俺様、至上主義っ!




リクエスト第十三段!
ルッコラさんのリクで跡⇔赤です。
「遊園地へ初デートに来た跡部と赤也。
途中で様々な邪魔が入り気持ちがすれ違ってしまうが
最終的にらぶらぶな感じ」といただきました。
ほんと、みなさん毎回楽しいリクエストありがとうです*(笑)
それでは、どうぞ!


*******



「やべっもうこんな時間!行ってきまーす!」

急いで靴紐を結ぶ赤也。
いつも部活のユニフォーム姿で家を飛び出す赤也だが、
今日はいつもと違い、私服姿である。

「へへッ、遊園地!」

なぜ赤也がこんなにウキウキしているかというと、
久しぶりに部活が休みになったため、
遊園地に行くことになったのだ。
それだけではない。
その一緒に行く相手というのが…。


「うわ、間に合うかな!遅刻したら怒られそう」

遊園地に行くのが楽しみすぎて、
なかなか眠れなかったため寝坊してしまったらしい赤也。
腕時計を確認して、赤也は勢いよく玄関のドアを開けた。


「…げっ!!?」

ドアを開けて見えた光景に、赤也は自分の目を疑った。
なんと、自分の家の前には、見るからに高級そうな
ピカピカに磨かれた黒いリムジンが停まっていたからである。

しばらくの間ぽかーんとその車を眺めていると、
ウィーン…とリムジンの後部座席の窓が開いた。

「何ぼーっとしてやがんだテメェは。アーン?」
「あ、跡部さ…っ!」

窓から少し顔を出したのは跡部だった。
そう、今日一緒に遊園地へ行くはずの。

「なっ、何してんすか!?」
「迎えに来てやったんだろうが。早く乗りやがれ」

跡部が指をパチンと鳴らすと、
運転手らしき人が扉を開けて赤也を誘導する。

「さぁ、こちらです。切原様」
「え…えっ、あの」
「どうぞ」

パニックに陥る赤也を問答無用で招き入れ、
車は発進したのだった。



「跡部さんっ」
「アーン?」
「び、びっくりしたじゃないッスか!」
「フン…お前のことだから寝坊して焦ってたんだろうが、どうせ」
「!!う…」
「図星じゃねぇか」
「…すんません」

すべて見透かしているような跡部に、
赤也はしゅんとして謝るしかなかった。

「また遅くまでゲームでもしてたんだろう」
「ち、違うッスよ!」
「ゲームじゃなくて漫画だったか?」
「ちがう…あ、跡部さんと一緒に遊園地行けるんだって思ったら」
「……」
「嬉しくて、楽しみで寝れなかったんすもん…」

うつむきながら、ぷくっと頬を膨らませて
拗ねたように呟く赤也。
少し頬が赤く染まっている。
そんな可愛い赤也を見て弛みそうになった頬を、
跡部はごまかすように引き締めた。

「子供かお前は」
「!こ、子供じゃねぇッスよ!」

大きな手で頭を撫でられて、
赤也の心臓はドキドキと高鳴った。


憧れの、大好きな跡部とのデート。
何日も前から楽しみにしていた。
遊園地なんて興味なさそうなのに、
どうして一緒に行ってくれるのかは分からないけど、
跡部とふたりで出かけるという状況に赤也はドキドキしていた。

跡部に対する気持ちが、単なる憧れだけではないと
気づいたのはごく最近のこと。
俺様だけど頼りになって、器が大きくて
時折見せる優しさに、赤也は惹かれていた。

――跡部さんはモテるし、俺みたいな子供は
全然相手にしてもらえねぇだろうけど…。

それでも、一緒に居られることが嬉しかった。
チラリと隣に座る跡部の綺麗な横顔を盗み見る。
ほんとにかっこいい人だな、と思わず見惚れてしまい
高鳴る心臓を慌てて振りきるようにぶんぶん首を横に振った。

