Pretty angel !




※リクエスト第二段
ゆうさんからのリク、可愛いほのぼのな白赤
「お世話になった白石さんにお礼がしたくて
いろいろ頑張るけど失敗して落ち込む赤也と
そんな赤也が可愛くて仕方ない白石さん」
とのことだったので書いてみました。
それでは、どうぞ!


*******



――あ…白石さんだ!

厳しい練習メニューの合間の休憩時間、
少し離れたところで四天宝寺の人たちと一緒に話す
白石さんの姿が見えた。

白石さん、かっこいなぁー…

誰が見ても綺麗に整っている顔立ちに、高い身長。
完璧な容姿は、男の俺から見ても憧れるものがあった。
それだけじゃない。
白石さんはすげぇ優しくて、ダブルスを組んで以来
俺のことを何かと気にかけてくれてる。
俺が悪魔化で暴走しなくなったのも白石さんのおかげだ。
面倒見がよくて、テニスが上手で、優しい白石さんが俺は大好きだった。

俺がコーチや先輩にテニスが上達したと誉められたり
練習試合に勝ったとき、嬉しくて白石さんに報告に行くと
「すごいなぁ」って言って頭を撫でてくれるんだ。
他にもアドバイスしてくれたり、
こないだ一緒に食堂でご飯を食べたときは
俺の好きなおかずを白石さんの分までくれたりした。

「…考えたら俺、白石さんにいろいろしてもらってるのに
俺からはなんもしてねぇや」

そう考えて、ちょっと焦った。
俺、白石さんに世話になってばっかじゃねぇか…。

「……あ、そーだ!!!」

――俺も、白石さんに何かお礼しよう!!

向こうの方で楽しそうに話す白石さんを見て、
俺は「よっしゃ!」と決心した。
白石さんのために何かするって考えたら、なんかワクワクした。


その様子を、少し離れたところで見守っていた
立海のレギュラーたち。

「………なんか赤也が一人でガッツポーズしてんだけど」
「…白石が関係している確率、98%だ」
「ふふ、赤也可愛いなぁ。
白石のことでっていうのがちょっと悔しいけど」
「精市、目が笑ってないぞ」



……あ、切原クンや。
休憩時間、ユウジと小春がコントしだしたのを見とったら
ちょっと離れたところで切原クンが一人で立ってるのが見えた。
何やら焦った表情をしたかと思えば、急にぱっと目を輝かせ
よっしゃ!と一人でガッツポーズをしてる。

――切原クンは、ほんまにころころ表情変わりよるなぁ。
ユウジたちをそっちのけで、しばらく可愛い姿を眺めた。



「うーん…」

白石さんにお礼をしよう、とは言ったものの
何をすればいいのか分かんねぇ。
プレゼントを渡そうかと思ったけど、こんな山奥に
そんなの買える店なんかねーし。

1日の練習が終わって、晩ごはんの前に
いったん部屋に戻ろうと一人で廊下を歩く。
白石さんは、何すれば喜んでくれるかな…。
悩みながら歩いていると、向こうから来た
四天宝寺の忍足謙也さんとすれ違った。

「あ、忍足さん!お疲れさまッス」
「おー切原やん。何ひとりでうんうん唸っとるん」
「え…えっと…あ、そーだ!」

忍足さんなら、白石さんと仲がいいから
何かアドバイスくれるかもしんねぇ!
そう思って、相談してみた。

「白石が喜ぶことなぁ…別に切原がすることやったら
アイツなんでも喜ぶ思うけど」
「??なんでッスか?」
「なんでって…」

アイツは切原のこと可愛くてしゃーないから、とは言えず
適当にはぐらかした。

「なんか、白石さんの好きなものとか知らないッスか?」
「白石の好きなもん好きなもん…
まあ趣味はチェスで、よぉやっとるみたいやな」
「チェス?」
「まあ合宿所にはチェスなんかあれへんから
最近はしてへんけどな」
「…チェス!かっけー!それにするッス!」
「え?ちょ、」
「ありがとうございましたーっ」

目をキラキラと輝かせて走って行ってしまった。

「……まあ…おもろいから、ええか」


白石さん、チェス好きなんだ。やっぱかっこいい!
じゃあきっと合宿所ではチェスが出来ないから、
もしチェスがあったら喜んでくれるかも!
………けど、チェスってなんだっけ?


「チェスとは、チェス盤の上で駒を動かして
2人が向き合って対戦する娯楽のことですよ」
「へー!さすが柳生先輩!」

やっぱ柳生先輩に聞きにきてよかった。
先輩はなんでも知ってんなぁ。

「先輩、チェス盤ってやつ、作りたい!」



「…へへッ!」

柳生先輩にチェス盤ってやつを教えてもらって、
大きめの紙に頑張って書いた。
チェスってのは2人で遊ぶゲームらしいから、
白石さんと一緒にやろーっと。
俺はワクワクしながら食堂に向かった。


「白石、どないしたん?」
「ん…なんでもあらへん」

食堂に切原クンが居れへん。
飯も食わんとどこ行ったんやろか。
そう考えてたら食堂の扉が開いて、切原クンが
息を切らせて入ってきた。
しばらくキョロキョロしてた切原クンは、
俺と目が合うと嬉しそうにこっちに走ってきた。

「白石さーん!!」
「切原クン。どないしたん?」
「これっ!白石さんにあげます!」

差し出されたのは一枚の紙やった。

「おおきに。これは?」
「チェス盤ッス!白石さん、チェス好きって聞いたから。
俺、白石さんにいつもいろいろしてもらってるから、
俺もなんかお礼しようと思って!」

だから、作ったんッス!
と、嬉しそうな笑顔を見せる切原クン。
……めっちゃ可愛ええ…。

「チェスって2人で遊ぶゲームって柳生先輩に聞いたから!
俺とチェスしましょー白石さん!」

にこにこ笑って話す切原クンを抱き締めたい衝動に駆られるけど
なんとか理性でおさえた。
隣で謙也が、ほんまに作ったんかい…って呟いてる。

「切原、チェスのルール知ってると?」
「へ?ルール?」

千歳が不思議そうに聞くと、しばらくきょとんとして
しまった!という表情に変わる。

「……し、知らない…っす」
「ブッ!!」

しゅん、とうつむいてしまった切原クンに、
謙也が盛大に噴き出した。

「ほな、俺がルール教えたるから一緒にやろか」
「はっはい!」

そう言うとまた、ぱっと表情を輝かせて笑って頷いた。
そんな可愛すぎる姿を見て、思わず頬が緩んでしまった。

「よっしゃ、ほなやろか。」
「はいッス!」

切原クンは嬉しそうに紙をテーブルの上に広げる。
にこにこしながら、俺がルールを説明するのを待ってる。

「…えっとな、切原クン」
「はい!」
「チェスの駒……は?」
「え?」

一瞬、全員がシーンと静まり返る。

「………」
「切原、もしかして」
「……作るの、忘れた…」
「………」
「ブハッ!」

ショックを受けたように、ぽつりと呟く切原クンに
また謙也が噴き出した。

「ぎゃははははは!!切原、アホや!
お前おもろすぎやろ!!!腹痛いわ!」

ぎゃはは、と大爆笑している謙也と、
可愛かね、と笑って和んでいる千歳。

「切原クン」
「……っ」

俺が呼びかけると、真っ赤な顔でさらにうつむいてしまった。
しゅんとして、かなり落ち込んでるみたいや。
ほんま…可愛ええ。
手書きのチェス盤に目をやると、いびつな線やけど
ちゃんとチェス盤の形になっとる。
きっと先輩に教えてもらいながら、一生懸命書いてくれたんやな。
そう考えてたら、目の前の切原クンがめっちゃ愛しくなった。

「切原クン、おおきに。めっちゃ嬉しいわ。
大事に使わせてもらうわな」
「……け、けど…」
「また今度、一緒に駒も作ろ。な?」
「……」

頭を撫でて笑いかけると、真っ赤な顔で
小さくコクリと頷いた。



「…………はあ〜〜〜…」

くそッ、俺のバカ野郎。
白石さんの前で恥をかいてしまった。
白石さんは、嬉しいと笑ってくれたけど。
ほんとに優しいな…白石さん。

「とにかく、チェスは失敗だ!もっと違う方法を考えよう」

そう決心して、俺は眠りについた。



そして、次の日。

「白石さん、おはようございます!」
「おはようさん、切原クン」
「い、一緒に食べてもいいですか?」
「ええよ、おいで」

にっこり笑ってくれた白石さんにドキドキしながら、
俺は白石さんの向かい側に座った。
よし、さっき思いついた作戦第二段だ!
白石さんに俺の分のおかずもあげる大作戦。

「白石さん、俺の分のハムあげます!」
「え?ええよそんな。切原クンそれ好きやろ?」
「す、好きだけどっ」

けど、白石さんにあげたい。

「ほな食べや。いっぱい食べて今日も練習がんばろな」
「は…はい」
「せや、切原クン卵焼きも好きやろ?
これあげるからしっかり食べ」
「わあっ、いいんッスか?ありがとうございます!」

白石さんがくれた卵焼きを大事に食べながら、
練習が始まる時間まで白石さんと楽しく話をした。



……って、ちがあああう!!!
俺がもらってどうすんだよ、俺のアホ…。
また作戦は失敗してしまった。

次こそ、白石さんにお礼するぞ。


今日は練習試合があった。
俺は弱っちぃ高校生を軽く倒して、
急いで白石さんが試合しているコートに向かった。
白石さんの今日の相手は結構強いって聞いたけど、
白石さんはどんどん相手からポイントをとってた。
その全く無駄のない動きに、感動して釘付けになる。

「ゲームアンドマッチ!白石!」

かなりの大差をつけ、白石さんが勝った。

「やった!!白石さんすげー!」

コートから白石さんが出てくる。
息が上がって、汗をタオルでぬぐってる。

…そーだ!水もって行こう!きっと喉かわいてるはず。

「白石さ……っ、!」

急に走り出そうとしたら、左足がズキッと痛んだ。
思わずしゃがみこむ。

「い、て…」
「切原クン!」

俺が座りこんでいるのに気づいた白石さんが駆け寄ってくる。

「どないしたん…足、捻ったんか?」

俺が小さく頷くと、白石さんは
ひょいっと俺を横抱きして立ち上がった。

「わ、わあっ!」
「保健室行って、見てもらわなな」
「あのっ、自分で歩いて…」
「あかん。痛いんやろ?左足」

そう言って、白石さんは俺を抱き上げたまま保健室に向かった。


「……おい、白石が赤也をお姫様抱っこしてんだけど」
「怪我をした赤也を保健室に連れて行こうとしている確率100%」
「ふふ、赤也ってばドジだね。それにしても、お姫様抱っこかぁ」
「精市…目が笑ってないぞ」



「大したことなくてよかったな。
けど、あんまり今日は無理したらあかんで?」
「はい…」

しゅん、としながら返事をする切原クン。
なぜか落ち込んでるみたいや。
昨日の晩のことといい、朝のことといい、
お礼なんかしてくれへんくても
俺は切原が白石さんゆうて笑ってくれるだけで
嬉しいてしゃーないんやけどな。

頭をポンポンとしてやると、少し頬を赤らめた。

「…ふー、それにしても、喉渇いたな」
「!」

試合終わって、切原クンが座りこんでるん見て
水分補給するのも忘れて連れてきたから
喉がめっちゃ渇いた。自販機でなんか買ってこよかな。

「しっ白石さん!」
「ん?」
「これ、俺の水あげますっ!」
「え…せやけど、もう半分もないやん。
切原クンの水やねんから切原クンが…」
「俺っ、もういっぱい飲んだからッ」

俺にペットボトルの水を差し出して、
不安そうに俺を見上げる。
…そんな可愛ええ顔、あかんやろ。

「うん…ほな、もらうわ。おおきに」
「!…は、はいッス!」

切原クンから水を受けとると、
ほんまに嬉しそうに笑った。
俺のために何かしてくれようと一生懸命な姿が
可愛くて、めっちゃ愛しかった。

「ん、めっちゃおいしい」
「へへッ」

頭を撫でると、にこにこ笑った。

「白石さん、」
「なんや?」
「その…いつも、ありがとう、ッス」
「…………っ!」

恥ずかしそうに笑って言った切原クンに、
心臓が大きく鳴った。

「……それは、反則やろ…」
「??」


――その可愛い笑顔と、ありがとうの言葉が、
何よりも嬉しくて。幸せやと思った。







おわり


*******


やっと終わりました!
いや、長いですね!すみません;

ゆうさんのリクエスト、
「白石さんにお礼がしたくて頑張るけど
上手くいかなくて落ち込む赤也と、
そんな赤也が可愛くて仕方ない白石さん」
でした。

ゆうさん、ちょっとでもご希望に沿った作品に
なりましたでしょうか…。
てか無駄に設定を考えすぎて長くなりすみません。
けど書いてて楽しかったです。

白石さんと赤也、ほんとにほのぼのな
可愛いカップルですよね。
素敵なリクエストありがとうございました。
よければこれからも、よろしくお願いします♪

2012.03.21

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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