目の前のふざけた帽子、ふざけた口調、ふざけた顔の人は、何やら文字が沢山書かれた紙を眺めて、そして私を厭らしい目付きで舐めまわすように見てから言った。



「生前引きこもりって君(笑)」



死ねこの野郎。



「ちょ、大王、多分本人も気にしてると思いますし」

「だって鬼男くん、華の女子高生が引きこもりって。引きこもりなのに事故死って」

「下界には色々あるんですよ。あんまりその辺には触れないでさっさと審判告げてください」



すいません、全部聞こえてます。なんて口に出せるわけもなく、なんか惨めになってしまって俯いた。ちょっと泣きそうですよ、って、鬼男と呼ばれた人(?)が言う。ふざけた帽子の人は、名字名前ちゃーん?って私に呼び掛ける(なんで名前知ってるの)。ああもう、だから部屋以外の場所は嫌いなのに。自分から傷付きに行くほど私はバカじゃない。どうやったら自分を守れるか知っている。その結果が引きこもりだっただけ。だって人と会わなきゃ、酷い事も言われないで済むじゃない。自分を正当化する文句ばかりが出てくる。闘う事もしなかった私だ。泣くつもりなんて無かったのに結局涙があふれてしまって、両手で顔を覆った。ふざけた帽子の人と鬼男と呼ばれた人が話す声が聞こえる。



「ねぇ名前ちゃん」



投げかけられたその声はとても優しかった。顔をあげればふざけた帽子の人が綺麗な笑顔を浮かべている。なんだろう、この人。



「君にお呪いをしてあげる」

「…おまじない?」

「大王?」

「君が生まれ変わったら、色んな素敵な事を見落とさないように、今まで見れなかった素敵な事に出会えるようにお呪いをしてあげるね」



立ちあがって私の傍まで来た帽子の人は、私の手をぎゅうと握った。冷たい手。だけど、何故か安心する。



「えー…っとー……どさんこラーメンパワー!」

「大王多分それ違います」



不思議な人。ふざけた人。失礼な人。冷たい人。だけどとてもあたたかいひと。神様に出会った日のことでした。




下手糞でも体温がある





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