君を射止めるのは




リクエスト第四段!
亜霧さんからのリクです。
「氷立四部長ズ&徳川さん、入江さん×赤也で
赤也の取り合い(総受け)」
という、とっても楽しいリクをいただきました*
それでは、どうぞ!


*******




――ある日のU-17合宿所。

今、ひとりの少年の前で、5人の人物が
静かに見つめ合いバチバチと火花を散らしていた。
少年は誰かに助けを求めようと周囲を見渡すが、
さっきからみんな目が合っても同情の眼差しを向けて
すぐにそらしてしまうばかり。

(ま…巻き込まれたくねぇ……!!)

今、周囲にいる全員の心は一致していた。




――今から約15分ほど前。
珍しく中学生と高校生が一同にメインコートに集められた。
そして、マイクの前に立ったコーチのひとこと。

「今日は1日中、2人1組をつくって練習を行う。
各自、組んだパートナーと共に
ここに張り出した練習メニューをこなすように」

張り出された練習メニューには、
ラリーの練習やダブルス、相手の運動能力測定の記入など
2人1組でしか出来ない内容ばかり書かれてあった。

つまり今日は1日ずっと、パートナーと一緒に
過ごすことになるわけだ。

「それでは、練習開始!」


コーチの一声を合図に、静かな戦いが始まった―――…!




「やあ、赤也」
「あ…幸村部長!おはようございまッス!」

誰と組もうかとキョロキョロしていた赤也の元に
一番早く現れたのは、幸村だった。

「さ、行こうか赤也。最初はラリーの練習みたいだね」
「へ?部長、俺と組んでくれるんッスか?」
「ふふ、ダメかい?」
「全然ダメじゃないすよ!」

ぶんぶん首を振って否定する赤也の可愛さったら。
幸村はよしよしして抱き締めたくなる衝動を抑えた。

「けど、俺とでいいんですか?真田副部長とかは?」
「ん?ああ、蓮二と組むってさ」

ニコニコしながら、適当なことを言う幸村。
早く赤也を連れて行かないと、面倒なことになる。

「行こうか。うっとおしいのが来る前に」
「?」

幸村が赤也の手を引いてコートに入ろうとした、そのとき。

「おい、切原」
「!跡部さん…」
「チッ」

声をかけられ振り向くと、跡部だった。
赤也は、何すか?と小首を傾げて足を止める。
幸村は隠す気もないくらい大きな舌打ちをするが、
赤也はまるで気づかない。

「切原、俺様と組め」
「跡部さんと?」

目をぱちぱちさせて不思議そうに跡部を見つめる赤也。

「どしてッスか?氷帝の人は?」
「…んなことはどうでもいいんだよ。
組むのか、組まねぇのか。アーン?
ちなみに俺の誘いを断る拒否権はねぇ」

どうして、と聞かれてギクッと一瞬動揺するも
持ち前の俺様発言でカバーしたようだ。

「え、っと…」
「悪いね跡部。赤也は俺と組むってさ」
「フン…俺様は切原に聞いてんだよ」

赤也の頭上でバチバチと火花を散らすふたりの様子が
険悪なことに気づき、あたふたする赤也。

「おい切原、行くぞ」
「赤也、行こう?」
「ちょ…」

ふたりに左右の手を捕まれて、どうすればいいのか分からず
動けなくなってしまった。

「アーン?俺様だと不満か?切原よ」
「やめろよ跡部。無理矢理はよくない。
…ふふ、赤也。好きな方と組んでいいんだよ?
(跡部さっさと消えろ。貴様は一生赤也の視界に入るなよ)」

――幸村部長、目が笑ってないッス!

