彼女の左腕にそれを見つけたのは数週間前の事。羽織ったパーカーの袖口から覗くそれは俺の腑甲斐なさを主張していた。触れようと手を伸ばせば、滲んだ彼女の目が俺を捉えて睨み付ける。触らないで、と、小さく溢した彼女。引っ込めた俺の右手は宙を切る。ごめんねごめんねと涙を溢した彼女が可愛くて。殺してやりたい。綺麗な死顔を俺の精液でぐしゃぐしゃにして、ああ、俺は酷く歪んでいるようだ。首を締めれば簡単に死んでしまう弱い彼女を、思い切り抱き締めて、苦しいともがくのは聞こえない振りをした。



「ねぇ、俺が切ってあげる」



愛してるって言う変わりに、目に見える形で君に刻みたいんだ。
涙を残したままの目を少し見開いた後に彼女は少しだけ口角を上げた。



「痛くしてね」



おかしいのはお互い様だ。







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