夜遅くにインターホンが鳴ったもんだから、眠りについていた私はその音に叩き起こされて不機嫌プラス、こんな時間にまさか不審者じゃないかという不安と恐怖心を抱えながら玄関へ向かった。インターホンの嵐は止まない。いい加減近所迷惑だろう。苦情がきたらどうしてくれるんだ。私は穏便に暮らしたいのに。チェーンを付けたまま少し開けたドアの向こう側には頼りなさそうな顔をした元、クラスメイトの閻魔が立ってた。何してんの、と一旦ドアを閉めチェーンを外して、閻魔を中に招き入れた(もう11月だ、流石の閻魔でも風邪、ひいてしまう)。閻魔の綺麗な黒髪が大分乱れていた。俯いたまま何も言わないから、とりあえず私はベッドに腰掛ける。どさり。肩に加わった力と重量に耐えられずに私はベッドに倒れこんだ。押し倒された、というのか。その状況。閻魔の目は心なしか潤んでいた。
「夜這い?」
「…どうだろう」
「あんさ、重いからどいて」
「嫌」
吐き捨てるように言って私のパジャマを脱がしにかかる閻魔。何やってんだこいつ。
「ちょ、マジ、やめ、」
「処女?」
「しんでしまえ、今すぐに」
話聞いたげるからどいて、そう付け足したら意外にもあっさり閻魔は私の上から退いた。それから絞りだすようにぽつりぽつりと、仕事に身が入らず失敗ばかりして上司に迷惑をかけてしまったこと、何もかも面倒になってきたことを話始めた。嗚咽混じりにゆっくり。こんな時に頼れるのなんて君くらいしかいなかったから、その言葉に少しどきりとしたのは秘密にしておく。閻魔はごめんね、と言ってからうちを後にした。静かになった部屋。少し閻魔の匂いが残る。もう夜があけそうだ。私はため息を吐いてから再び眠りについた。
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