命を奪う、ということは容易い事。だって超簡単に死ぬんだぜ、笑える。他人をせせら笑って生きている俺を、悲しいって言う。俺はお前が悲しいよ、名前。
「西はさぁ、」
「何だよ」
「西は、死ぬの怖くないの?」
あまりに真っ直ぐな目が嫌いだった。全て見透かされているみたいで。
「私は怖いよ」
子供みたいにぼろぼろ涙を溢しながら、名前は言った。
「死ぬの、やだよ。私が生きて学んできた事も見てきた物も、全部無くなっちゃうんだよ。怖いよ、ねえ、西」
「名前」
「西が死んじゃうのもやなんだよ、さっさと100点取ってもう全部忘れちゃおうよ、もう怖い思いも寂しい思いもしたくないんだよ」
抱きしめられたら、どんなによかっただろうか。名前の華奢な体を抱きしめて、守ッてやるって言えたらどんなによかっただろうか。そんな事言う資格も無ければ、彼女を守れる自信もない。実際、俺は一回、ミッションで死んで彼女を置き去りにしている。あの時の名前の気持ちは分からないけれど、寂しかったと語る彼女は、ママが死んだ時の、俺のようだった。何もない。喪失感。孤独。恐怖。だけど名前は、あまりに綺麗だった。俺は、あまりに汚れていた。なんて、嫌な世界だろう。
「いつ死んでもおかしくないんだからさあ、今は精一杯生きてよ」
名前が泣きながらそんな事言うから、また自分が惨めになった。
あの日をフラッシュバックなんかしたりしてないで