惚れたモン負け




リクエスト第五段!
係長さんからのリクエストです!
「謙赤で、白石さん関係で徐々に仲良くなるふたり」
サイト初の謙赤でございます*
それでは、どうぞ!


*******



合宿が始まってから、白石が気に入っとる奴がおる。
――立海2年、切原赤也。
なんや弟が出来たみたいで可愛い可愛い言うとった。
そいつも白石にえらいなついとるみたいで、
白石のうしろぴょんぴょん着いて行ったり
白石にテニス教わったりしとった。


「白石もほんまに、世話好きやなぁ…」

面倒見のええ白石に関心する。
…せやけど、切原が残したニンジン食べたったり
タオルで汗拭いたったり、ちょっと甘やかしすぎとちゃうか。



「孫を可愛がるおじいちゃんかお前は…」
「そんなこと言うたかて、めっちゃ可愛ええし
なんか切原クンてほっとかれへんねん」

切原の練習試合を孫でも見るみたいに
ニコニコしながら眺める白石。

「可愛ええかあ?めっちゃ気ぃ強そうに見えんねんけど」
「まあお前も切原クンと仲良なったら分かるて。
あ、次俺そこのコートで試合やわ。ほなな、謙也」
「へいへい」

呆れながら返事して、俺も練習に戻ろうと振り替えったら
誰かと勢いよくぶつかった。

「うわッ」
「…っ」

俺はちょっとよろめいただけで済んだけど、
相手はバランス崩して尻餅ついてしもたみたいや。

「堪忍、大丈夫か?……あ」
「いてて…すんません、大丈夫ッス」

――切原赤也。
噂をすれば、っちゅーやつやな。
切原を起き上がらせようと手を差しのべる。

「忍足謙也…さん」

俺の手を握って立ち上がった切原は、
目をぱちぱちさせて見つめてきた。

「せやけど。なんで知っとるん」
「白石さんが言ってたんッス!
謙也は浪速のスピードスターやねん、て!」
「ああ…自分のことも白石が話しとったで。
立海の切原赤也やろ?」
「はいッス!白石さん、俺の話してたんすか!?」
「よぉしとるで。弟みたいで可愛ええて」
「ほっほんとッスか?……へへッ」

そう言うと、切原は嬉しそうに笑った。
なんや…人なつっこい奴っちゃな。

「あ、白石さんの試合始まった!
白石さーんファイトッす!」

手すりから身を乗り出して、白石にぶんぶん手振っとる。
白石も笑顔で切原に手を振り返して、試合が始まった。

「ほんまに白石のこと好きやねんなぁ」
「白石さんは、俺の憧れなんッスよ」

キラキラした目で白石の試合を見ながら興奮して話す切原。
――睫毛、長…。
横顔を見ながら、なんとなくそんなこと考えた。




「あ、謙也さーん!」

初めて切原としゃべった日から、切原は
しょっちゅう俺に話しかけてくるようになった。
確かに、目が合ったら笑顔で走り寄ってくる姿は
可愛ええと思う。男にしたら、やけど。

「どこ行くんすか?」
「喉渇いたから、水飲みにな」
「じゃあ俺も行くー!」
「おう」

…まあ、こんだけなつかれたら悪い気はせんわな。



「で、白石さんが誉めてくれてぇー」
「よかったやんか」
「へへッ」

嬉しそうにニコニコ話す切原を見とったら、
自然と俺もつられて笑ってもた。

「あ!白石さん!!」

ちょっと離れた所に白石の姿を見つけたとたんに、
走って行ってまいよった。

「……どんだけ自由人やねん」

その光景を微笑ましいと思い見守りつつも、
なぜかモヤモヤしたものを感じたことには
俺は気づいてへんかった。



「切原クン、可愛ええやろ?」
「は?」

食堂で白石と飯食ってたら、突然
白石がニヤニヤしながら聞いてきよった。

「せやから、切原クンやん。
謙也も可愛いさ分かってきたんちゃうかな思て」
「別に…人なつっこくてええ奴やとは思うけどな」
「ふーん」
「なんやねん。ニヤニヤすんな気持ち悪い」
「謙也は素直やないなぁ。そんなんやからヘタレやねんで」
「誰がヘタレやねん。っちゅーかなんの話や」
「…おまけに鈍感ときたもんや」
「やから、何がやねん」
「別にー?ただ、最近切原クンと居るときの謙也
楽しそうやな〜思っただけやで」