「おい」
「へっ!?な、なんすか?」
「着いたぞ」
「あ…」

赤也がひとりで悶々としている間に、
遊園地へと到着したようだ。

「うわぁー!遊園地だー!!」

運転手により開けられたドアからぴょんと飛び降りて、
赤也は目をキラキラと輝かせた。

「では、景吾様。夜にまたお迎えに上がります」
「ああ」

そう短く返事をして、跡部は赤也の頭にぽんと手を乗せた。

「はしゃぎすぎだろーが」
「だって、遊園地ッスよ!俺、ずっとここ来たかったんすもん!」

笑顔で跡部を見上げる赤也。
嬉しそうな赤也に、跡部も少し微笑んで返した。

「バーカ。はしゃぎすぎてこけんなよ」
「はいッス!ね、早く行きましょ、跡部さんっ」

素直に返事をして、待ちきれないというように
赤也は跡部の腕を引いて入場門へと向かった。



「いらっしゃいませ!どのチケットになさいますか?」

入場門の受付で、そう尋ねられる。
どうやら、1日券や半日券など、いろいろと選べるようだ。

「お前はどれがいいんだ?」
「えっと…」

赤也は自分の財布を取り出して、中身を確認する。
――よし、足りる!
今日のためにコツコツお菓子などを我慢して
貯金していたから、なんとか足りるようだ。

「この1日遊び放題のやつ!」

赤也がお金を取り出そうとすると、
跡部が先にスッと2人分のお金を払ってしまった。

「あ、跡部さん!だめッスよ!」
「うるせぇ。黙ってろ」
「けどっ…!」
「…金貯めて、ゲーム買うっつってただろうが」
「!」

そういえばこの間、跡部と話したときに
赤也は嬉しそうに新しいゲームを買うと言っていた。
そのために頑張って貯金するんだと。

「俺様は遠慮されんのは好きじゃねぇ」
「跡部…さん」

ぶっきらぼうに言い放つ跡部に、
赤也は不覚にもきゅんとしてしまった。
跡部なりの不器用な優しさが、伝わったようだ。
何よりも、以前に話していたゲームのことを
跡部が覚えていてくれたことが嬉しかった。

「あの、ありがと…ございます」
「…ああ」
「お、俺っ!ゲーム買ったら跡部さんに一番に貸してあげますっ」
「……」

頬を染めて、嬉しそうに一生懸命話す赤也が可愛くて、
跡部が赤也の頭を撫でてやろうとしたとき。


「お客様ぁ〜?当遊園地では、
赤也の頭を撫でるのは禁止されております」
「!」

受付の窓から身を乗りだし、跡部の手をバシッと叩くスタッフ。
なぜか眼鏡とマスクで顔を隠している。

「…そんなとこで何してやがんだテメェは」
「跡部さん、知り合いッスか?」
「なっ、ひ…人違いです!初対面だよぃ」

慌てて身を引っ込めようとするスタッフの
眼鏡とマスクを、跡部は問答無用でひっぺがした。

「!ま、丸井先輩っ!?」
「……よ…よぉ赤也。偶然だな」

受付のスタッフは、立海3年、丸井ブン太だった。

「何してんすか!?」
「べ…別に。偶然だし。赤也と跡部が遊園地デートするからって
わざわざここのバイトの面接受けたとか、絶対ねぇから」
「…どんだけ面倒臭いことしてんだテメェは」
「うるせぇ!跡部てめー、代われ!俺が代わりに赤也と遊ぶ」
「行くぞ、切原」
「は…はいっ!じゃあ丸井先輩、また明日ッス!」
「あっ、おい赤也!」

無視してさっさと行ってしまう跡部に、
赤也は慌ててついて行った。

「…くそー!」
「だから言っただろうが、無駄だって」
「うるせぇジャッカル!赤也が跡部とデートだぜ!?
心配じゃねーのかよぃ」
「そりゃ心配は心配だけど…赤也の奴、すげー楽しみにしてたし
あんまり邪魔したら赤也に嫌われるぞ」
「うっ…」

