顔を見るのが嫌になった。声も聞きたくなくなった。彼の全てが、嫌いになった。彼は私の支えで、生き甲斐で、全部だった。私は彼を心から愛しいと思っていたし、彼の為なら死んでもいいとまで思う程。それなのに今の私は彼の全てを否定している。



「ねぇ、好きだよ」

「…私は嫌い」

「そっか」



ふふと笑うだけで、それ以上の言葉は紡がない。張りつけたみたいな笑顔を絶やさない。それが酷く苛ついた。

もうあなたはいらないの。

噛み付くようなキスをされて、腕を引かれ彼の薄い胸板に顔から飛び込んだ。彼は私の汚い傷だらけの腕に指を這わせて、私の耳元で、その低く優しい声を震わせながら囁いた。



「死なないで」



お前が生きている事が何よりの幸福だと言う。彼に抱きつくフリをして、背中に思いっきり爪を立てた。












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