俺たちのやり方




リクエスト第六段!
光月塁華さんからのリクで
神尾×赤也で甘。

わたしは、神赤は考えたことなかったので
なんだか新鮮でドキドキです。
それでは、どうぞ!


*******



――時刻は、夜の10時。
合宿所の朝は早いため、いつもなら
そろそろ眠りにつく時間だった。
しかし、今日は何故か目が冴えてしまっている。

「…眠くねーな」

なんとなく部屋を出た神尾は、散歩でもしようと部屋を出た。



「……あ」

合宿所の廊下を歩いていた神尾は、
ふと窓の外に目をやると足を止めた。

「…何やってるんだよアイツは」

窓の外、テニスコートの隅にあるベンチ。
そこにはひとりの人物が座っていて
ぼーっと夜の空を眺めていた。
そこに居たのが他の奴なら、放っていたと思う。
だけど、ベンチでひとり物思いに耽っているのは
自分の恋人だったわけで。



「おい」
「うわっ!びっくりした!」
「俺の台詞だっての…バーカ」

後ろから声をかけると、恋人である切原赤也は
本当に驚いたように振り返って神尾を見た。

「んな薄着で、風邪ひきてぇのかよ。
ってゆーか何してんだよお前…」
「うっせぇ。眠れねーんだよ」

神尾が赤也の隣に腰を下ろそうとすると、
赤也はぷくっとふくれながらも少し横にずれて
神尾が座れるスペースをつくった。

「なんでこんな時間にひとりで夜空なんか見てたんだよ。
すげーロマンチストみたいに見えたぜ」
「…うるせー」

からかうように言うと、いつもは
ぎゃーぎゃー言い返してくる恋人は
少し不機嫌そうに呟いただけで
また夜空を眺め始めてしまった。


――また、か…。

と、神尾は思った。
赤也は、普段は能天気で生意気で
裏表のない人物である。

しかし時々、本当に希に
赤也は今のようにひとりで
ぼーっと何かを考えているときがある。

何を考えているかは、恋人の神尾でさえ分からない。
聞けば、もしかしたら教えてくれるのかもしれないが
神尾はいつも何も聞かない。
赤也が言いたいことなら、必ず赤也の方から
言ってくることを知っているから。
それを赤也も気づいている。
だからこそ、ふたりは一緒に居られる。
無理に互いの心を覗こうとしたり、干渉したりせず
その代わりに、黙って側に居る。
それが、このふたりのやり方だった。


「………」
「………」
無言の時間が続く。
赤也は相変わらず夜空を見つめながらぼーっとし、
神尾は方耳だけにイヤホンをつけて
好きな音楽を聴いている。
しかし、決して気まずいわけではない。
心地いいのだ。
言葉も交わさず、ただ好きな人の側に居るこの時間が。



「………あの星さ」

ポツリと呟き、沈黙を破ったのは赤也だった。

「あれとあれ結んだら、魚に見える」
「……見えねーよ」
「見える」
「…あっそ」
「うん」
「………」
「………」

そこでまた会話が途切れた。
しかし、またその沈黙を赤也が破る。

「それ何聴いてんだよ」
「んー。こないだ言ったロックバンド」
「ふーん」
「聴くか?」
「おう」

神尾はイヤホンをひとつ赤也に渡した。
ふたりでひとつずつのイヤホンを耳に付ける。
ふたりは、イヤホンから流れる激しいロックバンドの音楽を
無言でしばらく聴いていた。
神尾が音楽にのって小さく体を揺らしリズムをとっていると、
とん、と肩に隣の赤也がもたれてきた。
赤也の顔はいつの間にかうつむき、
空ではなく地面をとらえている。

「…何、不安になってるんだよお前は」
「べつに」
「あっそ…バーカ」

神尾は、自分の肩に寄りかかる赤也の髪を撫でた。
赤也は黙って目を閉じ、心地良い神尾の手に身をゆだねていた。


「ひ、っくしゅ」

寒くなってきたこの時期に薄着で長い間、外に居たせいか
赤也はひとつくしゃみをした。

「ほら見ろ。上着くらい持ってこいっつーの」

神尾は呆れたように言い、自分の上着を脱ごうとする。
しかし、赤也はいらないというように首を横にふるふると振った。

「寒くねぇ」
「嘘つけ」
「嘘じゃねぇし」
「はあ…部屋、戻るか?」
「戻らない」

赤也は、神尾の肩にもたれかかったまま動かない。

…――風邪ひくだろうが、このバカ。

神尾の上着も着ようとせず、部屋に戻ろうともしない。
どうするべきか神尾が迷っていると、赤也が口を開いた。


「寒くねぇ」
「……」
「………けど、手が冷たい」

小さな声でポツリと呟いた赤也の声は、しっかりと届いて。
神尾は脱いだ自分の上着を赤也にかけてから、
赤也の手をぎゅっと握った。


赤也の、神尾への精一杯の甘え。
神尾の、赤也への精一杯の優しさ。


たとえ他の恋人たちのように言葉はなくとも、
ふたりはこの時間を幸せだと思った。


「…神尾、」
「なに」
「………なんでもねぇ」

そう言って、ようやく赤也は顔を上げ
神尾に嬉しそうな笑顔を見せた。
赤也につられて同じように神尾も笑顔を見せ
愛しい恋人に、ゆっくりと唇を重ねた――…。





おわり


*******


光月塁華さんからのリクエスト
神赤で甘でした。

あ、あれ……?
甘くなってるか、これ?(笑)

なんか書き始めた最初は
ぎゃーぎゃー騒ぐふたりを書こうと思ったんですが
なぜかこんなことになりました。え

いや、なんか
神赤って最初は仲悪いけど
お互いを認めあって付き合ったら
こんな感じになるんじゃないかなーという
わたしの勝手な妄想でした(笑)

赤也って
先輩×赤也のときは甘えたで可愛い〜〜感じが好きなんですが
同期×赤也のときはこんな感じじゃないかな、と。

赤也は意地っぱりでプライド高いので
悩み事とかあってもひとりで解決しようとすると思います。
神尾くんは、それを敏感に感じとるけど
根掘り葉掘り干渉することはせず、
赤也の側に居てくれたら萌えると思いました。

財赤以外は、同期×赤也は
考えたことなかったんですがアリですね。
楽しく書かせていただきました。

光月塁華さん、少しでもご希望に沿えた内容に
なっていたでしょうか…;
リクエストほんとにありがとうございました!!
これからもよろしくお願いします♪

2012.03.25

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