君と、やさしい時間





「たーきー!」
「ん?なに、がくと」
「おれ、たきのことだいすき!」
「おれもだいすきだよ」
「へへ!おれね、おっきくなったら
たきとけっこんするー!」
「…ほんと?やくそく、してくれる?」
「うん!やくそく!たきのこと、だいすきだもん!」






「…!」

懐かしい、夢を見た。
遠い昔。幼稚園の頃の記憶。

幼なじみの滝とジローと、いつも3人で一緒に居た。
ジローとはよくいたずらして怒られた。
それで怒られたときに、泣いてる俺たちを
いつも優しく笑って慰めてくれたのが滝。

優しくてあったかい滝のことが大好きで。
結婚だなんて、そのときは意味もよく分からずに言ってた。
ただ、だいすきだったから。



「岳人」
「!え、なにっ」

朝見た夢を思い出してぼーっとしてると、
滝が心配そうに話しかけてきた。

――そうだ、屋上で弁当食べてる途中だった。

「どうかした?岳人」
「ううん、なんでもねー!」

笑って返事をしたら、滝も安心したように
優しく笑い返してきた。
そう、この滝の顔が、俺は好きだ。


「あ…」
「?なに」

滝が何かに気づいたように俺の顔を見つめ、
クスッと笑った。

「岳人また、ご飯つぶついてる」
「あ、ごめっ」

滝の指が、そっと頬に触れた。


――ドキン

あんな夢を見て、昔の記憶を思い出したからなのか
目の前の滝にドキドキした。
…そういえば、幼稚園のときも
よく滝が、口の周り拭いてくれたっけ。
変わんねーなぁ…世話好きなとこ。
優しいとこも、あったかいとこも。

――って、なんだよ俺。

ドキドキする心臓を抑えられなかった。


「そ、そろそろジロー起こしに行かねぇとな!」
「そうだね」

俺は動揺を悟られないように、さっさと弁当を片付け始める。
滝も手伝おうとしてくれたのか、俺の弁当箱に手を伸ばしたとき
俺の手が、一瞬だけ滝の手に触れた。

「!!ごめんっ」

なぜか謝ってしまった。
恥ずかしくて滝の顔が見れない。
不自然すぎる。
あんな夢見たくらいで、動揺しすぎだろ…。

確かに、幼稚園の頃は
滝のことが大好きだった。
…幼稚園の頃、は?


――じゃあ、今は?

その答えを出そうとする頭をぶんぶん横に振って
無理矢理に否定した。



「じ、ジローんとこ行っ、…うわ!」
「岳人!」

勢いよく立ち上がったはいいけど、
動揺しすぎて足がもつれてバランスを崩した。
その体を、滝が支えてくれる。

「…!」

心臓が大きく跳ねた。
抱きとめられてるみたいな体勢になってることに気づいて
俺は慌てて体を離そうとした。けど。


ぎゅっ。

「!た、たき…っ?」

離そうとした体は、滝の腕によって阻まれた。
滝は俺の背中に手を回して、体をぎゅっとくっつけた。


――え…俺、抱き締められてる…?


突然の出来事に、頭が真っ白になる。
心臓がバクバク速い。
顔が、熱くなっていく。


「ねぇ、岳人…」

優しい声で名前を呼ばれ、びくっと体が跳ねた。

「岳人…覚えてる?」
「えっ?」
「幼稚園の頃の、約束」
「………!」

幼稚園の頃の、約束。

それって、まさか?
いやそんなはずない、あんなに昔のことを
滝が覚えてるはずないじゃんか。


――けど…もし、滝が覚えてたら。


「滝、は」
「…………」
「た…きは、覚えてんの…?」
「…うん」

その返事にまた、心臓が音を立てた。



――おれね、おっきくなったら、たきとけっこんするー!

――ほんと?やくそく、してくれる?

――うん!やくそく!たきのこと、だいすきだもん!



「覚えてるよ。ずっと覚えてた」
「……」
「ねぇ、岳人は…?」

耳元で小さく囁きながら
ぎゅっと、俺を抱き締める腕に力を入れる滝。


「…お…ぼえて、る」


滝の体があったかくて、滝の声が優しくて
思わずポツリと小さく呟いた。
無言になってしまった滝に不安になり、
顔を上げることができない。



「…よかった」
「!…た、き?」

またぎゅっと腕に力を入れて、
滝は俺の肩に顔を埋めた。

「岳人が忘れてたら、どうしようと…思ってた」
「……」
「ねぇ、岳人…」

そう言うと、滝は顔を上げて
優しい笑顔でまっすぐ俺を見つめた。


「大好きだよ」



――…ああ、そっか。やっと分かった。
こんなにも簡単なことだったのに。
気づかないフリをしてた。
忘れたフリをしてた。


「おれ、も…」
「ん…」
「………大好き」

そう言って、滝の体を抱き締め返した。
滝は、優しく頭を撫でてくれた。



「…ふふ。じゃあ岳人は俺のお嫁さんだね」
「……ば、か…なんで俺が嫁なんだよ」
「ん、可愛いから」
「うるせ…滝の方が、家事もできるし優しいから、嫁っぽい」
「そうかな?けど、岳人がそれがいいなら、いいよ」

クスッと笑う滝の指が、俺の髪に触れて。
それが心地よくて、身を預けたまま目を閉じた。


「岳人、」
「ん…なに」
「結婚するときには、しなきゃいけないことがあるんだよ」
「へ?」

そう言うと、滝は少しだけ体を離して
俺の頬を両手で優しく包んだ。

「誓いのキス」
「……!」

顔に熱が集中していくのが分かる。
心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていて。

「岳人…目、閉じて」
「……っ」

すぐ近くまで滝の顔が近づいてきて、
とっさにぎゅっと目を瞑った。


「好きだよ」

――ちゅ。


唇にあたたかくて柔らかいものが触れる。
緊張できっと少し震えてたけど、
滝が抱き締めてくれた。

しばらく経って、ゆっくりと唇が離れる。
初めてのキス。
あったかくて、恥ずかしくて、くすぐったくて
けど、すごく幸せな気持ち。

きっと真っ赤になっている顔を隠すために
俺は滝の胸に顔を埋めた。


「岳人…一緒に居ようね」

優しい言葉に、ゆっくりと頷いた。



――なあ、小さい頃の俺。

お前の夢さ、ちゃんと叶うよ。

だから、いま隣に居るその大好きな人を
いつまでも、いつまでも
大事にしてくれよな。





おわり


*******


まさかの滝岳。
マイナーすぎ、すいません。
けど好きなんです大好きなんです滝岳が!(え)

滝岳を扱ってるサイトって
ほっとんどないですよね。
広めてみせる!(笑)

岳人受けの中でも、滝岳は
本当に好きなCPのひとつです。
ほのぼのー、で、かわいいから。

てか滝さんってこんなしゃべり方でしたっけ?(笑)
完全にわたしの妄想が生み出した滝さんに
なってしまってるかもですが。
まあいっか…。

ツンデレがっくん大好きですが、
わたし的には、滝岳のときは例外で
ツンなし甘えたがっくんがいいです。
可愛い!ほのぼのカップルです*

滝さんって、小さい頃から
がっくんとかジロちゃんの面倒見てそう。

読んでくださってありがとうございます♪
滝岳スキーさん、ご意見ご要望お待ちしております!

2012.04.03

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