「…ねぇ」



泣きそうな、悲しそうな顔で私の右腕を痛いくらいに握る閻魔の声が、とても遠くから聞こえた気がした。彼は目の前にいるのに、なんでだろうなぁ。あっちこっち巡る思考はいつまで経ってもまとまらない。あぁだから、考えるって嫌いなのに。左腕から流れる血が重力に従ってフローリングの床に落ちる。閻魔、腕、痛いよ。



「閻魔、痛い」

「黙って」

「…」

「…名前」

「…」

「なんで一人で抱え込むの」

「…」

「なんで自分を傷付けるの」



ぽろぽろ、閻魔の綺麗な目から水滴が落ちる。
だってね、八つ当たりなんて格好悪くて。私の事に巻き込む訳にも、いかないじゃない。話したところで分かってもらえるわけもない。何処迄も子供みたいな考えを、誰が認めてくれるって言うの?ねぇ、どうして、泣くの。



「辛かったら止めていいよ」



全部放棄していいよ俺が責任取るよ名前が生きていてくれるなら構わないよだから、もう、死にたいだなんて言わないで。

そう言い切って、閻魔は私を抱き寄せた。血付いちゃうかな、小さく震えている体を、力一杯抱き締め返す。ごめん、ごめんなさい。聞こえたかはわからないけれど、背中に回る腕が少しだけ強くなった。



君の呼吸が吐き出した弱さも全部まとめて僕が愛してあげるね。







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