不器用な恋




桜々さんのリクエスト、財赤で甘です。
「素直じゃなくて言えないけど、一緒に居たいふたり」
というすばらしい萌えシチュのリクエストでした。
それでは、どうぞ!



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さっきから心臓がばくばくいってる。
俺は今、大阪に来ていた。
大阪に住む恋人に会うために。

お互い部活が忙しく、最近はずっと予定が合わなかった。
だから、会うのはすげぇ久しぶりで。
――なんか、緊張する…。
会ったら最初になんて言おうか。
そんなことばかり考えながら、待ち合わせ場所に向かった。

「…あ!」
「あ、来た」

待ち合わせ場所には光が立っていた。
久しぶりの光が目の前に居て、心臓がうるさく鳴った。

「……お疲れさん」
「お、おうっ」

会えたら言いたいことをいっぱい考えてきたのに、
ドキドキして頭が真っ白になった。

「ほな、いこか」
「え…うん」

光は、表情を変えずに平然と歩き始める。
――なんだよ、その余裕そうな態度。
俺ばっか…緊張してんじゃん。
ちょっとだけ、心臓がズキッと痛んだ。



「…お邪魔します」
「あー、いま親出かけてておらんねん」

今日は昼まで俺が部活があったから、
こっちに着くのは夕方になった。
だから今日は光の家に泊まって、明日ゆっくり
大阪を一緒に観光して、夜には東京へ帰る予定だ。

「なんか飲み物入れて行くから先部屋行っといて」
「うん」
「コーヒー…は、飲まれへんのか」
「う、うるせぇ!」
「ココアしかない。ええか?」
「おぅ…さんきゅ」
「ほな、部屋行っといて」


…バタン。

「はぁー…」

部屋に入ったとたん、緊張がとけて力が抜ける。
久しぶりに側に光が居ることにドキドキしっぱなしで、
すげー顔が熱くなってた。
けど…光は全然嬉しそうな顔してねぇ。
気のせい、かな。


光の部屋は、前に来たことあるけど
やっぱ片付いててきれいだな。
光らしい。

カーペットの上に座り、所在なさに部屋を見渡していると、
トントンと階段を上がってくる音が聞こえ、
また心臓が大きく跳ねた。

「おまたせ」
「さんきゅ…」

緊張して、光の顔を上手く見られない。
しばらく無言の時間が続いた。
なんか、なんかしゃべんねぇと…。

「…お前がさ」
「へ!?」
「……なんでそんな驚くねん」
「い、いきなりしゃべんじゃねーよ!」
「無茶苦茶言いよるわ…」
「うるせぇッなんだよ」
「お前が電話で、やりたいゆうてたゲームあるやん」
「ああ、うん」
「友達が持っててん。借りたから今あるけど…やる?」
「えっ……やる!」

俺が前にやりたいって言ったゲーム、覚えてくれてたんだ。
光、あんまりゲーム興味ないのに。

光は特に表情を変えることなくゲームの準備を始めた。



「ふー、やっとクリアしたー!」
「面白かった?」
「おう!」
「…あっそ。そらよかったな」

そう言って、光はまた表情を変えずに片付けを始めた。
その姿にまた少し胸が痛んだけど、気づかないフリをした。
俺も片付けを手伝おうと、コントローラーに手を伸ばしたとき、
俺の手が光の手にちょっとだけ触れてしまった。

「あっ、わ…わりぃ!」
「………」

俺が焦ってあたふたしても、光は無表情のまま。
なんだよ…ちょっとくらい、焦ったりドキドキしたりしろよな。
そう言えば、久しぶりに会ったのに
今日は光に全然触れてない。

――光は、平気なのかよ。寂しくなかったのかよ…。

そう考えると、ズキンと胸が痛んだ。
俺は、ずっと会いたかったのに。
何日も前から楽しみで、話すことだっていっぱい考えてきた。
光の話だっていっぱい聞こうと思ったのに。

だんだん悲しくなってきて、目頭が熱くなってくる。
ダメだ、泣くな。せっかく久しぶりに会えたのに。
楽しい話しなきゃ…。
そう頭では分かっていても、涙がこぼれた。

「赤也…って、え?なんで泣いて…」
「うるせぇ…ッ泣いてねーよ!」
「いや泣いてるやろ、どう見ても」
「…うるせー」

一度出てしまったものはなかなか止まらなくて、
ぽろぽろと涙が出る。
目の前の光が困ってるのが分かる。
…何やってんだよ俺。あんなに、楽しみにしてたのに。

止まらない涙にイラついて、
目を何度もごしごしこすっていると、
不意に光に腕を引かれ、気づけば光の腕の中に居た。

「ひか、る」
「…なんで泣いてんねん」
「……泣いてねぇ」
「赤也」
「……っ、お前が」
「うん」
「笑わねぇしっ、つまんなさそーにするからッ
俺ばっか今日のこと楽しみで…
俺ばっか光に会えてドキドキして、緊張してんじゃねぇかよッ」
「……」

何も言わなくなった光に不安になるけど、
光の顔を見ることができない。

「光のバカ!なんか言えよっ…バカ」
「バカ言うな。せめてアホって言えや。
てかアホはお前やろ」
「はっ!?なんだよそれ――…ッ」

文句を言おうと顔を上げようとすると、
また光の胸に顔を押し付けられた。


………あ、

「アホ…めっちゃ緊張しとるっちゅーねん…気づけや」

光の心臓は、俺と同じくらいドキドキしてた。

「今日めっちゃ楽しみやったっちゅーねん…」
「……ひか、る…ごめん」
「アホ」

光の心臓の音が心地よくて、体を預けると、
光が優しく頭を撫でてくれた。

「赤也」
「なに、……っん」

名前を呼ばれて上を見上げると、
ゆっくりと唇を重ねられた。

「ん…」
「ほんまお前、アホやな」
「………うるせー」
「アホや」

そう言うと、光は見たことないくらい
優しい顔で笑った。
それにつられて俺も笑い返し、また光の胸に顔を埋めた。



好きだとか、会いたかったとか、
キスしてほしいとか、側に居たいとか。

そんなこと、俺らは恥ずかしくて言えねぇけど。

…けど、俺は、光の胸から聞こえる
この心臓の音があればいいって。そう思った。





おわり


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記念すべき、リクエスト第一段の財赤でした!

桜々さん、リクエストしていただき
ありがとうございました。
桜々さんのご希望に沿った内容に
なっているでしょうか。
出来るだけ、不器用な2人を表現したつもりなんですが
どーなんでしょう…なんか微妙ですね、すみません;
けど、書いてて楽しかったです!

光は顔や言葉に出さないだけで、
赤也と会えるのめっちゃ楽しみにしてると思います(笑)
赤也の好きなゲームを友達に借りておいたり、
観光のスケジュールいろいろ考えたり。
けど実際会うと口下手なせいかあんまり話せません。
もどかしいカップルです(笑)

ちなみに、財赤は
アンケートでも白赤の次くらいに票多いです。
びっくりしました。
財赤すきなんですけど、かなりマイナーだと思ってたので。
なんかすごく嬉しい(笑)

財赤かわいいですね。
桜々さん、これからもこのサイトをよろしくお願いします!
よければリクもまたしてくださいね♪

読んでくださった方も、ありがとうございました*

2012.03.20

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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