぎだっつーの」
「ふーん。認めないんだ」
「!あ、ちょっ…」

Tシャツの中にするりと手を入れると、
赤也の体がびくりと跳ねた。

「ば、ばかっ…やめろ」
「じゃあ約束してよ」
「な…にを」
「他の奴に触らせない、って」
「んっ」

そう言って、リョーマは
赤也を組み敷いたまま、奪うように唇を重ねた。



「………」
「……」

あまりの衝撃で、すっかり
出ていくタイミングを失った幸村たちは
呆然と押し入れの中で真っ青なまま黙り込んでいた。


――赤也が、まさかの、下。


ジュース、楽しみじゃの〜
と仁王がご機嫌な様子で鼻歌を歌いはじめる。
負けた。賭けに。
いや、そんなことはどうでもいい。
俺たちの可愛い赤也が…まさか。


「…ん、はっ」

ぎゅっと目を瞑ってキスを受ける赤也。
何度も角度を変えて深く口付けられ、
苦しそうにリョーマの胸を押し退けようとするも
押し倒されているという不利な体制では
力が入らないらしく、されるがままである。

「ふぁ…っ」

真っ赤な顔でリョーマの服の裾を掴む赤也を見て
ようやく満足したように、ゆっくりと唇が離された。


「はぁ、は…ぁ」
「…約束する?」

顔を覗き込まれて、思わず真っ赤な顔のまま
こくんと頷く赤也。
そのまましばらく見つめ合って、
またゆっくりと唇を重ねた。

「…ん…っ」

とろんとした瞳でリョーマを見つめる赤也の体を、
リョーマがぎゅっと抱き締める。
再びTシャツの中に手を入れるが、
今度は抵抗せずにおずおずと背中に手を回した。


――俺たちの可愛い赤也が。

頬を蒸気させて、甘えるように
越前に抱き付いている。
いつも「せんぱーい!」と言って
無邪気に走って来ては可愛らしい笑顔を見せる
あの、赤也が。

「…っ、あ…りょー、ま」




「ストォォォォォォップ!!!!!!」


どかーん!と襖を蹴り破って、
幸村が目の色を変えて叫びながら
ふたりの間に入りリョーマから赤也を奪った。


「…へ?」

何が起こったのか分からない、といった様子で
ぽかーんと幸村を見つめる赤也。

「赤也!お前をそんな子に育てた覚えはありません!」
「落ち着け幸村!」

ドタドタ、と次々に押し入れの中から
なだれ込んでくる立海レギュラーたち。
その様子を、やれやれといったように見つめ
リョーマは溜め息を吐いた。

「いつ出てくるのかと思ったよ、アンタたち。
なかなか出てこないからさ」
「越前…お前、気づいてたのかよ」
「当たり前じゃん。つか何やってんすか」
「うるせー!越前テメェ、よくも俺らの赤也をーっ」
「まぁまぁ、ブンちゃんも落ち着きんしゃい」

青筋を浮かべながら、リョーマを射殺さんばかりの目で
睨み付けながら赤也を抱き締める幸村と、
リョーマの胸ぐらを掴みながら半泣きになるブン太。

そんなふたりをじっと見つめていたリョーマは、
やがて、幸村から赤也を抱き寄せるように取り返して
いつもの勝ち気な笑みを見せた。


「邪魔しないでくれる?恋人同士の時間」
「………!!」


「まだまだだね、先輩たち」



この日から、立海3年生たちによる
赤也と越前をとことん邪魔するぞ計画が
始まったとか始まってないとか。




◎おまけ

「おーい、赤也」
「駄目じゃ、ショックで呆けとる」
「見られているなんて微塵も思っていなかったんでしょう」
「どうしよう、赤也明日から口きいてくれっかな…」
「「「「……………」」」」
「あ、謝ったら許してくれるよな!」
「そ…そうだな」
「あっそーだ!焼き肉でもおごってやろうぜ!ジャッカルが」
「俺かよ」
「なぁ、それで許してくれるよな?幸村くんどう思う?」
「…………」
「幸村くん!」
「駄目だ、精一もショックで座ったまま気を失っている」
「分かる!分かるぜ幸村くん!!
絶対にあのチビから赤也取り返すからな!」
「明日のミーティングはそのことについて話しましょう」
「「「おう!!!」」」

「…まだまだ、だね」




◎おまけ2

――1週間後――

「〜♪」
「あ、仁王先輩!なんでそんなに
いっぱいジュース持ってんすか?」
「賭けに勝ったからの(頭なでなで)」
「……?」
「ほれ赤也、1本やるから飲みんしゃい」
「わぁ、ありがとございまーすっ」


「この柳蓮二のデータが通用しないとは…
恋愛とは奥が深い」
「ん?なんか言ったか柳」
「いや…なんでもない。それよりも、どうだ真田の具合は」
「あーまだ寝込んでるぜぃ。真田は
キスシーン見たときに既に気絶してたからな」
「よっぽどショックだったのだろうな」



◎おまけ3

「いいかい、みんな!この計画表通りに
あの坊やと赤也がふたりきりになるのを徹底的に阻止する!
油断することは許されないよ!いいね」
「「「イエッサー!!」」」

「…ところで、この計画を実施すれば
我々が赤也に嫌われる確率は98%なわけだが」
「………」
「…………」
「ここをもうちょっと、こうしようか」
「そ、そうだな…これはちょっとやりすぎかも」
「えーっと…これくらいで、いいか」




おわり


*******


す、すみませぇぇぇん!(土下座)

リョ赤を書いてると、どうしても
なんかすごい恥ずかしくて照れてしまってですね。
なので先輩たちに暴走してもらい
それを紛らわそうとした結果こうなりました。
反省してますごめんなさい。

あずまさん、リクエストほんとに
ありがとうございました!
リョーマ自体、書くのが初めてだったので
新鮮で楽しかったです。
勝手にわたしの趣味で先輩ズを
登場させまくって申し訳ありません;(笑)
けど楽しかったです!

書いてて思ったんですが、
リョーマと赤也はお互いにヤキモチ焼きだと
可愛いかなーと。
かわいらしいカップルですよね*

あずまさん、よければこれからも
このサイトをよろしくお願いします♪

2012.04.30

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