君に、伝えたいこと




リクエスト第七段!
まほさんからのリクです。
「白赤で、告白ネタ。一生懸命に告白して
想いが通じ合うような、心あたたまる話」
とのことだったので、頑張りました*
それでは、どうぞ!


*******





「切原クン」

白石さんが、俺の名前を呼ぶ。
優しい顔で笑いながら、頭を撫でてくれる。
白石さんのあったかい手が心地良くて、
そばに居るとドキドキして。
それがすっげぇ幸せなんだって感じたとき
俺は、自分の気持ちに気づいた。

――俺、白石さんのこと…。



最初はただ、優しい人だなって思った。
俺の悪魔化のことを心配してくれて、
いろいろと気にかけてくれて。

憧れてた。
優しくて、テニスが上手くて、かっこいい白石さんに。
俺もあんな風になれたらって思った。
だけど、だんだん白石さんと一緒に居るうちに
この気持ちが、憧れや尊敬だけじゃないことに気づいてしまった。

気づいたところで、何も出来ないけど。



――あ…白石さんだ。

先輩たちと一緒に食堂に入ると、真っ先に白石さんを見つけた。
最近ずっとだ。どうしても、白石さんを探してしまう。
白石さんは、四天宝寺の人たちと一緒に楽しそうに話してた。

「…それでさぁ、赤也」
「……」
「おーい赤也」
「………」
「赤也ー!!」
「へっ!?な、何すか!?」

耳元で叫ばれて、俺は丸井先輩と仁王先輩と
話してたことを思い出した。

「ったく、ぼーっとしやがってよぃ」
「へへッすんません」

ごまかすように笑って謝ると、
仁王先輩にグシャグシャと頭を撫でられた。

「何するんッスか先輩!」
「んー?赤也は可愛ええと思ってのう」
「何言ってんすか。どこが」
「恋しとるとこが」
「…!!」

さらっと言ってのけた仁王先輩の言葉に、
心臓が止まるかと思った。

「なっなななな、なんでっ…」
「バーカ。お前見てたら分かるっつの」

今度は丸井先輩に、頭をぐりぐりされた。

「白石のこと、好きなんだろぃ」
「は!?違ッ…!」
「バレバレじゃ、赤也」

顔に熱が集中していくのが分かる。
なんでバレてんだよ…隠してたつもりだったのに。

「ち…違うッスよ」
「赤也」
「なんで俺が!俺、男だし!
意味分かんねぇっ…ありえねぇッスよ!」
「あ、おい赤也っ!」

自分に言い聞かせるように怒鳴って、
まだ食べかけだった飯をほったらかしで食堂を飛び出した。

「赤也…」
「あーあ、行ってしもたのう」
「ったく…あのバカ。見てたら分かるっつーのに」
「認めたくないんじゃろな」




――思わず、食堂を出てきてしまった。
先輩たちは悪くないのに、でっけぇ声で怒鳴っちまった。
でも…だって、あそこで認めてしまったら
もう戻れなくなるような気がして。

「はあ…飯もまだ全部食ってねーのに」

だけど食堂に戻る気にはなれず、
ロビーにあるソファーに腰かけた。
すると、食堂の方から複数の声が近づいてくるのが分かった。

「せやろ、白石」
「アホ…そんなんとちゃうわ」
「またまた〜お前見とったら分かるっちゅーねん」

…!
白石さんと、四天宝寺の人たちの声だ!
俺はとっさに、ソファーの陰に隠れる。

って、何隠れてんだよ俺!
普通に挨拶すればよかったのに…。


「っつーか白石お前こないだ、
四天宝寺の1年生の中で一番可愛ええって言われとる
女の子に告白されとったやん」
「マジで?ほんま腹立つくらいモテよるなお前だけは」
「ほんでほんで、なんて返事したぁん?」
「……別にどうでもええ話やろ」
「コイツ普通に断りよってん」
「やっぱりなぁ。白石が告白オッケーしてんのなんか
ウチ見たことないわぁ〜」


――…一番可愛い女の子、に…?

そりゃ、そうか。
白石さんは優しくて、かっこよくて、なんでも出来て。
モテないはずがない。
心臓がズキズキ痛くなるのが分かった。

しばらくして、白石さんと四天宝寺の人たちは
ロビーを通りすぎて行ってしまった。


「……」

白石さんがモテることなんか、分かってたっつーの。
何、今さらショック受けてんだよ俺…。
男の俺なんか、相手にされるはずねぇのに。
期待してた?
優しく頭を撫でて笑ってくれる白石さんに。
ほんの少し、ほんの少しだけ
俺にもチャンスがあるんじゃねぇかって?

「バカ…ありえねぇっつーの」

自分のバカさに、うんざりした。

心臓、痛い。


「こんなとこで何しとるんじゃ、赤也」
「!!…っ仁王先輩」

急に声をかけられて顔を上げると、
いつの間にか仁王先輩が居た。

「俺が居るのにも気づかんとは、重症じゃのう」
「…何ッスか」
「まあまあ。こんなとこで膝抱えとらんと、
ちゃんとソファーに座りんしゃい」

仁王先輩に立たされて、ソファーに座りなおした。

「なんや、落ち込んどるみたいじゃの、赤也」
「……別に」
「白石のことじゃろ?」
「!!」
「プリッ」


俺が何も言えないで固まっていると、仁王先輩が口を開いた。

「赤也。人間には、どんだけ必死に否定しても
消せん感情っちゅーもんがあるんじゃ」
「……」
「白石と居るとき、どんな気持ちになるか思い出してみぃ」

――白石さんと、居るとき?

すげぇ、楽しくて。心臓が苦しいくらい、ドキドキして。
名前を呼んでもらえるだけで、嬉しい。
頭を優しく撫でられると、嬉しいのに苦しい。
…こんな気持ちになるのは、生まれて初めてだった。

「白石と一緒に居ると、ドキドキして
楽しくて嬉しいけど、心臓が痛くなって苦しい、じゃろ?」
「…っ!な、なんで…」
「それが恋っちゅーもんじゃ」

仁王先輩は、俺の頭をぽんぽんってして続けた。

「そんなに好きになれる相手、そう簡単に
出会えるもんじゃないけぇ」
「……」
「やからその気持ち、大事にせんといけんぜよ」
「……」
「どうせ否定しても消えん感情なら、当たってくだけたらええ」
「先輩…俺」
「どうすればええか分からん、か?」

先輩の言葉に、今度は素直に頷いた。

「今はちゃんと、自分の気持ちと向き合いんしゃい。
恥ずかしいことじゃないんやけぇ」

自分の気持ちと、向き合う。

この言葉が、胸にすとんと落ちてきた。

「先輩っ」

立ち上がると、仁王先輩が見上げてくる。

「…あ、ありがと…」

恥ずかしくて目が合わせられなかったけど、
そう言って俺は先輩の言葉も待たずに
自分の部屋に走って戻った。

「………ピヨッ」




――当たってくだけろ、か。
それって、白石さんに好きだって告白するってこと?
想像したら、ドキドキして顔が熱くなった。

「……できるわけねぇー」

告白なんかしたら、白石さんを絶対に困らせちまう。
男なのに、気持ち悪いって思われるかも。
優しい白石さんだから、そんなこと言わないだろうけど。

せめて、仁王先輩が言うように
自分の気持ちを認めるくらいは、してもいいんだろうか。
――自分の気持ちと、向き合う。

「…白石さん」

白石さんのこと考えてたら、いつの間にか眠りについてた。




「うわあッ、寝坊したー!!」

朝起きたら7時すぎだった。
合宿の練習は早いから、いつもは
6時45分には起きて、7時半までには
朝食をとって準備しなきゃなんねぇのに。
俺は急いで顔を洗って歯を研き、着替えて部屋を飛び出した。


廊下を全力で走って食堂にたどり着き、
扉を開けようとしたとき。
俺が扉の取っ手をとる前に、中から扉が開かれた。

「あ…切原クンやん」
「!し、白石さんっ…」

中から出てきたのは、白石さんだった。
心臓が大きく跳ねる。

「お…おはようございます!!」
「おはようさん」

にっこり笑って、返してくれる白石さんに
また心臓がドキドキとうるさく鳴った。

「切原クン、寝坊したん?」
「へ?…や…えっと」
「寝癖、ついとる」

そう言って白石さんは、俺の髪に触れた。
…心臓うるせぇ、治まれっつーの!
それに、白石さんに寝坊したかっこ悪いとこを見られてしまった。

「はよご飯食べな、練習始まってまうで」
「…は、はいっ」
「ほなまた後でな」

白石さんの手が離れて、ちょっとがっかりしてる自分が居た。

「あ、せや切原クン」
「え?」

俺が食堂に入ろうとすると、白石さんに呼び止められた。

「今日の練習終わって晩ごはん食べた後、
謙也の部屋で集まってトランプするらしいんやけど…
切原クンも、来ぇへん?」
「!…え…俺ッスか?」
「うん。なんか用事とかある?」
「な、ないッス!!」

ぶんぶん首を横に振って必死に否定すると、
白石さんはクスッと笑ってまた頭を撫でてくれた。

「ほな、今日の夜8時半ごろ謙也の部屋な」
「はいッス!」

そう約束して、白石さんは練習コートの方へ向かった。



――やべぇ、嬉しい。

白石さんは何気なく誘ってくれたんだろうけど、すげー嬉しくて
俺はウキウキしながら朝食をとった。
たったこんだけのことで、どうしようもなく嬉しい。
白石さんに触れられた髪が、まだ熱をもってる気がした。




「…今日の練習はここまで!以上、解散!」

夜のことが楽しみで、今日はいつも以上に
気合いを入れて練習したからすげぇ疲れちまった。
けど、白石さんと一緒に遊べることを思い出すと
疲れが吹っ飛んだ気がする。
練習中に、何回もこっそり白石さんのこと見たのは内緒だ。


「……へへッ」
「なんだよ赤也、機嫌いいじゃん」

俺が上機嫌でハンバーグを頬張ってたら、
丸井先輩に話しかけられた。

「なんかいいこと、あっただろぃ」
「へへ。実はこの後、白石さんたちと一緒に
トランプするんッスよ!」
「……ふーん?」

言ってから、ハッとした。
丸井先輩がニヤニヤしながら見てくる。

「よかったじゃねぇか」
「い、いや別にッ」

俺が慌てて言い訳しようと焦ってると、
丸井先輩はくすくす笑った。
俺は上手い言い訳が思い付かなくて、恥ずかしくてうつ向いた。

「………よかった、な。赤也」
「え?」
「…なんでもねぇー。頑張れよ!」

ニカッと笑って言ってくれた先輩に、俺も笑い返した。

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