キラキラしたカラフルなメール。知らない番号の着信履歴。騒音まみれの町のなか。ありったけの不幸と幸福を鞄に詰めて、欲しかったワンピースは紙袋の中に小さく収まっていた。



「…買うの?」

「……や…来月買う…」

「めちゃめちゃ釘付けだけど」

「っせーな、閻魔みたいに高収入じゃないんだよこっちは!薄給でやり繰りしてんの!」

「買ってあげよっか」

「閻魔大好きぃ!!」

「現金だね…」



頼りない背中に続いて店内に入ればまさに楽園のような光景が広がっていて、どこもかしこもどれもこれも、可愛いで溢れかえっていた。きゃっきゃと楽しそうに洋服を選ぶ女の子と、それを素敵な笑顔で見つめる店員さん。とても商業的な光景には思えなくて思わず笑みが漏れた。



「にやけてるー気持ち悪ー」

「死ね」

「死なないし」



どれ欲しいんだっけーと店内を歩き回る閻魔を見失わない様に付いて行く。

途中女の子たちが、あの人かっこいい、だとか、後ろの人彼女かなあ、とか、そんなやり取りをしているのが聞こえた(格好いいか?あれ)。



「そういえば名前さ」

「ん?」

「今日誕生日だね」

「あ、…あー…忙しくて忘れてました」

「だと思った」


ショーウィンドーに飾られていたポンチョが丁寧に紙袋に入れられていく。閻魔はそれを黙って眺めていた。彼女さんにプレゼントですか?と笑う店員さんに、はい、と笑ったこいつは単純な私を喜ばせる術を熟知しているようだ。顔が少し、熱い。そんな私に反して閻魔は何事も無かったかのように私の左手を握って歩き出す。



「いつから彼女?」

「…今日から?」

「………」

「誕生日おめでと」

「有難う」



今日はいつもより少し、街がキラキラして見えた。




秋の下








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