「未だにぬいぐるみと一緒に寝てるなんて、ださいな」


お兄ちゃんの部屋に入ったら開口一番にそう言われた。別にお兄ちゃんには関係ないと思ったらむかついたので、少し乱暴に扉を閉めた。「ドア壊れる、馬鹿力」「馬鹿力じゃない!!」「はいはい」お兄ちゃん、わたしの前でだけ余裕ある大人です みたいな態度をとる。


「どうしたんだよ、名前」


今日は特にその態度が気に入らなかった。気に入らなかったから、自分の部屋から持ってきたぬいぐるみを抱えて、これまた乱暴に兄のベッドにもぐりこんだ。「名前!?」ちょっとあったかい。もぞもぞ動いていたら、お兄ちゃんももぐってきたので向かい合う形になる。


「名前」「…」「名前、怖い夢でも見たんだろ?」違うよ、お兄ちゃん。


お兄ちゃんはサッカー部だった。入部してからしばらくたったお兄ちゃんは「くすぶってる」そんな感じだったけど、最近はすごく頑張っていたし加えて楽しそうだった。でもお兄ちゃんが頑張る分、傷は1つ、また1つと増えていく。傷は男の勲章 なんてよく言ったものだ。実際見てる側は心配でしょうがない。それでも傷を1つ、また1つと乗り越えて練習に向かうお兄ちゃんはほんとに楽しそうで、かっこよくて、わたしはいつも何も言えなかった。


明日はサッカーの試合。練習で傷付く何倍も傷付くことを知っている。勿論、サッカーの試合だし命に関わる…とは思っていないけど、それでも自分の部屋のベッドの中で考えてしまえば、いとも簡単にわたしの気持ちは暗闇に負けそうになった。


怖い。心配。


「しあい、がんばって…」ベッドに深く深くもぐってそんなことを言った。サッカーをしている時のお兄ちゃんの顔を見たら、行かないで なんて言えない。


「名前、心配かけてごめんな」
「あのさ。サッカー、楽しい?」
「楽しいよ」


その声がかっこよくて、やっぱりむかついたから足を蹴った。「いって!」「ざまあみろ」そう言いながら、お兄ちゃんからもらったぬいぐるみに力を込めた。




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20110227


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