シルキーレモン




リクエスト第三段!
桜さんからのリクエストです。
ブン赤で「喧嘩後に仲直りする、甘々なふたり」
とのご希望だったので、書きました。
ブン赤は甘々が大好きなので嬉しいリクです。
それでは、どうぞ♪


*******



「なージャッカル、赤也知らねぇ?」
「赤也なら…さっき跡部と話してたけど」
「…ふーん、あっそ。さんきゅ」

今日も厳しい合宿の練習を乗りきり、
やっと飯食えると思って赤也を探してたけど
ジャッカルの口から出てきた人物の名前に苛立ちを覚える。
最近、赤也は跡部になついてる。
白石とか、幸村クンとか、跡部とか
テニスが上手い奴らに純粋に憧れてるだけなんだろうけど。
けどなんか、ムカつく。
練習終わったんだから、真っ先に俺んとこ来いっつーの…。
イライラを必死に抑え、俺は赤也を探した。



「跡部さん跡部さん!さっきの試合すごかったッスね!
最後に決めたスマッシュとか、マジかっこよかったッス!」
「アーン?あの程度、俺様には楽勝だろうが」
「けどっ、コードボールのときとかも!
俺あんなボール取れないッスもん」
「フン、お前はまだ力が入りすぎなんだよ。
もっと手首のスナップをきかせてボール拾え」
「はいッス!」

赤也は、コートの端で跡部と一緒に居た。
跡部の試合を見た後なのか、目を輝かせて
すげー楽しそうに跡部に話しかけてる。

「……何がそんなに嬉しいんだっつの」

あまりに嬉しそうに跡部と話す赤也を見てたら、
またイライラが増してきた。
――そんな無防備な顔、他のやつに見せてんじゃねぇよ。

「おい、赤也」
「あ、ブン太先輩!」

俺の気も知らずにぶんぶん手を振ってくる。
…つーかお前、跡部と近すぎだろぃ。

「行くぞ」
「え…っ、いた、」

乱暴に赤也の手首を掴んで歩き出す。
跡部の側にこれ以上、置いときたくなかった。

「せんぱ…手、痛いっ」
「うるせぇ」
「先輩、怒ってる…?」
「…………」
「先輩?」

不安そうに聞いてくる赤也に、足を止める。
赤也の方を見ないまま、不満をぶつけた。

「……跡部と話してんじゃねぇよ」
「は?」
「は?じゃねー。なに他の奴に甘えてんの」
「あまっ…、ち、違うッスよ!
俺はただ跡部さんにアドバイスをもらいたくて」
「んなの、俺に聞けばいいだろぃ」
「だ、だって…跡部さんが、さっきすごいスマッシュしてて…」
「…跡部跡部うるせぇんだよぃ」

自分でも分かるくらい、明らかに不機嫌な声が出る。
掴んだままの手から、赤也がびくっと驚いたのが伝わってきた。

「お前さ、そんなに跡部のこと好きなわけ?」
「なっ……!」

こんなこと言いたいわけじゃない。
赤也はちゃんと俺のこと好きで、跡部のことは
単なる憧れだってことも分かってるのに。
つい苛立ちから言ってしまった。

「…っ、ブン太先輩のばか!!もう嫌いッス!!!」

俺の手を振りほどき、震える声で叫んだ赤也は
そのまま俺を追い越し走って行ってしまった。

「………ッ」

余裕のない自分に一番腹が立ち、頭をガシガシと掻いた。




「…………………」
「おいブン太、そんなに落ち込むなら最初から喧嘩すんなよ」
「……うるせぇ…ジャッカルのくせに」

ジャッカルに八つ当たりしつつ、食堂で飯を食う。
なんか、味がしない。食う気になんねー。

「ブン太先輩のバカ〜もう嫌いッス♪」

後ろから聞こえた声にさらに苛立ちが増した。

「仁王…マジ殺す」
「おーおー恐いのぉブンちゃん」
「ブンちゃん言うな!」
「まぁ落ち着きんしゃい。
そんな顔して怒られたら、さぞ赤也も怖かったじゃろな」
「…………」
「プリッ」

食堂には、赤也の姿はない。
アイツ…飯食わねぇつもりかよ。

「赤也のこと探しに行かんでええんか?」
「…俺が行ったって、逆効果だろぃ」
「分かっとらんのー。
赤也、きっとブンちゃんのこと待っとるぜよ」
「だってアイツが」
「ブンちゃん」

少し低めのトーンで名前を呼ばれて、顔を上げる。

「素直になりんしゃい」




先輩のバカ。アホ。意味わかんねぇ。
俺はただ、テニスがもっと上手くなりてぇだけで…。

――そんなに跡部のこと好きなわけ?

