もうさぁああああ…、魂が出そうなくらい深い溜息を吐きながら愚痴を溢すのは、ひとつ年上で、幼なじみ?とやらの大王。何でも行きつけの喫茶店の女の子に一目惚れして、一年間ずううううっと片想い中らしい。女癖悪いくせに、よく、片想いだなんて。
「バイトって…バイト…」
「大王もその喫茶店で働いたらいいじゃないですか」
「や、それは、重くない?流石に」
もう十分ストーカー染みてて重いと思います。口には出さないけれどきっとその子も思ってると思います。泣きそうなので言わないけれど強ち間違ってはいないだろう。溜息吐きっ放しの大王の前に並べられた飴を一つ、勝手に頂いて口の中に放り込んだ。
「今までは、さあ」
「はい」
「みんな簡単にコロッと落ちてくれてたんだよ。ちょっと声掛ければ付いてくるしさ」
「はい」
「どうしてこうも上手くいかないのかな…」
「それは…」
それは大王が初めて本気で誰かを好きになったからじゃないですか。言いかけて、止める。今まで沢山女性を泣かせてきたんだから、少しくらい苦しんだらいい。最近は全くしなくなった女遊びも、少しだけ落ちついた校則違反も、その子のお陰だって言うなら万々歳だ。僕の仕事が減る。
「名前なんて言うんですか?」
「え?」
「その、喫茶店の子」
少し気にかかるのは、あんなに酷かった大王をここまで変えた女の子を見てみたかったから。それ以上の理由はない。
「名字名前さん」
「…………僕その子知ってます」
同じクラスです。
続・喫茶店で片想い