「壁山くーん!」 「みょうじ先輩!」 白いコンビニの袋を提げた先輩は俺に向かって右手をちぎれんばかりに振っている。 「また新商品、出てたよー」 「本当っすか!」 「思わずたくさん買っちゃったよ」 そう言いながらみょうじ先輩は俺の席まで近寄ってきて、前のあいている席に座った。やはり先輩と言うこともあって少しばかり注目を集めるものの、これが初めてではないと知るクラスメイトは特に気にしている様子もなかった。それより俺は先輩の袋に入っている物に興味津々だった。 「何を買ったんすか?」 「えっとー…チョコレートでしょ、ポテトチップスでしょ、ゼリーに、プリンに、菓子パン、飲み物も!」 「すごいっすね!!」 しかも全部2つずつ。 「重かったんじゃないっすか?」 「うーん重かったけど…食べ物のためなら全然平気!」 先輩は甘い物などを、たくさん食べる割には細い方だと思う。 「本当はアイスも欲しかったんだけど、溶けちゃうからねー」 「そうっすね、アイス食べたかったっす」 「じゃあアイスは、また今度食べよう!」 ここに行こうあれを食べよう、そうやってまた次の約束が増える。 「それじゃあ」 「はいっす!」 声を合わせて、 「いただきまーす」 俺は食べ物が好きと言うよりも食べることが大好きだった。満腹になると、とても幸せだった。…でも先輩と一緒に色んな物を食べていくうちに「味わう」てことを覚えたし、もっと美味しい物が食べたい、とも思うようになった。食べ物が大好きになった。それはきっと、 目の前の笑顔の所為 今はまだこの関係で満足なんだ。 (20100824) |