「………あの、鬼男くん…」

「大王気持ち悪い蒸発しろ」

「誰か俺に優しくしてお願い」



心が折れそう!と嘆く閻魔先輩にゴミを見るような視線を浴びせるクラスメイトの鬼男くんとそれを見る私。なんてシュール。
帰り支度をしていた私達前に、セーラー服姿の閻魔先輩が現れたのはつい15分前の事。それからセーラー服を勧められーの、鬼男くんと閻魔先輩の言い合いに巻き込まれーの、閻魔先輩が制裁されーのである。何だか怒涛の15分だった気がする。因みに閻魔先輩を制裁する鬼男くんは見たこと無いくらい恐ろしい顔をしていた(さながら般若のようだった)。
わざとらしい泣き真似をする閻魔先輩(もうセーラー服ではなく普通の制服に着替えていた)を一瞥して鬼男くんに視線を戻すと、鬼男くんは深いため息を吐いて首の後ろ辺りを掻いた。



「てゆうかあんた何しに来たんだよ」

「太子がさぁー先に帰っちゃったんだよね、なんか用事とかで。俺は彼女もしくは好きな人じゃないかと睨んでるんだけどさ!因みに太子の好きな人は他校生らしいよー。何ていうの、美人系の子。俺は可愛い系の年下後輩女子が好きだけどねー。あ、勿論セーラー服の似合う子!えー…っと何だっけ。……あぁ、それで太子がいなくて帰る人いないから一緒に帰ろうかと思っ……べ、別に太子以外に友達いないわけじゃないからな!!」

「なげぇよ」



うーん。愉快な人。
何で理由を伝えるだけでこんなにも話が逸れるんだ。途中から完全に好みの子の話だったじゃないか。
鬼男くんが、こいつもいい?と呆れながら私に聞いた。嫌だけど先輩に向かって嫌とは言えないし、何か可哀想になってきちゃったから了承する。嫌だけど。



「まぁ、どうせ駅までだし……」

「マッジで!俺名前ちゃんの事信じてた!!」

「あ、あの止めてください。あんまり近寄らないでください」

「あれ、目の前が滲んできた」

「ドライアイじゃないですか?」

「この子鬼男くんと同類だ…!」



恐ろしい子…!とか言ってる閻魔先輩を放置して鬼男くんと教室を出る。後ろからぱたぱたと付いてくる先輩が、少しだけ可愛く見えた。



「いやぁ〜…でもあれだね!勧めたはいいけど、名前ちゃんはセーラー服似合わなそう!!」



前言撤回。死ねばいい。






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