だいすきなひと




リクエスト第七段!
やちぇりさんからのリクです。
「白石さんがいつも四天宝寺のメンバーと
一緒に居るところを見て学校の壁を感じ、
しょんぼりする赤也とそれを優しく諭す白石さん。
その後いちゃいちゃの甘」とのことだったので
書いてみました。なんという萌え〜なシチュ!(笑)

それでは、どうぞ!


*******




――あ、白石さん!

朝、食堂に入るとすぐに白石さんを見つけた。
白石蔵ノ介さん。
この合宿で出会った俺の憧れであり、大好きな恋人。
想いが通じあったのはほんの数日前で、
白石さんが好きだって言ってくれたときは
本当に心臓が飛び出るかと思うくらいドキドキして。
俺も好きです、ってめちゃくちゃ緊張しながら
震える声で言うと、白石さんはぎゅっと抱き締めてくれた。

すっげぇ嬉しくて幸せで、ふわふわした気持ちになった。



朝食をトレイに乗せてテーブルへ向かう白石さんを見て、
一緒に食べようと駆け寄ろうとしたとき。

「白石ぃ〜!」
「金ちゃん。おはよう」

遠山が、勢いよく白石さんに飛び付いた。
それをよろめくことなく片手で受け止める白石さん。

「白石!ワイめっちゃ腹へった!!」
「ほな、はよご飯もらってきぃや」
「嫌や〜!3秒以内に食わへんかったらワイ死んでまう」
「…しゃあないなぁ。俺のあげるから先に食べとき。
俺もういっこもらってくるから」
「わーい!おおきに、白石!」

そう言って、遠山は白石さんのトレイを持って
テーブルへと走って行った。

……なんだよ。飛び付いたり甘えたりなんかしてさ。
白石さんは俺の恋人なのに…。


「赤也、おはようさん」
「!!し…白石さん」

心にモヤモヤしたものを感じ、否定するように
頭をぶんぶん振っていると、白石さんに声をかけられた。

「どないしたん?赤也」
「な、なんでもないッス!」

白石さんは、俺のこと「切原クン」から「赤也」って
呼んでくれるようになった。それがすげぇ嬉しくて。
付き合うことになってから、なんだか妙に意識してしまって
話すだけでもめちゃくちゃ緊張する。

――朝ご飯、一緒に食べたい…。

そのひとことがなかなか言えず、うつむいていると
白石さんは不思議そうに顔を覗き込んできた。

「赤也、一緒に…」
「おーい白石〜!!」

白石さんが何かを言いかけるが、遠山が白石さんを呼ぶ声で
かき消されてしまった。

「…じゃあ白石さん、また後で!」
「え?……うん、ほな後でな」

俺は動揺を気づかれないように
無理に笑って白石さんのそばを離れた。




「あ、白石帰ってきた」
「アカンやん金ちゃん、白石と切原の邪魔したら」
「??邪魔ってなんの?」
「白石と切原、一緒に飯食おうとしてたんとちゃうん」
「?ほな、アイツも来て一緒に食うたらええやん」
「いや。そうやのーて、ふたりで…」
「ええよ謙也。赤也も先輩らと食べてるし」

席に戻ると、金ちゃんが謙也に怒られとった。
そら、赤也と一緒に食べられるんやったら食べたかったけど
赤也も先輩らとの付き合いあるやろうし…。
それよりも、さっきの何かを言いたそうな赤也が気になった。

「なんや白石、余裕やなぁ。普通、付き合ってすぐの時期は
ラブラブしたいんとちゃうん」
「…別に、余裕なことあらへん」

全然、余裕があるわけやあらへん。
赤也のこと溺愛しとる立海メンバー見てたら
なんや正直イライラすることもある。
これが嫉妬っていう感情やって、赤也と出会って初めて知った。
今まで誰かと付き合うことはあっても、
相手が誰と居ようがあんまり関心がなかったし
ヤキモチ妬かれたり束縛されたりするんが煩わしいとさえ思ってた。

――自分でも、びっくりしとんねん。

こんなに誰かに固執してしまう自分に。
俺自身が驚いとった。
赤也が俺のことを好きやと言うてくれたとき
初めてあんなに幸せやと思った。
震える声で一生懸命に気持ちを伝えてくれた赤也が
ほんまに愛しく感じて。
それくらい、赤也に本気な自分がおる。

…後で、何言いたかったんか聞きに行こ。
無理して笑った赤也の顔を思い出し、そう決めた。




「赤也、白石と飯食わねーの?」
「べっ別に!白石さん…四天宝寺の人と食べてるし」
「ふーん。一緒に食おうって言ったらいいだろぃ」
「まあまあブンちゃん。飯のときまで赤也取られたら
それはそれでしゃくに触るけぇ」
「んー。まあな」

