あこがれ以上、れんあい未満




まどかさんからのリクエストで
「無邪気な赤也に振り回される跡部で、ほのぼのな話」です。
それでは、どうぞ!


*******



「あーとーべーさーん!」


本日の練習終了、というコーチの声に重なるように
コートに響き渡る元気な声。

「あ、まただ」
「また切原だな」
「毎日毎日、よぉ飽きひんなぁ」

上から、向日、宍戸、忍足。
氷帝レギュラー3年生(既に寝たジロー除く)である。
3人は、タッタッタとコートを走る赤也を
呆れたような関心したような目で見つめた。

赤也が一直線に目指す先に居るのは…。


「跡部さーん!」
「うるせぇ。一度呼べば分かる」
「はいッス!」

我らが氷帝学園テニス部の部長、跡部景吾だった。


赤也はここのところ毎日、合宿の練習が終わり次第
跡部のところへ行っては何かとかまってもらおうとする。
跡部のもつカリスマ性とテニスの上手さに
純粋に憧れているようだった。

「跡部さん、俺、今日の試合勝ったッス!」
「…そうか」
「はい!」

キラキラした目で、じっと跡部を見つめる赤也。
顔には、『跡部さんに誉めてほしい』と書いてある。

「…まぁ、最近サーブのコントロールが
前よりかはマシになったみてぇだな」
「!ほんとッスか!?…へへっ」

跡部なりの最大限の誉め言葉を受けて、
嬉しそうに、照れたように笑顔を見せる赤也。

「俺、もっと頑張ります!お疲れさまッス!」
「…ああ」

そう言って、また元気にタタタと走って
宿舎の入り口へと向かう赤也。
跡部は、遠くなった赤也の後ろ姿を見つめている。

宿舎の入り口をくぐろうとした赤也は足を止め
クルッと振り返って、満面の笑顔で
跡部に向かってぶんぶん手を振ってから宿舎に入って行った。

「…バーカ」



「意外なんは、跡部が嫌がっとらんゆうことやな」
「俺も思った!結構満更でもなさそう」
「切原と話した後はなんとなく機嫌いいしな」
「え、そうなん?ほんなら今の跡部、どうなん樺地」
「……すごく、機嫌がいいと思います」
「「「へぇー…」」」




「跡部さーん!俺が背中流します!」
「…アーン?」
「いつもアドバイスもらってるから、お礼ッス!」
「……フン、勝手にしろ」
「はい!」

大浴場で跡部に遭遇した赤也は、
一目散に嬉しそうに跡部の元へと走った。

「おい、こんなとこで走んじゃねぇ。コケるぞ」
「大丈夫、だいじょう…わあっ」

落ちていた石鹸に足を滑らせるという
なんともお約束な展開で、
赤也の体は前へと勢いよく倒れた。
いや、倒れかけた、が正しい。

「ったく…馬鹿かテメェは」
「跡部、さん」

赤也がコケることを予測して立ち上がった跡部に
抱き止められる形で支えられていた。

「だから、言っただろうが」
「……ごめんなさい」

大好きな跡部に怒られて、しょんぼりと下を向く赤也。

「…怪我したらどうすんだ馬鹿」

自分のために一生懸命な赤也。
しゅんとうつむくその頭をグシャっと撫でると
遠慮がちに視線を上げた赤也と目が合った。

「……っ、」

潤んだ瞳に見つめられて、柄にもなく動揺する跡部。
赤也の真っ白な肌は、風呂場の熱気のせいで
ほんのりと赤く蒸気していて、
普段は見せない色気が漂っている。
そんな赤也の姿に、思わず鼓動が跳ねた。
それをごまかすように、目を逸らして
シャワー前の椅子に腰を下ろす。

「…オラ」
「え?」
「背中、流すんじゃねぇのか」
「!…は、はいッス!」

ぱっと表情を輝かせて、赤也は嬉しそうに
跡部の側に駆け寄った。



「跡部の奴、切原に背中流されてるぜ」
「なかなかおもろい光景やなぁ」
「…役目取られちまったな、樺地」
「……ウス」





「跡部、トゥサーブ!」

「あとべさーん!ファイトっすー!!」

手すりから乗り出す勢いで、
跡部に応援コールを送る赤也。

「頑張れ跡部さーん!うわ、すっげぇ!マジかっこいい!」



「なんや跡部、なんとなく気合い入ってへん?」
「そんな本気にならなくても勝てる相手なのにな」
「あ、ストレート勝ちした」
「ほんまや。切原がタオル持って行ったで」
「すっげー走ってるな」
「…あ、コケた」
「激ダサだな」



「…いてて、」
「ったく、学習しろテメェは」

転んだ赤也を抱き起こして、砂を払ってやる跡部。

「あ、タオル…」

跡部に渡そうと準備していたタオルは、
転んだせいで少し砂がついてしまっていた。
悲しそうにタオルを見つめる赤也。

「おい、切原」
「……」
「………行くぞ」
「え?どこに、うわぁッ」

ひょいっと赤也の体を横抱きして、
跡部は立ち上がり歩き始めた。

「あ、あとべさんっ、どこに」
「アーン?保健室に決まってんだろうが」
「大丈夫ッスよ、これくらい…」
「馬鹿。擦りむいてんだろ」
「けどっ」
「俺様の言うことが聞けねぇのか?」
「!」

綺麗に整った顔で、フッと不敵に笑う跡部に
思わず見とれて何も言い返せなくなる赤也。
跡部の服をぎゅっと握って、身を任せた。
チラリと跡部の顔を盗み見る。

ドキドキ、と心臓の音が早まったが
その理由はまだ、今の赤也には分からない。



「おい切原、そのタオル寄越せ」
「えっ…けどこれは、落ちて」
「いいから寄越しな」

赤也から渡されたタオルの砂を払って、自分の首にかける跡部。

「…部屋に、タオルを忘れたところだったからな」
「跡部さん…」
「まぁ、礼を言っといてやる」

そう言って跡部は、グシャっと
赤也の頭をまた撫でた。
乱暴なようで、優しいその手は
あったかくて心地よいもの。

「…へへっ」


もしかすると、このドキドキが何なのか
赤也が知る日は意外と、近いのかもしれない。





おわり


*******


まどかさんからのリクエストでした!
こんな感じでいかがでしょう、
ほのぼのになった…かな?
なんか小ネタ集みたいになってすみません(笑)

いやぁ、無邪気でドジな赤也に
世話を焼く跡部さんってすごい萌えますね。
天然赤也にどれだけ振り回されたとしても、
結局最後はかっこよく決める跡部様なのでした。

赤也は、跡部さんへの感情は憧れだと勘違いしてる設定。
毎日話したくて、側に行きたくて、かまってほしいのは
大好きだからなのに、まだ気づいてないってことで。

跡赤は、アンケートでも
かなり票が入ってるしわたしも好きなので
どんどん増やしていきたいです。

まどかさん、お待たせしてしまい
申し訳ございませんでした;
素敵なリクエスト、ほんとにありがとうございました♪
これからもぜひよろしくお願いします*

2012.04.23

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