「やっぱり名前、無理してたんだな」


「う、ごめ」喉が痛くて上手く喋れないわたし。見上げれば白い天井。鼻孔をくすぐる独特な匂い。外からは部活に勤しむ人の声。トナリには半田。うっすらと心配そうな表情を浮かべてるけど、少し怒っている風だった。


「まあ昨日の電話で気付かなかった俺も俺だけどさ」


自分のせいだと拗ねたような口調で口を尖らせてそっぽを向く半田に思わず笑ってしまった。「笑うな、病人」「へへ」


保健の先生は「ちょこっと出てくるから半田くん、お願いね〜」なんてなんとも無責任に出ていってしまったため、半田とふたりきりの状態に。…その状態は良いとしても半田は部活があるので、わたしのせいで部活に出られないという情況にソワソワしてしまい、ゆっくり休むどころじゃない。


「あの、もう良いからさ、部活…」
「ああ今日は部活休んだ」


「え!!!」と叫びながらベッドから上半身を起こすと、苦しくなってゴホゴホと咳を数回繰り返してしまい、結局半田が背中をさすってくれるまで咳は止まらなかった。「ほら名前無理するから、送る」「悪いって。練習しなよ…」もう最悪。そういう事態だけは絶対に避けたかったのに。


「そんな顔すんなよ」
「レギュラー落ちるよ」
「そんな風に見える?」
「うん」
「酷いな」


ばか。口の中で呟いて横になった。いつもより優しい目がずるい。熱とは別のドキドキが体を巡った気がした。


「なにかしてほしいこととか、ある?」
「ない」
「即答かよ。あ、少し寝ろよ?」
「ん…じゃあ」
「なに?」
「わたしが起きるまで傍にいて?」


熱で浮かされているせいか、いつもより饒舌になった自分が恥ずかしい。「いや送るって言ったし、傍にいるけど」「あっそ」せっかくお願いしたのに余計恥ずかしくなっただけだ。ばか。


「ごめんって。なら手握ってる」ぎゅっと握られた手は、わたしのそれより冷たくて思いの外気持ちが良かった。今日の半田はやっぱり優しい。もし半田が体調を崩したら、わたしもいつもよりほんの少しだけ優しくなろう。半田の手を握り返して「おやすみなさい」と呟いた。




握りしめる





20110225


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