夕暮れが近いのか、空がうっすらとオレンジやら灰色やらを混ぜたような、なんとも言えない色をしていた。


そんな夕暮れの中、わたしは河川敷に座って半田を見ているだけ。周りに人はいなくて、少し前まで元気に遊んでいた子供達も帰る時間なのだろう、帰宅途中らしかった。つまるところ、河川敷にいるのはわたしと半田だけ。


白と黒のボールが小気味よい音をたてながら、彼の膝の上で上下していた。その光景と風景が混ざり合って、何故だか無性に胸がきゅうと締め付けられるように感じた。空が妙に眩しく輝いていて、思わず細めた目からは涙が落ちそうな気さえする。


「はんだ」
「、名前」
「…」
「どうしたんだよ?」


膝の上で上下していたボールを高く上げると、振り返った半田の手には先程まで動いていたものが大人しく収まっていた。


「はんだ」
「ん?」
「はんだは、悔しくない?」
「…」
「世界、」


行けなくて、と続けたかったのに引っ込んでしまった言葉は、どうやらわたしの口から出てくる気がないらしい。代わりに嗚咽が口からこぼれ落ちた。


「私は、悔しいよ…」
「名前」
「…っ、」
「名前は知ってるか?」


空を仰ぎ見た半田が、もう一度私の顔を真っ直ぐに見つめて、言った。その目がいつもの半田だとは思えない程に澄んでいて、どこまでも真っ直ぐだった。


「世界でするのも、この河川敷でするのも、全部同じサッカーなんだぜ」




輝く



「…なんて、俺も円堂病かも」そう言って笑った顔が何よりも、輝いて見えた。





20110215


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