らくん?」「…ねえ、なまえ」「え、どうしたの?」そろそろ名前で呼んでくれない? っていきなりそう言われた。確かに私、その、いわゆる奴良くんとお付き合いするようになってからもずーっと、「ぬらくん」て呼んでいた。カナちゃんみたいに「リクオくん」って呼んでみたい気持ちがなかったと言えば嘘になる。でもそれがなかなか勇気がいることで、恥ずかしくてしょうがなかった私は、いつもなんとなく話をそらしていた。


しくない、というのかな。今日のリクオくんはいつもと少し違う気がした。「なまえに奴良くんって言われるの好きだけどさ、」「な、なら」「でも清継くんは清継くんって呼ぶよね?」むすって効果音が付きそうな顔をする奴良くん。正直すごく可愛くて、思わず笑ってしまった。「なに?」「ぬらくん、可愛い」「…」「…あの、どうしたの?」急に喋らなくなったかと思ったら急に手を握ってきて、これまた急に顔を近付けるものだから、私の心臓がドキリと跳ねた。片手で足りる程の数しかしたことはないけれど、これはいわゆるキスをするって、そういうこと、なのだろう。どうしようどうしたら。あれ、キスの時って目を瞑るんだっけ?「なまえ」


とした声で奴良くんが私に言った。「なまえ、名前で、呼んで?」


らくらしてきた、どうしよう。奴良くんいつもと表情の感じも違う。なんというか、かっこいい。こんなかっこいい人が近くにいて、こんな風に御願いされて、断れる女の子なんているのかな?頭がぐるぐると動いている割に、思考があまり働いていない。でも名前を呼ぶ恥ずかしさよりも、もっと上の恥ずかしさが私を駆け巡ったということだけは分かり、口を開いた。「リクオ、くん」「はい、よくできました」瞬間奴良くんの顔がスッと離れてその顔には満足そうな微笑みが飾られていた。「これからも、そう呼んでよね?」いつもの笑顔なんだけど、さっきまでの表情が忘れられなくて未だにドキドキしたままの心臓。


っぽい。そんなカオ見たことないよ、リクオ、くん。わたしはまたそのカオ見たさに「ぬらくん」と呼んでしまいそう。





20101119

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