丸井先輩と仁王先輩は、俺と白石さんが
付き合ってることを知ってる。
このふたりは俺が片想いのときいっぱい相談に乗ってくれたし
ちゃんと報告しなきゃって思ったから。

…ほんとは、みんなに言いてぇ。

みんなに、白石さんは俺の恋人だって、でっけぇ声で言いたい。
けど、それじゃきっと白石さんが困ってしまう。
大好きな白石さんを、困らせたくなかった。
ふと四天宝寺のテーブルを見ると、
白石さんが楽しそうに四天宝寺の人たちと
話してる姿があって、思わず目を逸らした。




――結局、金ちゃんは俺ら全員分のデザートたいらげたな。
ほんま食い意地の張った子やで。
けど、そんな中でも俺の意識は、少し離れたところで
立海の3年と話す赤也の方にあった。
あ…今アイツ、赤也の頭撫でよった。
そんなことでまたイラっとした自分に気づき、
落ち着こうと必死に冷静になる。
そうこうしてる間に練習が始まる時間になり、
みんなでコートに向かうことになった。
食堂出るときに赤也探したけど、もうおらんかった。

今日は俺は高校生との練習試合があるから
そろそろ準備せなあかん。
――赤也と、話したかったんやけどな。
さっきの元気なさそうな笑顔がずっと気になっとる。
試合終わったら、赤也のとこに行こう。
俺はコートに入った。

「ワンセットマッチ!白石、トゥサーブ!」




――…うわ、白石さんすげぇ!
いつもながら全く無駄のない動きで相手を圧倒してる。
…かっこいいなあ。
俺は、テニスをしてる白石さんが好きだ。
綺麗で、きらきらしてて、かっこいい。

「そーだ、白石さんの試合が終わったらタオル渡しに行こ!」

そう思って、わくわくしながら試合を見守った。


「ゲーム白石!6-0!」

さすが白石さん!ストレート勝ちだ!
俺はガッツポーズをしそうなくらい、
自分のことみたいに嬉しくなった。
白石さんは相手選手と握手した後、汗を拭いながら
コートを出ようとする。
俺は洗濯してあるきれいなタオルを持って、
白石さんが出てくるのを待った。
すると、俺に気づいた白石さんと目が合った。
ドキッと心臓が大きく跳ねる。

「し、白石さ――…」
「白石〜!」

俺が口を開こうとすると、四天宝寺の人たちの声でかき消された。

「白石、見てや。俺と小春の新作ネタ」
「今回はめっちゃ自信作やでぇん☆」
「ぎゃはは、ユウジも小春もアホやー!めっちゃおもろい!」
「…先輩らほんまキモいッスわ」
「なんや財前、しばくぞ!」

四天宝寺のメンバーは、白石さんを囲んで大騒ぎし始めた。
白石さんも、楽しそうに笑ってる。

…みんな、白石さんが大好きなんだな。
なんか俺…入る隙、ねぇ。

――ズキン。

俺は、手に持っていたタオルをぎゅっと握りしめて、
思わずその光景から目を逸らし走り出した。




試合が終わってコートを出る。
やば、部屋にタオル忘れてきてしもた。
めっちゃ汗かいてんのに…。
部屋にいったん戻ろうと、コートを出ようとすると
コートの入り口で立っとる赤也と目が合った。

「あか…」
「白石〜!」

赤也を呼ぼうとしたら、いきなりユウジと小春が走ってきて
新作ネタとかゆうてコントしだした。
金ちゃんは爆笑しとるし、財前はいつも通り呆れとる。
俺はユウジたちに笑い返して、赤也の方へ行こうと振り返ると
赤也が走っていく背中が見えた。




「…はぁ、はぁ」

思わず逃げ出した。
白石さんの優しい笑顔が他の人に向けられてるのを見て。
白石さんはいつも、四天宝寺の人と一緒に居るとき
ほんとに楽しそうに笑ってる。
やっぱり、…敵わない。
そう思うと、悲しくなって泣きそうになった。

「俺って…マジだせぇ」

人気の少ない宿舎の陰に腰を下ろし、膝を抱えた。
…あ、タオル…渡せなかったな。
お疲れさまですって言って、渡したかった。
そしたらきっと白石さんは優しい顔で
「おおきに」って笑って頭を撫でてくれるんだ。
白石さんと話したい。会いたい。
ぎゅって、抱き締めてほしい。

「…白石、さん……」
「なに?」
「っ!!!」

後ろから聞こえた大好きな人の声に驚き、体がびくっと跳ねる。
その瞬間、ふわ、と後ろからあたたかい体温を感じて
抱き締められていることに気づいた。

「赤也」
「………」
「赤也、どないしたん?」
「な、なんでもないッス…」
「…赤也。言うて…?」

耳元で囁かれ、ばくばくと心臓がうるさく鳴る。
白石さん、試合で疲れてるはずなのに
走って追いかけてきてくれたのかな。
そう考えたら、なんか心があったかくなった。


「…俺、」
「うん」
「し、白石さんと一緒に、ご飯…食べたくて」
「…………」
「それに、白石さんが汗かいてたから
タオル渡そうと…思って」
「赤也…」
「けど、四天宝寺の人たちと一緒に居る白石さんのこと
邪魔したくなくて…」
「………」

白石さんが無言になってしまった。
どうしよう、やっぱり言わなきゃよかった。
こんなの…絶対ウザイに決まってる。
そう思って言ったことを後悔し、また泣きそうになった。
しばらくすると、白石さんの体が離れ、立ち上がったのが分かる。
…嫌だ、白石さん。行かないで。嫌いにならないで。


「…ほんまに…可愛ええなぁ」
「!」

立ち上がった白石さんは、膝を抱えてうつむいていた俺の前に来て
また腰を下ろし、抱き締めてくれた。
心臓がうるさく鳴ってる。
抱き寄せられて、優しく頭を撫でられる。

「赤也。俺、赤也のこと邪魔やなんて思ったこと
一回もあらへんねんで?」
「……」
「学校ちゃうとか、そんなん関係あらへん。
俺は赤也ともっと一緒に居りたいって思っとる」
「白石、さん…」
「俺もな、朝一緒に食べたい思って赤也に言おうとしてん」
「…えっ」
「さっきの試合終わったあとも、赤也がコートの入り口で
立ってるん見てめっちゃ嬉しかった。話したかったんやで」
「ほ…ほんと、に?」
「ほんまや。やから、泣かんといて…な」

白石さんに言われてようやく、
自分が安心して泣いてることに気づいた。
白石さんがジャージの袖で、涙をぬぐってくれる。
嬉しくて、恥ずかしくて。
優しい手が、すげぇ心地良くて。
思わず目の前の大好きな人に、抱き付いた。




抱き付いてきた赤也を、また強く抱き締めた。

――ほんま、なんちゅう可愛いこと言うねん…。

一緒にご飯を食べたい、タオルを渡したい。
自分のためにこんなにも一生懸命な赤也のことを、
ほんまに心から愛しいと思った。
柔らかい髪を撫でてやると、嬉しそうに顔を胸に押し付けてくる。
…敵わへんな。
その体温のあたたかさに、俺は自分がどんだけ
赤也に惚れてしもてるんかを改めて実感した。


「…赤也」

愛しい名前を呼ぶと、遠慮がちに顔を上げた赤也と目が合う。

「好きやで…赤也」

そう言うと、赤也の顔はみるみるうちに真っ赤になった。
それが可愛くて、頬を撫でる。
すると、赤也がゆっくり口を開いた。

「…おれ、も…白石さんのこと…すき」

耳まで真っ赤にして小さな声で好きだと伝えてくる恋人が
可愛くて、愛しくて、大切で。
…そのままゆっくりと、唇を重ねた。

「……ん」

唇を重ねたまま薄く目を開けると、
ぎゅっと目をつむっている赤也が見える。
睫毛は少し緊張で震え、手も膝の上で強く握っている。
その手に自分の手を重ねて、そっと指を絡めた。

しばらく抱き合って唇を重ねていたが、
これ以上やると我慢できなくなりそうで
名残惜しいけどゆっくりと離した。
赤也はまだキスに慣れてへんくて、
恥ずかしさでまたぎゅっと抱き付いてきて顔を隠した。


「赤也」
「…はい」
「昼ごはん、一緒に食べよな」
「……!はいッス!」

はじかれたように顔を上げて、本当に嬉しそうに笑う赤也に
またひとつ、優しいキスを落とした。





おわり


*******


やちぇりさんからのリクエストでした!
やちぇりさん、ありがとうございました♪

いかがだったでしょうか…;
ご希望に少しでも沿えていたら嬉しいです。

赤也は、金ちゃんにヤキモチ妬くと思います(笑)
勝手にライバル視してモヤモヤしてそう。
可愛いよ赤也。可愛いいいいい。(え)

白石さんも実は、赤也を溺愛する立海3年と
生意気な口を叩きながらも先輩たちになつく赤也を見て
モヤモヤしてしまいます。
周りは、あの白石が嫉妬…って驚きます。


何が言いたいかというと、白赤最高です。


やちぇりさん、本当に素敵なリクエスト
ありがとうございました!
よければまたお願いします*

読んでくださった方も、ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします♪♪

2012.03.25

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