あのね井浦くん。私井浦くんの事ずっと好きなんだよ。中学校一緒だったんだけど覚えてないかなぁ。覚えてないよね、私地味だったし。だったっていうか今も地味なんだけどさ。あ、てゆうか覚えてない方が嬉しいな、私お化粧とかもしてなかったし今よりもっと見栄え悪かったしあとちょっと太ってたから寧ろ忘れて欲しいって言うか。


ていうか。



「名字さんの事が好きです」



なんですかこれ。


お昼休みに同じクラスの堀さんに(にやけ顔で)井浦が屋上で待ってるって、って言われたから内心ドキドキしながら来てみたら、告白?されてそれで井浦くんの事は中学生の事からすきだったし今も好きだし断る理由もないんだけど、なにこれドッキリ?



「いやいや落ちつけよ私」

「え?」

「あ、いや、ごめんね、こっちの話」



井浦くんは困惑したような照れたような不安そうな、そんな複雑な顔をしてこっちを窺っている。ああ、どうしよう困らせてしまった。いや私も困ってるんだよ。だってもう5年間も井浦くんに片想いしてて、井浦くんが彼女出来たって聞いた時もう死のうとか思ってたレベルなんだよ。別れたって聞いた時不謹慎だしとても失礼だけど心底嬉しかったよ。ごめんね、でも井浦くんの事が好きなんだよ。なんて考えていたら随分と長い間沈黙していたらしい。井浦くんは不安そうに私の名前を呼んだ。



「あ、の…断ってくれても全然いいから!元々駄目元っていうか…いやオッケーだったらそれに越したことは無いんだけど名字さん可愛いしモテるだろうし彼氏いてもおかしくないもんね急にごめんね本当!」



捲し立てるように一気に言い切って、井浦くんは困ったように笑った。なんだよ駄目元って。私だって井浦くんの事好きだよ好き過ぎて死にたくなる日もあったよ。



「てゆうか私の方が井浦くんの事好きだし!!」

「…え!?」

「井浦くんの事なんか大好きだし!!断るわけないじゃん馬鹿!」

「ば、…え、本当!?」



こんな事で嘘なんて言う訳ないじゃんもう井浦くんなんて知らない!!怒鳴るだけ怒鳴って教室に戻ろうと鉄製の重たい扉に右手を掛けた。何だか頭が一杯だ。泣きそうになる。そんなに井浦くんの事好きなのかな、なんか悔しいな。なんてぐるぐる考えて顔が熱くなる。扉を開けようと力を込めた時、後ろから左腕を引かれて阻止された。



「返事、ちゃんと聞かせて」



振り返ると井浦くんが真剣な顔でそう言うから、もう何も考えられなくて、勢いよく井浦くんに飛びついた。




どちらで踊りたい?





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