あの言葉が頭から離れない。
違うのに。俺は、ブン太先輩のことが好きなのに。

「……嫌いって、言っちまった」

ショックで混乱したからとは言え、
大好きな先輩に嫌いだなんて言ってしまったことが
一番悲しかった。
合宿所の外のベンチでひとり。
こんなとこで何やってんだろ俺…。
ブン太先輩が来てくれるかな、なんて絶対思ってねぇ。
…思ってねぇもん。




「…テメェはこんなとこで何してんだ、アーン?」
「!跡部さん…」

突然声をかけられて振り向くと、跡部さんだった。
けど、そこに立っていたのが
大好きな大好きな赤髪の人じゃないことに
少し心が痛んだ。

「…跡部さん、俺。テニス上手くなりたくて」
「……」
「俺の、す…好きな人が、すげぇテニス上手いから
俺もちょっとでも近づきたいって…。
けど、分かってほしいのにその人に全然伝わってなくて」
「お前は、言ったのか?」
「え?」
「その好きな人とやらに、ちゃんとそれを
言葉にして言ったのかって聞いてんだよ」
「え…言ってない、ッス」
「妙なこと言うじゃねぇの。
伝えてもねぇことを分かってほしいだなんて
そいつはエスパーか何かか?」
「…!」

跡部さんに言われて、ハッとした。
そういえば、言ったことねぇ。
普段だって…ブン太先輩は好きだとか
いっぱい言ってくれるけど
俺は恥ずかしいからあんまり言わない。
何も、自分の口から言ってない。

――全部伝わってるって、勝手に勘違いしてた。

「跡部さん…俺、ちゃんと言ってくるッス!」
「フン…分かったらさっさと行け」

そう言って跡部さんに頭を撫でられた。
なんだか、ブン太先輩にすげぇ会いたくなって。
今すぐ先輩の元へ行こうと立ち上がり、振り返った瞬間
少し離れたところに居るブン太先輩と目が合った。

「!せ、先輩っ…」
「……」

あ…どうしよう。さっき跡部さんのことで
喧嘩したばっかりなのに。
また誤解されちまう。
どうしよ、何か言わねぇと。

「先輩っ俺…」
「おい跡部」

俺が焦って口を開こうとすると、
先輩は跡部さんを睨み付けてこっちに近づいてくる。

「赤也に触んな」

そう言った先輩に腕を強く引き寄せられ、
気づけば俺は先輩に抱き締められていた。

「先輩…っ」
「赤也は俺のなんだよ。気安く触ってんじゃねぇ」
「!」

俺が慌てて体を離そうとすると、
先輩の腕にぎゅっと力が入り、腕の中に閉じ込められた。

「…フン、そんなに大事なモンなら
最初から離してんじゃねぇよ」

跡部さんはそう言うと、合宿所の中へ戻って行った。




「……」
「………」

赤也を必死に探して、やっと見つけ出したと思ったら
赤也の隣には跡部が立っていた。
それも、赤也の頭を撫でながら。
その光景を見て、またムカついたから
跡部から赤也を奪い返した。

跡部と一緒に居たことにまた文句言おうとしたけど、
抱き締めた赤也の体が少し震えてることに気づいて
俺は仁王の言葉を思い出した。

――素直になりんしゃい。

「………赤也」

ぎゅっと抱き締めながら名前を呼ぶと、
赤也の体がびくっと反応した。

「赤也…」
「…………」

「……ごめん、な。赤也」
「!」

そう言うと、赤也ははじかれたように顔を上げた。
目にはいっぱい涙がたまってる。
涙がこぼれそうな瞳に、ゆっくり口付けた。

「俺、嫉妬してた。赤也が…すげぇ可愛い顔で
跡部に笑いかけたり楽しそうに話したりするから。
今だって、赤也のこと触られてんのがムカついて…」
「ブン太、せんぱ…」
「さっきは、変なこと言って…わりぃ」

赤也に自分の気持ちが伝わってほしくて、
真っ直ぐ目を見て言った。
赤也は驚いたように目を見開いていたが、
しばらくするとまたじわじわと涙がたまっていく。

「…俺、も」
「……」
「俺も、ごめん…なさ、い」
「……お前は悪くねーだろぃ」

赤也はぶんぶんと首を横に振った。

「だっておれっ、先輩のこと、き…嫌いって、言ったぁ…」

そう言いながら、赤也はぽろぽろと涙をこぼした。

「おれ先輩のこと、好きっ…だいすき、なのに…ッ」
「あか、や」
「好き…ブン太せんぱいっ…」

いつも恥ずかしがって好きだとか滅多に言わない赤也が、
何度も好きだと言ってくれる。

「先輩のこと好きでッ…だから、もっと先輩に近づきたくて
テニスも上手くなろう、って……っひ、く」

赤也の飾らない素直な言葉に、
心があたたかくなっていくのを感じる。
こんなに可愛くて愛しい恋人を、泣かせるなんて。

「赤也、ごめんな…泣かせちまって」
「……っ、ひっく」
「俺も好きだ、赤也」
「せんっ…ぱい」
「好きだよ赤也のこと。すげぇ好き」

頭を優しく撫で、額にそっと口付けると、
赤也がぎゅっと抱き付いてきて、俺の肩に顔を埋めた。

「なあ、赤也」
「…なん、すか?」
「そのよ…あんま他のやつに、無防備になるな。
頭撫でられたりも、すんじゃねぇ。
お前は俺だけ見てろぃ」

そう言うと、赤也は目をぱちぱち瞬かせ、
そして、照れたように、嬉しそうに笑った。

「…はいッス」

素直に返事をして、ぐりぐりと肩に
顔を押し付けてくる赤也に愛しさが募り、
また抱き締めた。

「赤也」
「……っん」

そっと肩から顔を離させしばらく見つめ合うと、
ゆっくりと互いの唇を重ねた。

「好き。赤也」
「ふっ…ん」

何度も角度を変え、外であることも忘れてどんどん深いキスに。

「ん…んッ、は、」

真っ赤な顔で、一生懸命キスに応えてくれる赤也。
――すげ、可愛い…。
なんか…やべぇ、とまんねーかも。

ぎりぎり繋ぎ止めた理性で、ようやく唇を離すと、
赤也は恥ずかしさからまた抱き付いて顔を隠してしまった。

「赤也、今日は俺の部屋で寝ろ」
「へ…?」
「腹、減ってんだろぃ。もう食堂閉まってるし。
俺の部屋、バイキングのときこっそり持ち帰って
ため込んだパンとかいっぱいあるから」
「……へへッ♪はい!」

嬉しそうに無邪気に笑う赤也にもう一度
触れるだけのキスを落として、
ふたりで手をつないで部屋へと向かった。


――たまには、素直になるのもいい。


隣に歩く赤也の笑顔を見て、そう思った。





おわり


*******


桜さんのリク
「喧嘩しちゃうけど、赤也が跡部と仲良くしてるところを見て
自分から謝るブンちゃんと、その後の甘々なふたり」
でした!
読んでいただきありがとうございます。

ちなみにタイトルのシルキーレモンっていうのは
わたしが最近食べたジェラートの名前です(笑)
レモンの味がするんだけど、すごく甘くて
口の中がふわふわして美味しかったので。
なんかブン赤っぽいなって(え)

リクには、間に入るのは跡部か白石とあったので
今回は跡部さんに登場してもらいました。
なんか…跡部さん、ただのめっちゃいい奴になりました(笑)

桜さん、いかがでしたでしょう…
ちゃんと甘々になってますかね;不安です(笑)
とりあえずこのふたりには
ちゅーさせたくなる衝動に駆られます。

やっぱブン赤は書いてて楽しいです。
今回は余裕のないちょっと弱気なブンちゃんにしてみました。
ブンちゃんってかなり男前な性格で強気だけど、
赤也のことになると嫉妬したり悩んだりしてたら
可愛いなと思って。

リクありがとうございました!
まだまだ募集してますので、
これからもよろしくお願いします♪♪

2012.03.21

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