男なのに嫉妬してほしい、なんて女々しいと言われてしまうかもしれない。

だがしかし聞いてくれ男だって不安になるさ!好きなのは俺だけなんじゃないかなーとか不安になるさ!むしろそういうことに女だとか男だとか関係ないんだ!ってことを、俺は主張したい。

「…だから?」
「だから、名前にヤキモチを妬かせようってことに決まってるだろ!」
「え、どうしてそうなったの?」
「なんだよー!マックス聞いてなかったのかよ」
「聞いてた、というか…聞こえたよ。でもなんでそうなったのかイマイチ分かんないなー」
「不安だからだよ!」
「じゃあ、俺のこと愛してる?とか聞けば良いじゃん」
「いや、まあ、うん、そうなんだけどさ…」
「要するに。妬いてほしいんでしょ?」
「、う」
「名字が妬いてる姿が見たいんでしょ?」
「…」
「気持ち悪ーい」
「気持ち悪いとか言うな!」
「まあ、でも、名字もあんな感じだし、気持ちは分からないでもないけど。…あ、気持ちは悪いけど」
「何度も言うな!!」


名前は俺の彼女なわけだけど如何せん、冷たい。とても、冷たい。

話してもふーん、と一蹴されることなんてしょっちゅう。デートに誘えばめんどくさい、と一言。この前なんて付き合った記念日を忘れていた。

「半田、女子みたい」
「うるさい」

とにかく好き、と言ってくれないまでもちゃんと俺のこと好きなんだな、って実感したい。

「というわけで!」
「どういったわけ?」
「マックス、協力してくれ」
「はあ…」
「頼む!」
「アイス奢りね」
「分かった分かった」
「箱で、だから」
「そこは、ハーゲンダッツにしておけよ」

そして始まった作戦、マックスにも協力してもらって俺は女子と話してみるよう努めた。なるべく、名前の前で。


作戦を開始した数日後。


休み時間に突入した瞬間に名前がツカツカと近寄ってきた。

「ちょっと半田」
「何?」

名前が少し不機嫌な声音で話しかけてくるものだから俺の心は、期待に揺れる。

「来て」
「え?」
「良いから、来て」

ぐいっ、と腕を引っ張られた俺は少しよろけながらも名前に付いて行った。

もしかしてこれから

何で私がいるのに他の女子と話すのよ!半田の馬鹿!…でも…大好き。

みたいな名前が見れるかもしれない!なんて一度考えてしまっては俺の頬は緩んでしまい名前に見られる前に慌てて手で隠した。

着いたのは教室からは少しだけ離れた所にある空き教室。

「名前、どうしたんだよ?」

頬が緩まないように精一杯気合いを入れて尋ねたら名前が振り返って向かい合う形となった。

「半田のくせに、半田のくせに、私というものがいながら…」
「…」

これは良い流れじゃないか!俺の数日間の作戦に見合う言葉を名前が言ってくれるんじゃないかと思い始めた俺の心臓は急にドクドクと音をたてた。もしかしたら顔も赤いかもしれない。



「松野とばっかりいちゃいちゃすんな!バアアアアアアアアアアアアアアアカ!!」
「えええええ」



そっち!?
まあ、可愛いからオッケー



結局、箱でアイスを二つ買わされた。御礼用と謝罪用、に。




(20100416)

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