幼なじみの閻魔は最近、身長が伸びました。ちょっと(ちょっと…?)前までは私よりも背が低くて、泣き虫だったのに。隣を歩く閻魔を見て、大きくなったなあと沁み沁み思うのです。じーっと横顔を見ていたら、なんか付いてる?と聞かれてしまいました。なんでもないー、と冷えた手をポケットに突っ込んで答えたら、寒いね、と全く関係のないことを言われてしまいました。もうすぐ桜が咲きます。暑くなったり寒くなったり忙しい毎日です。まる。
「お花見行きたいね」
「あー…あー、そうだね」
蕾の付いた桜の木を横目に歩く歩道は、少し暗くて空気が冷たい。半分くらい満ちた月は綺麗で、いつも通りの空は雲がかかる。隣で閻魔が溜息を吐いた。何か言いたそうだった。春だなぁ。春だ。泣きそうになる。花粉症では、無いのです。
「桜咲いたらさ、」
「ん?」
「二人で見に行こうね」
「うん」
「今年も、行こうね」
「…うん」
いやいや閻魔さん、貴方昨日、彼女できたでしょう。可愛くて巨乳の、女の子らしい彼女さんが。わたしも今日、彼氏できたんだよ。返事したけれど、彼氏に対する罪悪感がぶわーっと沸いてきた。ああ、もう駄目だこの男。私も駄目だ。重症だ。離れられない。離れるのが怖い。お互いがお互いを必要としてるのに、閻魔とキスは出来ないんだ。
言いたい事は飲みこんで笑う、笑う。ピエロみたいだね、君は泣いた。
(うるせえ、バカ)