私とオサナナジミは、中学生にあがる前、しょっちゅう一緒に遊んでいた。お互いの家を行き来したり、お泊まりもした、正直どっちが本当の家かなんてことも気にしたことがないぐらい。


でも中学生になったらオサナナジミが部活を始めた。テニス部。しかもとても有名で、強いんだって友達に聞いた。毎日毎朝練習していた。オサナナジミは全然辛そうじゃなくて、楽しそうだった。キラキラしていた。オサナナジミが遠い存在になったように感じた私は少し辛かった。


最初はテニスにオサナナジミを取られたと思った。あのキラキラが私以外に向けられているのが少し寂しかった。気付いたらナマエじゃなくてミョウジで呼んでいた。それがまた寂しかったけど、やっぱりオサナナジミはキラキラしていた。


ファンクラブというものがあるらしい。オサナナジミを黄色い声が囲んでいた。私も少し加わりたかった。前みたいに話をしたかったみたい。胸が少し痛くて、空の青がキラキラしていた。


オサナナジミとオサナナジミだってことを知らない友達が「話しかけてみなよ!」と言ってくれた。悩んだフリをしたけど本当はずっと話したかった。またキラキラを私に向けて欲しかった。


「越前くん」


オサナナジミは、教室の自分の席に座っていた。久しぶりにオサナナジミを呼んだら自分でも驚く程に心臓がドクドクと音をたてていた。声が喉に張り付いたような感じがして、変に緊張したのが分かった。


「なに」


また驚いた。
久しぶりに私に向けられたオサナナジミの顔は、ちっともキラキラではなかった。


「なんでもないです。ごめんなさい」


胸の奥に何かがつっかかったみたいな。心臓のドクドクに冷や汗が出る。黒くてモヤモヤした気持ちになった。泣きそう、かもしれない。「待って」耐えきれなくて、その場から逃げ出そうとした私を咎めるような声で呼び止めたオサナナジミ。


「その呼び方似合わない。その顔も似合わない。だからヤメテくんない?」
「やめたら、どうなるの?」
「俺にも分からない」
「なにそれ…」
「でもさ、俺も成長してるんだよね」


昔よくオサナナジミと背比べをした。柱に線をたくさんたくさんひいて、少しの成長を競いあった。


「わたしもしてるよ」
「どうかな」
「…」
「まだまだだね」


あ、今少しキラキラした。


「俺、毎日牛乳飲んでるし」
「ふふ、関係ないよ」


私も、たぶんキラキラしてる。


「今日、部活見に行って良い?…リョーマ」
「好きにしたら」



















project/君のとなり

20110214
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