ニコニコと優しく笑っているはずの幸村の口から、
ダブって恐ろしい言葉が聞こえたのは幻聴だろうか。


そんな赤也の耳に、救いの声が聞こえた。


「自分ら、切原クン怖がってるやん。その辺でやめときや」

現れたのは、赤也の肩にぽんと手を置いて
そのまま自分の元へ引き寄せる白石だった。

「困ってるで切原クンが。なあ」
「白石さん…」

優しく笑いかけられて安心した赤也は、
ほっとしたように笑顔を見せた。

「切原クンは俺と組むねんもんな」
「へっ?」

ぎゅっと抱き締められて白石の腕に閉じ込められてしまい、
顔を赤くしてじたばた逃げようとする赤也。

「白石、テメェが出てきて余計にややこしくなってんだろうが」
「…白石は向こうで暴れてる遠山クンの面倒を
見に行った方がいいんじゃないかな?(赤也に触るな、消えろ)」

赤也の頭上でバチバチと散る火花が、3つに増える。

「困っとる切原クンをほって
どっか行かれへんやん…な?切原クン」
「…え、えっと」

抱き締めながら耳元で囁くと、
赤也は真っ赤になってうつむいてしまった。

「だから赤也に触るなと言ってるだろうが。
今すぐ大阪に帰れ。二度と戻ってくるなよ。
(ふふ、白石ってばやめなよ。赤也が嫌がってるだろ)」
「落ち着け幸村。テメェ台詞と心の声が逆になってんぞ」

冷静さを失いもはや自分でも
何を口走っているか分からない幸村。
どす黒いオーラが惜しげもなく放たれている。
さすがの鈍感な赤也も幸村が放つ不機嫌なオーラを感じとり
青い顔でびくびくと怯えていた。




「…お前たち、何をしている」
「!……あ」

3人が無言の睨み合いを続けていると、
ひとりの人物が近寄ってきた。

「徳川さん!」
「「「…え」」」

白石の腕からするりと抜け出して、
声をかけてきた人物に赤也は駆け寄った。

「どうした?」
「いや…えっと」

先輩たちが怖い、とは言えず目を泳がせる赤也。

「組む奴が居ないのなら…俺と組むか」
「え…いいんすか!?」
「ああ」

キラキラした目で嬉しそうに徳川を見上げる。
1番コートの徳川カズヤは、赤也にとって
この合宿でのひとつの目標であり憧れだった。
はしゃぐ赤也を見て、徳川は少し微笑んだ。

「…赤也、いつの間に徳川カズヤと親しく…」
「っちゅーかアイツも切原クンのこと狙っとるんかいな。
ちょっとモテすぎとちゃうか切原クン」
「フン…無防備に愛想振り撒きやがって」



「赤也、もちろん俺と組むよね?」
「切原クンとダブルスの相性ええのは俺やで。なあ切原クン」
「切原…俺様以外の奴と組むとは言わせねぇぞ、アーン?」
「………切原は俺と組みたがっている」
「ふふ、何それ?高校生は高校生同士で組んでなよ」

赤也の所有権をめぐる戦いは4人に増して
さらに激しくなっていた。
赤也はもはや逃げたい気持ちに駆られて
4人に気づかれないようにそーっと後退りした。
すると、背中にトンッと誰かがぶつかるのがわかった。

「あ、すんません!」
「平気だよ。君も大丈夫かな?」
「はい…あ!3番コートの、入江さん…」
「こんにちは、切原赤也くん」

ぶつかったのは、3番コートの入江だった。
入江はにっこり笑うと、赤也の頭を撫でた。

「今日も可愛いね、赤也くん」
「えっ」

あのシャッフルマッチが行われてから、
入江は赤也のことをものすごく気に入っていた。

「どう?あの4人は放っておいて、僕と練習しない?」
「おいテメェ、部外者は引っ込んでな」

入江と赤也の元へ、4人が近づく。

「あら、部外者だなんて酷いな跡部くん。
僕も赤也くんと組みたくて探してたんだよ」
「……入江さん」
「や、徳川。色恋なんて興味ないみたいな顔して
ムッツリなんだから君は」
「…入江さんこそ、中性的で華奢な外見からは
想像出来ない積極性ですね」
「ほんまやわ。アンタ見た目絶対に受け身やん」
「やだなぁ。僕はこう見えてもバリタチだよ」

なんだか赤也にはよく分からない単語が飛び出すが
バチバチと火花を散らしている5人が放つ黒いオーラに
赤也はかなりびびっていた。

「ほんま、幸村クンといい、人は見た目で判断でけへんなぁ」
「ふふ…俺は下に敷かれて突っ込まれるなんてごめんだよ。
好きな子は鳴かせたい派なんだ」
「あらら奇遇だね、僕も同じだよ」