…なんそれ。わけ分からん奴っちゃな。


そのあとしばらくして、白石を見つけた切原が
嬉しそうに駆け寄って来て3人で飯食った。
白石の隣で楽しそうに笑う切原を向かい側から眺めた。
ほんまに、嬉しそうに笑う。

――なんやねん、どんだけ白石のこと好きやねんっちゅー話や。

俺は心の中でモヤモヤがでかくなったのに
気づかんフリをして飯を食った。




次の日。今日はシャッフルマッチもなく個人練習の日や。
筋トレを全部やり終えて、
ラリーの相手を探そうとコートの端をぶらぶらしてたら、
ひとりで歩いとる切原が目に入った。

――ん…?なんや、様子おかしないか?

ふらふらしとる。どないしたんや?
様子を見とったら、切原の体がふらついて
壁にもたれかかった。

「!…切原っ」

それを見た瞬間、俺はラケット放り出して
切原に駆け寄っとった。

「切原、どないしてん!」
「…謙也、さん…?」

ふらふらする体を抱き止める。

「なんでも…ない、っす。ちょっと頭痛いだけで…」
「大丈夫ちゃうやんけアホ。保健室行くで」
「……は、い」



切原の体を支えながら保健室にたどり着き、
付き添って診断を待った。

「うん、軽い貧血ね。少し横になれば心配ないわよ」

保健室のおばちゃんはにっこり笑って言った。
…なんやねん、驚かすなや……。
俺は自分の体から力が抜けるのを感じた。
よかった。大したことないみたいや。

「私ちょっと緊急で用があるから、
その子ベッドに寝かせといてあげてくれないかしら。
すぐ戻るから、横にさせたら練習に戻っていいわよ」
「はい、分かりました」

そう言っておばちゃんは保健室を後にした。

「切原、立てるか?」
「大丈夫ッス…」

体を支えてベッドまで連れて行き、横にならせて
上から布団をかけた。
切原は、目を閉じて眠りにつこうとしとる。

――もう、大丈夫みたいやな。

そっと頭を撫でてやる。髪、やわらかいな…。

「いやいや、何考えてんねん俺は。アホか」

言い聞かせるように否定して、
練習に戻ろうとベッドを背にして離れかけたとき。

「………謙也、さん…」
「!」

きゅっ…とジャージの袖を握られて足を止める。

「謙也さん」
「ん?どないしてん。しんどいんか?」


「……ありがと、ございます」


そう言って、俺を見上げながら
ふわりと笑う切原を見て、心臓がうるさく鳴った。
その笑顔に一瞬、見とれてしまった自分がいて。

「き、気にせんでええ。はよ寝ぇや」

焦っているのがバレないように、
慌てて保健室を出て扉を閉めた。



「はぁ…なんやねん俺」

まだ心臓がばくばくいっとる。
なんやねん。これじゃ、まるで…。


「恋、か?謙也」
「ぎゃあッ!」

いきなり声をかけられ驚いて振り返ると、
白石とユウジと小春がめっちゃニヤニヤしながら立っとった。

「謙也が恋やて〜〜青春やなあ」
「がんばりや謙也」
「はぁっ!??恋て、誰が誰に…」
「謙也が、切原クンに、や」
「なッ……」

なにゆうとんねんコイツら。
アホとちゃうか。恋て、男同士やんけ。

「謙也、ドキドキしとるやろ?」
「せやせや。それが恋!ラブやでぇん☆」


「……ら、らぶ…って」


衝撃的なこと言われて頭が働けへん。
せやけど、なぜか否定できひん。

――めっちゃ、ドキドキしとる。


「謙也、惚れたモン負けや」


新しく芽生えた感情が何なんか、答えはもう分かってるけど
今はまだ、気づかんフリをした。





おわり


*******


係長さんからのリク、謙赤でした!

初の謙赤!いかがでしたでしょうか。
少しでもご希望に沿えた内容になっていれば嬉しいです。

アンケートで、謙赤かなり人気あります(笑)
マイナーだいすき、謙也さん大好きな私にとっては
嬉しい限りでございます*
こんなにも同士の方がいらっしゃるとは(笑)

謙也さんっていい人だよね。って言いたかっただけ。

謙赤書いてて、さらに目覚めてしまいました。
どんどん増やしていこうと思います。

係長さん、素敵なリクエスト
ありがとうございました!
よければまたお願いしますね♪♪

2012.03.23

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -