天使争奪戦





U-17の合宿所。
ただいまの時刻は、夜の11時すぎ。
厳しい練習を重ねる中学生たちは、
疲労からほとんどの者が眠りにつこうとしていた。
そんな時。


「う、うわああああーっ!!!」


合宿所にある人物の悲鳴が響き渡った。


普通なら、こんな時間にうるせえええー!
とキレるくらいの大きな悲鳴だったが、
その声から誰であるかを特定した者たちは、
一目散に部屋を飛び出し、悲鳴を上げた人物の元へ駆けつけた。


「「「「「「赤也!!!!」」」」」」


ほぼ同時に駆けつけた面子が、顔を合わせる。

幸村、真田、柳、ブン太、仁王…それに
なぜか跡部まで来たようだ。


「赤也、どうしたの?こんなところで」
「ゆきむら、部長…」

赤也を前にバチバチと火花を散らしていた他のメンバーを無視し、
幸村が一番に赤也に駆け寄った。

赤也はすっかり腰が抜けてしまっているらしく、
座り込んでしまっていた。

「こいつらに何かされた?」

震える体をぎゅっと抱き締め、他のメンバーを睨み付ける。
何もしてねーよ!と言おうとするも、
魔王様の目に睨まれ、思わず怯んでしまう立海レギュラーたち。
そんな中で、怖いもの知らずの跡部が
幸村の腕の中から赤也を奪い取った。

「何泣いてんだテメェは、アーン?」
「なっなな、泣いてないッスよ…っ」

目をごしごし擦りながら顔を隠す。
その姿が可愛くて、宥めようと頭を撫でてやると、
ぎゅっと抱き付いてきた。
最近、赤也は跡部になついている。
その光景に魔王様の容赦ない舌打ちが聞こえた。

「あーっ!跡部てめぇ、赤也に馴れ馴れしく
触ってんじゃねーよぃ!どけ!」
「まあまあブンちゃん、俺に任せんしゃい。
ほれ赤也、こっち来たら安心やけぇ」
「仁王に任せて赤也が無事に帰ってくる確率1%…」

ぎゃあぎゃあと言い争うメンバーの中から
真田が赤也を救出し、理由を聞き出そうとした。

「どうした赤也」
「真田ふくぶちょ…」

「あっ真田のやつ!抜け駆けはダメだろぃ!」
「まあとりあえず理由を聞こうよ。
赤也、さっきの悲鳴はどうしたの?」
「……や…それは、」

言いにくそうに視線を泳がせていた赤也だが、
意を決したように言った。

「高校生が、この合宿所に、幽霊が出るって…」
「へ?」
「そ、それで、さっきそこに…落武者のゆーれいがっ…いた」
「………」

赤也が指差した方向を見ても、何も居ない。
きっと何かを見間違えたんだろう。
それよりも、赤也は幽霊が苦手だったのか。
そんなことで怖がる赤也の可愛さに、
誰も口にはしないがかなり和んでいた。

――可愛い…(全員の心の声)

「ほっ、ほんとに居たんッスよ!!」

俺たちが信じていないと思ったのか、
赤也が必死に説明してくる。

「そっか、怖かったね赤也。
じゃあ今日は俺の部屋で一緒に寝ようね」
「え…」
「ちょっ!ダメだよぃ幸村くん!」
「そうじゃ、赤也は俺と寝るんじゃけぇ」
「赤也。俺と寝ると幽霊が出る確率が一番低い」
「嘘教えてんじゃねぇよ柳、アーン?
切原、俺様の部屋に来い。一晩中側に居てやる」
「貴様ら…!い、一緒に寝るなどたるんどるッ!!」

全員から部屋に誘われ、どうすればいいのか分からずに
言い争うメンバーたちを困った顔で赤也は見つめていた。

そのとき。

――ひた…ひた…

全員の動きがぴたりと止まった。
もう全員が寝静まっているはずの合宿所に、
足音が響き渡った。
それも、どんどん音が大きくなることから
こちらへ向かってきていることが分かる。
こっちの方向には、部屋やトイレなどないはずだから、
こんな時間に誰も来るはずがないのに。

「ゆっ…ゆゆゆゆゆ幽霊ッ…!」
「な、んなわけねーだろぃ」
「んなわけあるッスよ!さっきのやつだ!
ぜってーさっきの落武者っ…」

赤也はパニックになって、
ステップステップワンツーワンツーだとか
イナバウワーだとか謎の呪文を繰り返している。

足音はどんどん近くなり、廊下の突き当たりまで来ている。
赤也以外の全員が静かに廊下の突き当たりに来ている何かに
黙って神経を尖らせた。
そして―――…



「自分ら、何やってんの?」



「…………へ??」

全員がまぬけな声を出した。
突き当たりから出てきたのは…

「白石、さん」

きょとんとした顔で立っている白石だった。

ぽかーんとした顔で見つめていた赤也だったが、
幽霊ではなかったことと、怖い思いをしていたところに
大好きな白石が現れた安堵で
思わず走って白石に飛び付いた。

「白石さぁーん!」
「おっと。風呂入ってたら、切原クンの悲鳴聞こえたから
急いで出てきてん。大丈夫か?」

抱き付いてきた赤也をよろめくことなく受けとめ、抱き締める。

「さっき、落武者がいてっ…嘘じゃなくてっ…」
「そっか。そら怖いなぁ。
ほな切原クン、今日は俺の部屋で寝るか?」
「えっ…けど、迷惑じゃ」
「俺もな、幽霊怖いねん。やから、来てくれるか?」

優しく微笑みながら頭を撫でてくれる白石さんに、
嬉しくなってまたぎゅっと抱きついた。
白石さんはかっこよくて優しくて、大好きだ。
俺もこんな風になりたいって思う憧れの人。

「ほな、行こか切原クン」
「はいッス!」

さっきとはうって変わって嬉しそうに
白石に甘えながら行ってしまう赤也を、
一同は無言で見つめていた。

「…跡部、一時休戦だね」
「アーン?奇遇じゃねぇの、俺様も今言おうとしたことだ」

白石の背中を魔王の目と氷の目が
睨み付けている光景の恐ろしさに、
他のメンバーは大人しく自室へと帰っていくのだった。




◎おまけ

「へへッ♪白石さんも幽霊ダメなんすね!
実は俺もちょっとだけ苦手でっ」

一緒っすね!と、にこにこと嬉しそうに話す赤也を見て、
白石も微笑み返した。

(今んとこは…俺が一歩リードみたいやな)

「白石さん?」
「ん?なんでもあらへん。
ほな怖いから、一緒のベッドで寝よな」
「へへ、はいッス!」




終わり。



*******


さっそくアンケートに投票してくださった方がいて、
赤也総受けに票が入ってたので
参考にして書いてみました。

赤也総受けの白石寄りです。

てか新テニネタばっかですみません。
アニメ見てない方はなんのことか
分からないですよね…すみません(笑)

アニメの、幽霊怖がる赤也が可愛かったんで
つい出来心で書いた作品でした。
アンケート結果はこれからも参考にさせていただきます!
ありがとうございました♪♪

2012.03.19

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