ラブルスバトル




記念すべき岳人受けリクエスト第一段!
黎人さんからのリクエストで、
忍→岳←日 です。

だ、大好物の関係です。(え)
それでは、どうぞ!


*******




――氷帝学園テニス部。

200名以上の部員数と、全国大会進出という
優秀な成績を誇るテニスの名門である。
その毎日の練習はかなり厳しく、部活を終え家に帰れば
疲れですぐに眠ってしまうほど。
自由に遊べる時間など、ほとんどなかった。

しかし、今週の日曜日、久しぶりに
部活がオフになることが決まった。
部員たちはみんな、思い思いに
オフをどのように過ごそうか心を踊らせていた。



そして、ここは氷帝テニス部の
正レギュラーたちの部室。

ここでは今、小さな戦いが始まろうとしていた。


「がっくん、日曜日がっくんが見たがってた映画
一緒に見に行かへん?」
「向日さん…次の日曜日、こないだ言ってた
新しいラケット買いに行きませんか?」

ふたりが岳人に声をかけたのは、ほぼ同時だった。
岳人は、一度にふたりの人間に誘われて
ぱちぱちと目を瞬かせてふたりを見た。


「…なんやねん日吉、ラケットて。
がっくんは俺とデートやから無理やで。残念やったな」
「忍足さんこそ、すみませんね。
向日さんは俺とスポーツショップに行く予定なんで。
映画ならどうぞひとりで見に行ってください」

忍足侑士と、日吉若。
今、ふたりはひとりの人物とのデートをかけて
バチバチと火花を散らしていた。


「何が悲しぃてひとりで映画行かなあかんねん。
岳人とデートで行くから意味あるんやろ」
「デートって思ってんのはアンタだけですよ。
向日さんは新しいラケット欲しがってたんで」

…また始まった。
部室で着替えて帰る準備をするレギュラーたち全員が思った。


「ああ、ほながっくんの分のラケットも買っといて。
俺ら映画行ってくるから。よろしゅう」

――忍足侑士。
氷帝テニス部の天才と呼ばれる男。
普段の忍足は冷静で中学生とは思えないほどに
大人びて落ち着いている。
その容姿や知的な雰囲気から女子生徒の人気も高く、
おまけに頭が良くテニスも天才的に上手いため、
憧れや尊敬の的となることが多い。

しかし、それはあくまでも忍足の「よそ行き」の顔である。
何を考えているか分からないと周りから言われるほど
普段はポーカーフェイスな忍足だが、
ひとりの人物のこととなると普段の彼はどこへやら、である。


「何言ってんですか。ああ、忍足さんそういえば
今日の昼休みに2年の女子から告白受けてましたよね。
あの女子と一緒に行けばいいじゃないですか」

――日吉若。
同じく氷帝テニス部の正レギュラーで、
2年生にしてその実力は周囲も認めるほどのもの。
目標のためなら努力を惜しまない努力家。
未来の氷帝学園テニス部を担うのは、
彼であると周囲からの信頼も厚い。
また、無愛想で人との馴れ合いをあまり好まない傾向にあり
近づきがたいと思われがちだが、
彼もまた、あるひとりの人物のこととなると話は別だった。


「な…なんで知っとんねんお前。
がっくん、ちゃうで。俺好きな子おるゆうてちゃんと断ったし」
「別に忍足さんが告白されようがされまいが
向日さんはどうでもいいと思いますけどね」
「ってゆーか日吉、なんやねん先輩に向かってその態度は。
ここは譲るべきやろ俺に」
「先輩後輩なんか関係ないですねぇ。下克上だ」


――まったくタイプの違うふたりだが、
このふたりには共通していることがある。

「なあがっくん、映画行きたいやんな?
ラケットなんかいつでもええやん」
「…向日さん、やめといた方がいいですよ。
忍足さんのことですからまたくだらない恋愛映画でしょう」

それは、ある人物のダブルスのパートナーであり
その人に思いを寄せているということ。


「がっくん!」
「向日さん!」
「「どっちと出かけたいん(ですか)!?」」

――向日岳人。
同じく氷帝テニス部の正レギュラーであり
ダブルス専門のプレイヤー。
色が白くて背が低く(本人は気にしている)、
女の子に見間違えるかと思うくらい可愛い顔立ちの少年。
しかし、華奢で可愛い外見とは正反対に
性格はとてもさっぱりしていて男らしかった。
そう、忍足と日吉は、今まさにどちらが
この向日岳人と休日を過ごすのかで揉めていた。

すると、岳人の口から衝撃的な言葉が飛び出した。




「んー?ああ俺、日曜日は鳳と遊ぶ約束してるから」

「「……………は?」」


いつものふたりのやりとりに慣れきった岳人は
携帯をいじりながらあっけらかんと答える。


「……がっくん、今なんて?」
「だから、鳳と遊ぶから映画もラケットも無理だってば。
前から約束してたんだっつーの。なあ鳳」

「「…………鳳…」」
「ひぃッ!!!」

ふたりに同時に睨まれて、恐怖で固まる鳳。
宍戸は同情の目で見つめた。


「一緒に遊園地行く約束したもんな〜!」
「ほぉ…」
「遊園地…ですか」
「おう!新しいアトラクションできたんだよ!
すげー乗りたかったんだよなあれ」

ふたりの気持ちなんてまったく気づかずに、
岳人はニコニコと嬉しそうに話す。
岳人が顔を動かす度に、さらさらとおかっぱが揺れた。

――…可愛い………じゃなくて!


