お前は俺のものだ 「って言われたい!」名前がいきなりそんなことを言い出した。話に脈絡はないし、恐らくそういった少女漫画かなにかを読んだのだろう。 「ちょっと言ってみて」 「…は?」 「お前は俺のものだ、って」 「だ、誰が言うか」 「ちょっとで良いから」 さっきから「ちょっとちょっと」って、ちょっと言うってどうすれば良いんだよ。 「そんな恥ずかしいセリフ言えるか」 「別に恥ずかしくないよ」 「少なくとも俺は恥ずかしい」 「1回だけで良いからさー」この調子だと俺が言うまで満足しない気だろう。はあ、とため息を溢して何故か姿勢を正した俺の前には、今か今かと目をキラキラさせている名前。 「お、お前は俺のものだ」 「…」 「これで良いんだろ」 「なーんか違うんだよね」 「…もうやらない」 「そうだリアリティだ!」 なにが「リアリティだ!」だよバカバカしい。 「松野ー暇ー?」 名前が近くにいたマックスに声をかけた。正直、マックスが関わるとロクなことにならない気がする。 「僕忙しい」 「嘘つけ。ちょっと協力してよ」 「なにに?」 「半田に恥ずかしいセリフを言わせたい」 「え、そういう目的なのかよ!」 そんな言い方したらマックスは「楽しそうだね」…やっぱり、ニヤニヤしながら了承していた。 * 「…なるほど、じゃあ半田にその恥ずかしいセリフを自然に言わせれば良い、ってことか」 「さすが松野その通り!」 「任せてよ。僕演技には自信あるんだよね」 「期待してます」 「じゃあまずは…くっついてみようか」 そう言いながら名前の腰に手を回し始めた。「お、おい!」と思わず言ってしまいそうになったが、本気にしてると思われるのもかっこ悪いので我慢する。名前も少しは抵抗しろ、あのバカ! 「名前」 「松野、顔ちかい」 「名前で呼ばなきゃ」 「え」 「演技だから」 「う、え、…空介」 あのバカはなに雰囲気に流されて名前で呼んでんだよ! 「ついでにキスもしちゃう?」 「え、えええ!」 「ほら」 「ままま待って」 「半田に言わせたいんでしょ」 「そうだけど…」 「ほら」 いやこれはもう、かっこ悪いとか意地とかそういう場合じゃないマックス後で覚えとけよ…「おい!名前は俺の…」 「私は半田のものだから、だめ!!!」 戯れる 「おー、名字はどこかの誰かさんと違って男前だね」 「うるさい…」 (20100906) |