なんだか話がとんでもない方向に傾き始めている。
赤也は5人が何の話をしているのかは分からないが、
きっと聞いてはいけない内容。そんな気がした。

「大体、君たちに赤也のパートナーがつとまるのかな?
赤也はとっても手のかかる子でね、
ここは一番付き合いの長い俺に任せていいよ」

「何言ってんだテメェは。切原はここんとこ毎日
俺様にアドバイスしてほしいって来るんだよ。
俺様を頼りにしてる証拠だろーが」

「何言うてんねん、頼りにしてるゆうたら俺やろ?
白石さん白石さん言うて可愛ええ顔で走ってくるんやで。
たまらんわ、エクスタシーやわ。」

「…そういえばこの間、食堂で切原に会ったときに
俺の分のデザートを渡してやったら喜んでいたな。
徳川さん大好きです、と言っていた」

「僕は一昨日、大浴場で赤也くんに会ったんだよね。
一緒に湯船につかって話をしたんだけど、
今度テニス教えてくださいってデートに誘われたよ。
そのとき思ったんだけど赤也くんって、すごく色白いよね。
細くてきれいな肌だし、見とれちゃったよ」

「ああ…それは分かるわ。髪の毛かて、ふわふわしてて
めっちゃ触り心地ええからつい撫でてまうねんな」

「…頭を撫でたときに見せる照れた笑顔が可愛い」

「ほんとほんと。それに赤也はピーマン苦手なんだよ。
ちゃんと食べなさいって言うと泣きそうな顔で
ちょっとずつ食べるのが可愛くてつい意地悪しちゃうよ」

「フン。それを言うならこの間、切原がベンチで
うたた寝してたときに俺様のジャージをかけてやると
心地良さそうにはにかんでる様子の方が可愛かったっつーの」

「…俺も切原がうたた寝しているのを見かけたことがあるが
睫毛が長くて綺麗で驚いたな」

「寝言もたまに言ってるよね。んーって唸ったり
ふにゃって笑ったりさ。ほんと可愛いよね」

「こないだなんか、幽霊が出たって言って
泣きついてきたわ。うるうるした目で見つめてきて、
一緒に寝よか言うたら安心したように
めっちゃ嬉しそうにはにかむねん」

「「「「「可愛い〜〜〜」」」」」


もう喧嘩なのか、自慢なのか、のろけなのか
何がなんだか分からない状態になっている。
5人は自分のキャラも忘れ完全に暴走していた。


「……あっ、あんたら………ッ
い、いい加減にしろぉーーーーっ!!!」

バラされたくない恥ずかしいことまで暴露されて、
耳まで真っ赤になった赤也は
半泣きになって走って行ってしまった!

「あ、赤也っ」
「切原!」
「切原クン!」
「あらら、赤也くん行っちゃった」
「切原…」


さあ、大好きな赤也を泣かせたとあらば一大事。

争っていたことなど忘れ、5人は
愛しい愛しい相手の元へと駆け出した。



(一時休戦…だね)
(この決着は必ず着けさせてもらうぜ、アーン?)
(望むとこやで。絶対手に入れたるわ)
(…泣いている切原も、可愛いな)
(徳川ほんとムッツリだよね。ま、確かにそうだけど)






おわり


*******


や、やっと終わりました!(笑)

亜霧さん、リクエストありがとうございました!
ほんとに書いてて楽しかったです*

それにしてもギャグってむずかしいですね。
なんかただみんなが必死に赤也を
取り合ってるだけになってしまいましたが
ご希望に少しでも沿えたでしょうか…。

なぜかうちの幸村様は、
幸赤のときは優しく甘い雰囲気になるんですが
総受けのときは恐ろしい魔王様になります(笑)
なんでだろ。けど、どっちの幸村さんも好きです。

初めて高校生を書いたんですが、楽しいですね!
入江さんに「僕はバリタチだよ」って
言わせたかっただけですすみません。(殴)
けど入江さん絶対そうだと思います。
徳川さんはムッツリです。

少しでも楽しんでいただけたらわたしは満足です!

亜霧さん、素敵なリクエスト
ありがとうございました!

リクはまだまだ受け付けておりますので
よかったらまたお願いします。

2012.03.23

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