片想いのしあわせ




「白石さーん!俺、今日はフォーム誉められたんッスよ!」
「白石さん白石さん!前に白石さんに指摘してもらった
右足が前に出ちまう癖、なおったッス!」
「白石さん、練習試合してください!」

最近、切原クンは何かあったらすぐに
俺のところに走って報告しに来る。
初めて会ったときはめっちゃ警戒されて
あんまりしゃべってくれへんかったけど、
ダブルス組んでからはめっちゃなついてくれるようになった。

「それで、サーブも安定してきたって言われて!」
「そうなんや。すごいやんか。頑張ってたもんな切原クン」

可愛くてつい頭を撫でると、少し赤くなって
へへッと照れたように笑った。

「じゃあ、俺練習に戻るッス!」

ぶんぶんと手を大きく振ってコートへ走って戻る切原クンを見て
自然と頬が緩んだ。


「可愛ええなあ切原クン、押し倒したいわぁ」
「ほんま可愛ええわ切原クン、ちゅーしたいわぁ」

後ろから気色悪い声がして振り向くと、
謙也とユウジがにやにやしながら立っとった。

「なんやねんお前ら、その気色悪い声は…」
「白石の心の声を再現したってんねん」
「せや。あっとるやろ?」
「アホか」

俺の心の声、とかゆうてしょーもないことで遊んどる。
ユウジのやつ、絶対に小春に振られた腹いせに
俺で発散しとるやん。腹立つわぁ。
謙也はただのアホや。

「白石、切原にもっとアタックせぇや」
「せやせや、好きなんやろ?
向こうもめっちゃ白石に気ありそうやん」
「…アホ。あれは、なついてくれとるだけや。
好きやとか、そんなんやないわ」
「………」

急に黙って顔を見合わせる謙也とユウジ。

「なんやねん」
「いや…白石のちょっと弱気なとこてレアやなあ思て」
「はは、白石びびっとんちゃうん。
俺よりヘタレなんとちゃうか」
「それはないわ」
「なんやねんユウジどっちの味方やねん!」
「俺は小春の味方じゃ!」
「裏切り者!」
「先輩ら、うるさいしキモいッスわ…」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ謙也とユウジに、
財前まで加わって更にうるさくなった。


――弱気な俺、か。

ふとコートを見ると、切原クンと目が合った。
切原クンは赤くなって慌てて目を逸らそうとしたけど、
俺が笑いながら手を振ったら、
一瞬だけ驚いたような顔をしてから
元気な笑顔で手を振り返してきた。
その姿に心臓が大きく鳴った。


「…この感じが、好きなんかもしれへんな、俺」


まだ、今はこのままでええ。
コートで一生懸命ボールを追いかける切原クンを、
しばらく眺めながら思った。






*******


アンケート、まだ票は少ないですが
今のとこ白赤が一位ですね。
同士の方がいて嬉しいです(笑)

なんか、両想いとはまた違った
片想いのあの独特なワクワクとかドキドキした気持ちを
白石さんが大切にしてたら萌えるなと思って書きました。

好きだけど、一歩進みたいけど、
でももうしばらくは今のままがいい、っていう。

白赤って可愛いですよね。
面倒見のいい白石さんと、無邪気な赤也で
ほのぼのカップルです。

ありがとうございました(笑)
どんどん白赤増やしていきます。

2012.03.20

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -