手塚くんがかっこいいのは彼女の私から見ても、分かる。彼女になる前からずっと分かっていたけれど。 なんてそんなことを考えて今抱えている問題から目をそらそうとしているわたし。目の前には少し不器用に包まれた箱と、綺麗に包装された箱。


バレンタインデーという行事を利用して手塚くんに気持ちを伝える女の子…たち。その気持ちを無下にできない手塚くん。でも甘いものがあまり得意ではない手塚くん。それを踏まえて、彼女のわたしはどうすべきか。


勿論、チョコレートは甘さ控え目なものを用意してはいるが、それはきっと他の女の子たちも同じなのだろう。渡さない という選択肢も浮かんだけど、やっぱりどうしても手塚くんに好きをプレゼントしたいと思った。


取り敢えずは自分で手作りしてみたけれど、もし手塚くんの口に合わなかったら…なんて妙に不安になって市販のチョコレートも買った。手作りは勿論気持ちがこもるけど、チョコレートを買う時に手塚くんのことを考えながら買うのもとても楽しかった。付き合って初めてのバレンタインデー。成功させたい。あともう一つだけ選択肢を用意して、バレンタインデーを迎えることになった。





その日は学校中が色めきたっていて女の子はキラキラ、男の子はソワソワしていた。私はどちらかというとソワソワの人。失敗しないかと気が気ではなかった。


いつも通り手塚くんの部活が終わるまで待って、そこでプレゼントをする計画をたてた。いつも通りのつもりだったのに心臓はバクバクとうるさいし、手塚くんには具合が悪いのか? と心配されてしまった。


帰り道はすっかり暗かった。人もポツポツといるぐらい。わたしとしてはかなり助かる。これから自分の顔が真っ赤になるのが安易に想像できる。あるいはもう…意識すると頬が熱くなっていくのが分かった。


「手塚くん、今日はバレンタインデーですね」


他愛もないハナシをしていたのに変なタイミングで切り出してしまった。少し後悔はしたけど、時間は戻ってくれないみたい。


「そうだな」
「あのね、わたし手塚くんにプレゼントがあるの」


「そうか」と言った手塚くんが心なしか優しい眼差しを向けてくれたように見えた。


「それで、そのプレゼントは手塚くんに好きなものを選んでほしいんだけど…いち、私が作ったチョコレート。に、お店で買ったチョコレート。さん、」
「?」
「さ、さん…私からのキス」
「な」
「どれがいい?」




「       …3」

その時の手塚くんの赤に染まった顔が世界で一番、愛しかった。



赤にを囁く日

「…1と2も良いか」
「はい」




20110215
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