なりたいものがない。
したいことがない。
将来とか考えたこともない。
未来が、怖い。



「この年でやりたい事しっかり見えてる人なんているの?」

「閻魔くん私達もう高校三年生だよ。見えてないと駄目じゃないかな」

「つい最近まで高校二年生だったのにね」



机を挟んで向かい側に座った閻魔くんは携帯から目を離さずに私に返答する。私は閻魔くんがさっき購買で買ってきてくれたチョコチップクッキーを食べながら、閻魔くんの整った綺麗な顔を観察していた。俺にもちょーだい、と閻魔くんが口を開ける。一枚銜えさせると、閻魔くんはちらりとこっちを見てまた携帯に視線を戻した。



「進路悩んでるの?」

「うぅーん…まぁそんなところ…?」

「まだ時間あるのに」



名字さん真面目だよね。携帯をポケットに閉まって閻魔くんは一枚、クッキーを口に運んだ。うーんと暫く悩んだあとに、ぺろり、親指を舐めて、私に言った。



「俺は来年も再来年も、名字さんの頭撫でて名字さんとぎゅーしてちゅーできたら何だっていいけどね」



にっこり笑う閻魔くんは怖いくらい綺麗だった。顔が熱くなるのを感じて、隠すように下を向いた私の頭を撫でる彼はきっと、酷く優しく笑っているんだろう。



僕と君と反転する世界








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