「…遂に俺も犯罪者か」
ぽつり呟いた銀色の毛玉。じゃあその手を止めろと促すけれど止めてくれる様子はない。部活動に勤しむ生徒達の声が遠く聞こえる中で、私とこの毛玉は何て汚いのだろう。何て愚かなんだろう。
「坂田せんせ、クビになるかもね」
「この年でプーはちょっとなぁ」
「私が養うよ」
「じゃそうしてくれ」
あんたにはプライドが無いのか、噛み付くようなキスをされながら心の中で悪態をついた。あぁ気持ち悪い。絡み付く舌を軽く噛んだら、先生は口を離して、反抗期か、と私の髪をがしがし乱暴に撫でた。
「ちゅーしてよ」
「したじゃねぇか」
「違う、子供みたいなちゅーがいい」
「大人のちゅーは嫌か」
嫌。
真っ直ぐ私を見るから思わず目を逸らしてしまって、そうしたら頬に額に唇に、触れるだけのキスの雨が降ってくる。さっきした深いキスよりもセックスよりも、ずっと、こっちの方が好きだ。
「名字顔赤い」
「うるさい」
「課題増やすぞ」
「職権濫用って言うんだよ、それ」
「いいんですぅ〜生意気な子にはお仕置きが必要なんですぅ〜」
「今PTA敵に回した」
そうかそれはてーへんだな、先生は笑う。私はその頬にキスをして今日は帰ろうと提案すると先生は当たり前のように送ってくれる。
私は明日も何事もなかったようにクラスで神楽ちゃんや妙ちゃんと純粋気取りで笑い合うんだ。もうとっくに、汚れてるっていうのに。
それは酷く穢れていて、それは酷く甘美である。