「ねえ鬼道さん、愛ってなんですか?」
「は、」
「愛してる、ってどういう意味なんでしょう」
「どうした?」

本を読んでいた鬼道さんが顔を上げてこちらに訝しげな視線を送ってきた。

いや、正直に言うと目は見えていないけどきっとそんな目をしているんだと思う。

「愛のかたちは、どんなですか?」
「形なんてないだろう」
「だったら愛してるってどんなものか誰にも分からないじゃないですか…私は、鬼道さんのこと愛してます」
「俺も名前を愛している…これじゃ駄目なのか?」
「だって私の愛と鬼道さんの愛がイコールだなんて、どうやって分かるんですか」
「、はあ」

鬼道さんは遂に本を閉じた。

呆れられたかな、

…そう思っていたら、ゴーグルを上にずらした鬼道さんの顔が、赤い赤い目が、少しずつ近付いてきたのだった。



愛のかたちなんて
曖昧なものである



「へへ、」
「お前は…キスぐらい普通にねだれ」




(20100620)

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