ジャッカルの言葉に、何も言い返せなくなり
ブン太は悔しそうにがっくりと肩を落とした。




「わー、すごい人ッスね!」
「…はぐれんなよ」
「はいッス!」

目を輝かせて、キョロキョロと周りを見渡す赤也。
どれに乗るか目移りしているようだ。

「あっ、あれ!」
「アーン?」

赤也が指差したのは、ジェットコースターだった。
跡部の顔が、僅かに歪む。

「あれ乗りたいッス!」
「…あんなもん乗ったら、髪が乱れるだろうが」
「そんなん気にしてたらだめッスよ!」
「っつーか…落ちねぇのか?あんなスピードで走って」
「え?」
「………」

跡部の言葉に、赤也は目をぱちぱち瞬かせる。

「もしかして跡部さん…」
「なんだ」
「遊園地来るの…初めてッスか?」
「……悪いか」

そう言って、気まずそうに目を逸らす跡部。

――今日、初めてなんだ…!

そう理解した赤也は、顔に熱が集中するのを感じた。
遊園地なんて、きっと興味なくて来たことないのに
今日俺と一緒に来てくれたんだ。
そう思うと、自然と笑顔がこぼれた。

「へへッ」
「…何笑ってやがる」
「俺が案内してあげます!こっちこっち!」

嬉しそうに、跡部の腕を引いて走り出す赤也。
走るな、と言おうとしたが、にこにこしながらはしゃぐ赤也を見て
跡部は言うのを止めて一緒に走った。



「ようこそ!夢のジェットコースターへ!」
「…何名様ですか」

ジェットコースターの入口には、
やたらテンションの高いスタッフと
逆に愛想の無いスタッフが並んでいた。

「2人ッス!」
「はいはい2人ね〜!どうぞ…って、あれ?ちょっと待った」

跡部と赤也がゲートをくぐろうとしたとき、
テンションの高いスタッフに呼び止められる。

「あ〜、どうやらそっちの彼は身長オーバーみたいだね」
「へ?身長オーバー?」

跡部を指差して身長オーバーだと言う。
身長が足りずに乗れないのは普通だが、
高すぎて乗れないなんて、聞いたことがない。

「あの…」
「はいはい、じゃあ彼にはここで待っててもらおう」
「…快適な空の旅へ、行ってらっしゃい(棒読み)」

赤也の背中を押し、ひとりで行かせようとするスタッフ。
それを不審に思った跡部が、赤也の手を掴み引き寄せる。

「わっ!」
「…テメェら、そのサングラス外せ」
「「えっ」」
「バレバレなんだよ。誤魔化してるつもりか」

跡部に睨まれ、黙り込むスタッフ2人。
しかし、観念したのかようやく
かけていたサングラスを勢いよく外して放り投げた。

「ふはははは!俺らの完璧な変装、よぉ見破ったな跡部!」
「…最初からバレバレっすわ、謙也さん」
「さすが氷帝のキングっちゅー話や!」
「え!?謙也さんに、財前っ!?」
「いや…普通、気づくだろーが」

変装(?)を解いた四天宝寺の忍足謙也と、財前光。
それに心底驚く赤也。
跡部は呆れたように、一応ツッコんだ。

「それにしても、なんでバレたんや」
「…はぁ…だから俺、嫌や言うたんすよ」
「なんやねん財前!わざわざ東京まで来たんやから
徹底的にデート邪魔するで!」
「アホやろ謙也さん…」
「アホ言う奴がアホっちゅー話や!あ、あれ?切原と跡部は?」
「もう中入りましたよ」
「は!?なんで止めへんねん光!このボケ!」
「………帰りたい」



「謙也さんと財前までここでバイトしてるなんて、
すっげぇ偶然ッスよね!
あれ?でもあの2人、なんで東京でバイトしてんだろ」
「………」

相変わらずの鈍感っぷりに返す言葉が無く、列に並ぶ。
日曜日というだけあって、かなりの人である。

「あの…跡部さん」
「なんだ」
「ほんとに、良かったんすか?
せっかくの休みなのに俺とこんなとこ来て…」
「何がだ?」
「だ、だって…跡部さん、遊園地とか興味ねぇのかなって」

