マンネリ化していた俺と彼女の関係に終止符を打ったのは俺の出来心からの浮気だった。彼女は静かに別れを切り出して、じゃあねと表情も変えずに俺に背を向けた。コンビニで買った弁当を電子レンジで温めながら舌打ち。あぁむしゃくしゃする。原因は俺なんだけども。落ち着かずに携帯を開けたり閉じたりを繰り返す。テレビも付けていない部屋は異常なまでに静かで、世界に独りきりになったのではないかと錯覚した。当たり前のようにそんな事有り得なくて、いっそのこと世界に独りになれたらどんなに楽かと反応のない携帯を眺めてぼんやり考える。荷物の少なくなった部屋を見回して、きっと数ヶ月後には忘れているであろう感情に必死にしがみ付いた。彼女のあまり変わらない表情がたまらなく好きだった。彼女の寡黙なところもナチュラルなメイクも少しずぼらなところもキスをすると恥ずかしそうに目を伏せるのも、自分より人を優先するところも、大好きだった。追い掛けるでもなく、ただただ見送った背中を思い出したら心臓が無駄に大きく音をたてる。余計な事ばかり考えてしまう思考を、放棄してしまいたいけれどそういう訳にもいかず、ぼーと時間が過ぎるのを待った。ふと彼女が好きだと言ってくれた自分の手に目を向けると爪が伸びていて、いい加減切らなきゃなぁと思い立ち爪切りを探す。なかなか見つからなくて、本日二度目の舌打ちをした。爪切り何処にやったか聞いておけばよかった、多分覚えてないだろうけど。ずぼらな彼女が何処かにやった爪切りを探していたら部屋中に物が散乱して酷い有様になってしまった。もういいや、と。伸びた爪をそのままに小さなベッドに身を投げた。




君が死んだ








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