「もう貴女の為に生きていく事ができない」



妹子さんが男性にしては長い睫毛を伏せて言う。夜の自宅。縁側に座ったあなたと私。昼程暑くはないが蒸し暑い夏の日。いつもきらきらと笑顔を振りまくその顔は酷く歪んでいて、とても、きれい。



「僕はもう、貴女の気持ちに、応えられません」



妹子さんの汗ばんだ頬に触れようと手を伸ばすと、妹子さんは栗色の瞳に私を捕えて、私の手を振り払った。怯えたように声を震わせて、触らないで下さいと付け足す。その声に、表情に、不謹慎ながら欲情する。あぁ、なんてかわいいのかしら!



「ねぇ、妹子さん、愛してるわ」

「……名前、さん…もう、僕は…ッ!!」



妹子さんが何かを言い終わる前に口を塞ぐ。逃げようとする妹子さんの後頭部を両手で押さえて無理矢理舌をねじ込んだら、乱暴にも舌を軽く噛まれてしまって、じわり、口の中に鉄の味が広がる。妹子さんは泣きだしそうな目で私を睨み付けた。



「ねぇ妹子さん、私の為に生きれないのなら、私の為に死んでくれないかしら」



妹子さんが最後に小さく呟いた言葉は聞かなかったことにしてあげるね。太子さんと同じナイフで殺すのは癪だから、特別に私があなたの舌を噛み切ってあげる。あなたが死んだらその死体から肉を剥いで、私はその肉で作った料理を残らず食べて、最後は首でも吊って、死ぬことにするよ。







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