そう言って、うつむく赤也。
跡部が黙り込んでいたから、退屈していると勘違いしたのだろう。

「…馬鹿かテメェは」
「!」
「この俺様が、来たくねぇ所に仕方なく来るように見えんのか?」

そう言って、今度こそ赤也の頭を撫でる跡部。
俺様な言葉とは正反対の優しい手に、赤也は
ようやく安心したように笑った。




「ジェットコースター、マジ楽しかったッスね!」
「……そうかよ…」

結局、ジェットコースター大好きな赤也は
あの後もう一回乗りたい!もう一回だけ!を繰り返し
跡部は計3回も乗せられることになってしまった。
初めて乗ったジェットコースターに、
柄にもなくげっそりしている跡部。
どうやら、絶叫系はあまり得意ではないらしい。
しかし、きゃっきゃとはしゃぐ赤也の姿を見て
たまにはこんなのも悪くねぇ、と思ってしまう跡部だった。


「へへッ、楽しいなぁー!あ、次はあれがいいッス!」

赤也が指差したのは、ジェットコースターよりは
少し落ち着いた乗り物だった。

ふたりがその入口へ向かおうとした、そのとき。

ドンッ

「あっ」

赤也の背中に誰かがぶつかり、赤也の体がよろけた。
それを受け止めて支える跡部。

「大丈夫か」
「へ、へーきッス!」

抱き止められるような形になってしまい、
跡部の顔が思ったよりも近くにあって
赤也は真っ赤になって慌てて体を離した。

「あの、すんませ…って、え?」

ぶつかってしまった人物に謝ろうと振り返ると、
そこには遊園地の可愛らしいマスコットキャラの
着ぐるみが風船を持って立っていた。

着ぐるみは無言で赤也に近づき、風船を差し出す。

「…くれるんッスか?」
「……(こくり)」
「へへ、さんきゅー!」

可愛らしい姿の着ぐるみに風船をプレゼントされ、
赤也は嬉しそうに受け取った。
にこにこと赤也が笑顔を向けた、その瞬間。

――ぎゅう。

「うわッ!」
「切原!」

突然、着ぐるみが赤也に抱き付いた。

「おいテメェ、離しやがれ」
「……(ぶんぶん)」
「離せっつってんだろーが。コイツに触んな」
「あっ」

イラついた跡部が、着ぐるみの頭の部分を
おもいっきりひっぺがした。
すると、中から出てきたのは…。


「ゆっ…幸村部長!?」
「やぁ赤也。こんなところで、偶然だね」
「どこが偶然だ、アーン?」

着ぐるみの中からにっこりと笑って登場したのは、
天下の立海附属テニス部部長、幸村精市だった。

「どうして部長が、着ぐるみなんか来てるんすか?」
「ふふ。どう?似合ってるでしょ」
「はいッス!すげー似合ってますよ!」

両頬に人差し指を立てて、似合ってるアピールをする幸村。

「幸村…テメェ、せめて自分のキャラ守って行動しやがれ」
「うるさいよ跡部。っていうか、居たの?」

赤也に対する態度とは真逆に、
冷たい目で跡部をひと睨みする幸村。

「大体、赤也の貴重な休みを跡部が一緒に過ごすっていうのが
ほんと気に入らないんだよね」
「テメェには関係ねぇだろうが」
「あ、言っとくけどデートだなんて思わないでよね?
誰もそんなの、認めてないんだよ」
「フン…どうだかな」

闘争心むき出しの幸村に、
跡部は怯むことなく不敵に笑う。
それに対して面白くなさそうに舌打ちする幸村。

「幸村部長…?」
「あ、ごめんごめん。そうだ赤也、あそこに行こうとしてるの?」
「はいッス!面白そうだから」
「あそこは今すごい混んでるよ。2時間待ちだってさ」
「えー!マジっすか」
「うん。それよりも、あそこの建物に行ってみたら?」
「?あそこは、何なんすか?」
「それは行ってからのお楽しみ。すごく面白いらしいよ」
「んー、じゃあそこにするッス!行きましょ跡部さんっ」
「……ああ」

跡部は、あっさりと身を引く幸村を不気味に思いながらも
赤也に腕を引かれて歩き出した。

「ふふ。行ってらっしゃーい」

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