「鳳、遊園地すきやったんかぁ〜そら意外やわ」
「そうですね」

ふたりに睨まれ無言のプレッシャーをかけられる鳳は
青い顔でびくびくと怯えている。
何気なく、岳人と遊園地の話になって
行ってみようか、ということになっただけなのに。

恐怖に耐えきれなくなった鳳は、口を開いた。


「…む…向日先輩っ」
「ん?なんだよ鳳」
「じ、実は俺、その日どうしても外せない
大事な用ができてしまって…」
「えー!!なんだよそれ!じゃあ遊園地は?」
「す…すみません、また今度に…」
「えーやだ!すっげぇ楽しみだったのにー」
「ごめんなさい…」
「…んー。まあ、大事な用ならしゃーねぇや。
気にすんなよ、また今度な!」

にかっと笑って鳳の背中をぽんぽん叩く岳人。
鳳も、ほっとして笑顔を見せた。


「ほながっくん、俺と遊園地行こや!」
「向日さん、鳳が行かないなら
俺が付き合ってもいいですけど…」

忍足と日吉はまた同時に言って、
バチバチと火花を飛ばした。


「なんや日吉、自分ラケット買いに行くんちゃうんか?
遠慮せんと行って来たらええねんで」
「忍足さんこそ。早く見たい映画行かないと
放映期間、終わってしまいますよ」
「いや、ええねん。なんか遊園地行きたくなってきたし。
日吉は遊園地なんか興味ないやろ絶対」
「…別に、たまには遊園地もいいなと思ってたところですよ。
アンタこそ、遊園地なんて興味ないでしょ。
ジェットコースター乗ったらその眼鏡ふっ飛びますよ」
「やかましいわヒヨッコが。お前は山に行って
ひとりでキノコ狩りでもしとけや」
「バカじゃないですか?するわけないでしょう」
「なんや、やんのか日吉」
「上等ですよ……下克上だ」
「だーーーーッ!!お前らうるせぇーっ!!!」


携帯をいじりながらふたりのやりとりを無視していた岳人だが、
あまりのうるささに、ふたりを怒鳴りつけた。

「うるせーっての!なに喧嘩してんだよテメェらは」

ペシッとふたりの頭をはたき、黙らせる。
今までぎゃあぎゃあ騒いでいたふたりだが、
さっきまでのうるささが嘘のように
岳人に怒られてしょんぼりしていた。


「ほながっくん…どっちと行くん」
「は?」
「…遊園地ですよ。向日さんはどっちと行きたいんですか」

岳人は、一瞬ぱちぱちと目を瞬かせて
はあー…とため息を吐いた。

…んなことで、揉めてんじゃねぇっつーの。

しかし、ふたりは真剣だった。
無言で岳人を見つめ、答えを待っている。



「お前ら、ばっかじゃねぇの。
3人で行けばいい話だろーが…」
「「…へ?」」
「だーかーらー。遊園地、行きてぇんだろ?
俺も行きたいし…一緒に行けばいいじゃん」

どうやら岳人は、ふたりが本当に遊園地に行きたくて
揉めてると思ったようだ。
遊園地に、行きたいんじゃなくて
岳人と、行きたいのだけれど。

だけど結局、一緒に行ってくれるつもりらしい岳人。
そんな可愛い岳人に頬が緩んでしまう。


「……せやけど、日吉と一緒は嫌やな」
「こっちの台詞ですよ。なんで忍足さんと遊園地…」
「なんだテメェら、文句あんのか?」

「「………ありません」」



こうして、今度の日曜日は
3人で遊園地に行くことになった。


その今までの様子を見守っていた、レギュラーたち。

「よ、よかった。落ち着いたみたいですよ宍戸さん!」
「忍足も日吉も…激ダサだな」
「そんなに遊園地に行きてぇなら
貸しきればいいじゃねぇか、アーン?なあ、樺地」
「………ウス」
「いや跡部、ちょっとずれてるから。
それにしても岳人、忍足と日吉を黙らせるなんて、やるねー」
「…ぐー……Z…Z」


忍足侑士と日吉若。
このふたりのくせ者を一度に黙らせられるのは
世界中探しても、岳人だけなんだろう。
レギュラーたちは、遊園地に行くことが決まり
嬉しそうにはしゃぐ岳人と、
そんな岳人に優しい視線を向ける忍足と日吉を見て思った。





おわり


*******


黎人さんからのリクエストで
忍→岳←日 でした!!

黎人さん、いかがでしたでしょうか*

がっくんはテニプリの中でも
1、2を争う総受けキャラだと思います(笑)

がっきゅん可愛いよがっきゅんんんん。

やっぱ岳人は書いててほんとに楽しいです。
忍足や日吉のようなくせ者たちが、
岳人のこととなると我を忘れて争ったり
一喜一憂するのが可愛い。
岳人受け最高!!

黎人さん、リクエストほんとに
ありがとうございました!
記念すべき、岳人受け初のリクでした。
これからもよろしくお願いします。


リクまだまだ受け付けております♪

読んでくださった方々、ありがとうございました。

2012.03.26

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