松野が可愛い?ありえないありえないありえないありえない

「ありえない!」
「え?」
「どこが可愛いの、帽子被ってるだけじゃん!可愛いのはあの帽子だよ!」
「そんなことないよ、松野くんって結構人気なんだよ」
「ありえない!」
「そればっかり」
「だって生意気だよあいつ。すごい意地悪い顔でニヤって笑うし、ちょっと器用だからって調子乗ってるし、人の弱みに付け込んだりするし、それに…」
「それに?」
「それに………、!」
「それに?何、名前」
「あ、あー、えーと、何の話だっけ?」
「僕の話でしょ」

友達の代わりに私の前にいたのは不自然すぎる程の満面の笑みを浮かべた松野空介、その人だった。

「あ、じゃあ、松野くん、また…ね!」

逃げなきゃ!

私の脳が危険を察知して信号を送ったため、全力で目の前のやつから逃げようとした…ものの

「何してんの?」

私の顔の横つまりは壁に片手をついて、もう片方の手は私の右手をガッチリと押さえている。

あああ、後ろが壁だなんて私は本当についてない。

「どいてよ」
「うーん、嫌だ」

ほら、見てよ。こいつのどこが可愛いの!…あ、忘れてたあの裏切り者め!友達なのに私を松野に売ったな!!

「ねえ」

ケーキぐらい奢ってもらわなきゃ…

「ねえ、何考えてんのー」
「あ、別に何も、」
「他の男のことだったら噛むよ」
「か、噛む…」
「まあ、嘘だけどね」
「なら良いけど…」
「噛む必要ないし」
「う、うん」
「だって名前の頭の中は僕でいっぱいでしょ?」

首を傾げた松野に面食らってしまう。その瞬間にキスされてしまった。頭の中は一瞬にしてこいつで埋め尽くされた。


否、元から
可愛くない可愛くない




(20100417)

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